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§103 社会の学力について
<暗記力を高める有効な方法とは>
前回の続き。
「この暗記しておかなければならない鉄鉱石の輸入先順位、「○○○、□□□、△△△」も、生徒の次元でいえば、たとえ覚えたとしても暗記そのものが平面的、表面的で、単なる知識の欠片に過ぎないから、時間とともに殆どの場合すぐに風化する。では、なぜ風化するのか? それは、・・・」
と、書きました。
既に知っていらっしゃる方は別として、えっ、そういう国別順番なのという方に、また全然気にせずに読み進まれた方に、ちょっと意地悪な質問。
上の○○○、□□□、△△△の国名はなんでしょうか?
「えーっと、それは、・・・。が確か1位で、次に、・・・、ブラジル?だったかな・・・。いや、3位だったかも。そして、? 真っ白、何も浮かばない――」
とか。
2つでも浮かべば上等で、1つだけの場合も大いにあり得るわけで、順番つけて3つを正確に言うとなると、かなり強く意識して覚えこもうとしなければならないのであり、それでも容易に忘れてしまうから、反復する作業がなければとても無理ですよね。つまり、時間をおいた復習。自然には頭には入らない。入ったと錯覚するだけで、見事に抜けてしまう。
<ちなみに答えは、オーストラリア・ブラジル・インド>
わたしなんか喫茶店で週刊ポスト掲載、竹村健一氏の「通勤電車の英語塾」をぼけっと読んでいても、時たま、というかしょっちゅうですが、「えっ? この英単語の意味はなんだ?! こんな言い回し、とんと記憶にないなあ」
と、いうのに出くわすわけですが、
「よしっ、覚えてしまえっ!」
と、かなり強く意識して、また集中して、かつ何度も口の中でもごもご言うのですが、結果、覚えた試しはなし。皆無、です。こんなこと、声を大にして言うことではないけど、事実だから、正直に述べる。
ひどいのは、何について覚えようとしたのか、それですら憶い出そうとしても出て来ないのですから、もうまったく話になりません。 何がいけないのだろう?! 覚えない、覚えられない原因は、何?!
自分の頭の悪さは棚に置いて、その理由は3つほどあるかな――
一つ、年を取ったせい。これは弁解がましいけど、やっぱり若い成長期の、何でも貪欲に吸収する活発な脳細胞には負けるよ。今では見る影もないが、これでも一時期、真綿に染みこむが如く新しいことをどしどし覚えこんだ、あるいは脳みそに叩き込んだことがあるよ。ほんのそれは、一時期の話だけど。
二つ、やっぱりこれのほうがわたしの性に合っているけれど、反復の復習をして記憶の確認をする、それをこの場合、しないことが非常に大きいようだ。その理由は邪魔くさいことと、そもそも手元に調べ直すべき雑誌がないことだ。いい加減な気持ちでは何事も身につかないのである。
三つ、時事英語の世界とその環境に、日々嵌っていない、ということ。
これは言い換えれば、慣れの世界だけど、絶えず接しているものは、また知識の厚味がある分野は、そう苦労しないでも関連性で覚えこんでしまうものだ。それがないのであろう。
まだ他にも要因はあるだろうが、考えるのが億劫なので、この辺で自分のことに関する言及はやめる。
話がずれますが、学習上に措いてよく質問を受けたり、また目にする言葉の中で、次の2つの文句「自然に」「コツ」には、甚だ軽薄で努力とは程遠い印象がわたしにはあり、この種の安易で要領を問う質問にはまことに辟易としていますので、お答えできないこと、ここに書かせていただきます。勉強って、そんなものではないだろう、と思うからです。
さて、暗記力を高める有効な方法とはどんなものがあるのだろうか?
わたしが識っているのは3つしかない。それは、「復習、思い出し訓練、すぐ寝る」の3つです。人によっも違うだろうし、また他にも有効な方法があると思うが、取り敢えずは少し説明。
「復習」の重要性とその意味は誰だって知っている。説明するまでもない。ただしかし、しませんね、生徒を観ていると。ほんとに、しませんね、正しく。そこから本当の勉強が始まる筈なんですが、そして自分の勉強が始まるのが普通なんですが、どうもその内容が浅く、中途半端。恐ろしく浅く、普通であることがこれほど実行出来ないとは。また、宿題が復習だと勘違いしている生徒のなんと多いことか! 問題はどう復習するか?!なんだけど。
とびきりの秀才でない限り、この復習なくして学力の定着は望めないだろう。その具体例はあちこちいままでに書いていますので、今回はパスします。
次なるものは、思い出し訓練。目を瞑り、覚えた過去まで遡る。そのときの覚えた内容がすぐに全て浮かべばもちろん問題ないわけだけど、そしてそれは脳の海馬の2つある貯水池の下の記憶貯水池に入った証拠なんだけど、大抵は上の貯水池に「一時的に」入っているだけで、すぐ抜けてしまうんだね。狭い範囲の定期テストで点数がよくても、実力テストとなると成績が振るわない生徒の多くは、結局この「一時的な」貯水池にしか溜めていない勉強方法だといえるだろうね。
下の記憶貯水池に入れるには、きちんとした復習と繰り返し見直すという反復訓練が必要でしょう。そして、それを補足する形で、思い出し訓練も必要となる。この憶いだすきっかけとなるのは結構単純なことで、憶いだす内容のすぐ周りにあることが多いのです。
つまり具体例を牽くと、上の鉄鉱石の輸入先順位でいえば、その3つの国をきっちり頭に入れるには、「ひえっー、よくもまあこんな遠い国から運んでくるものだなあ」
と、驚くとともに、地理的感覚を頭に描く。日本を中心として、その真下がオーストラリアで、ブラジル・インドの3国の結ぶ線を引けば、ちょっと傾いた2等辺3角形になるじゃないの(少し無理があるんだけど、そんなことは関係ない)。このイメージを頭に焼付けば、憶いだす時に、それがなぜかイメージできるんですね。つまり、周りのことが案外記憶に残るわけで、それを頼りに答えに行き着くということは、わたしの場合非常に多いのです。
もちろんいまはそんなことしないでも無意識に出ますが、そうやって覚えたものは数知れないし、記憶の糸を辿る作業に目印になるものは欠かせないので、暗記するときはそのものだけなく、必ず周りの因子を抱き込むように最初はしている。もしそれだけで不安な場合、つまり頭を振っても下の貯水池に落ち込みそうにないと判断した場合、別の手を考える。
上の問題でいえば、次にようになるか。
オーストラリア・ブラジル・インド――
オ・ブ・イ・・・。鉄鉱石はオブイ、鉄鉱石は重い、だね。やったー。この工夫というか、こじつけは、いったん頭に嵌ると何年でも記憶しているから不思議だ。思い出し訓練では、このこじつけがなぜかすぐに浮かぶので大変あり難い。これはまだ意味が通るからいいけど、意味も根拠もへったくれもなく、ただただ無茶苦茶な直截的な語呂合わせも数え切れないほど持っている。
ご参考になればいいんですけど。そして大切なことを付け加えるならば、それはやはり、「自分で工夫して考える」ということ。こんなところに努力という言葉は使いたくないけれども、それでも多少は苦労して掴んだものは、所詮その人本人しか役立たないことが多いわけで、これを生徒に伝えたとしても、また過去幾度となく教えてきたわけですが、苦労を知らない暗記、与えられた
要領というものは、あまり効果がないのです。あくまで自分なりの覚え方、イメージを追求すべし、だと思います。
蛇足ながら3つ目の、すぐ寝る、について。
実験でもその効果は証明されているようですが、これがなぜいいかということは、覚えた内容以外の情報が混じらないからであり、また新たな情報に消されにくいからでしょう。よって思考力を要する科目は先にやり、暗記科目はあとでするのがいいということになりますが、思うに、数学でも暗記することは大いにありますし、逆に英語でもかなり思考力を磨かねばならない内容もある
のであり、また社会でも単なる暗記で済まされない場面もたくさんあるのです。
ですから、そう単純に割り振らないで、またかたぐるしくいちいち考えないでいいと思いますが、大まかなやり方としてはいい手順なのではないでしょうか。そして済んだらほかの事をしないですぐ寝る、という習慣をつけることも。
次回、社会の問題集(中3生対象)について、復習、繰り返し、海馬の下の貯水池に放り込むという作業、横糸を通す!という勉強方法などを交えて、書いていきます。
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