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  高校入試でターイセツなこと、って何だ?!
§104 社会の学力について VOL.3
<年号や人物は単に暗記せよ>

 社会の入試問題に対する分析と対策に、よく次のような文章にお目にかかる。

・「知識を単に暗記するのではなく、自分の生活とのかかわりの中で学習事項をとらえることが必  要です」
・「年号や人物など単なる暗記に頼るのではなく、歴史の流れをとらえて、その背景や結果を記  述する能力をみがこう」
・「教科書を単に暗記するだけではなく、「社会的関心」や「具体的思考」が要求されるので、問題 に対する自分の立場をはっきりさせ、自分の考えを述べましょう」
・「記憶や知識だけに頼らず、データや資料を組み合わせて、自分なりの判断をまとめあげると  いった「資料活用能力をみる問題」が増加しています。日頃から新聞やニュースなどに関心を  持ち、国内や国外の出来事をいろいろな角度から考えてみる訓練をしておくことが大切です」
 
 このまるで無菌状態にも似たきれい事の羅列、わかったようでわからない分析と対策には、開いた口が塞がらない。それ以前に言葉の遊びだけというか、頭の中だけで捏ね回したアドバイスは、もういい加減にしてくれといいたい。

 物事の半分しか見ていないのだろうね。即ち、新学力観(これも最近うんざりしてきたというか、その実態の幼稚さと虚飾性に辟易しておりますが)基づく高校入試の問題だけに目をやり、それを行なう生徒の実情と力の所在をまったく観ていない、把握していない、ということ。おそらく生徒を教えたことがないのであろう。また教えた経験があったとしても、実力をつけさせるとはいかなるものかを知らない、あるいは実践したことがない者であろう。少なくともわたしには、そう思えてならない。

 そもそもこれは、誰を対象に指摘しているのか? また、どの段階の知識が生徒に入っていることを前提にして述べているのだろうか? 
 
「知識を単に暗記するのではなく」「年号や人物など単なる暗記に頼るのではなく、歴史の流れをとらえて」――ごもっとも、ごもっとも。しかしこれは、習った基本の知識がほぼまあちゃんと入っており、年号や人物などもある程度暗記している生徒を想定してるものと推われるのだが、果たしてそのような生徒がどのくらいいると仮定しているのであろう?! 

 公立中学生全体の7割か、それとも半数か? まさか1割にも満たない生徒を対象にアドバイスを書いているのではないであろう。
 わたしの専門指導科目は数学と英語ですが、実は得手にしている科目は何故か他に社会もあり、中3生に限って受験の社会を20年あまり教えてきました。中3を指導するということは必然的に、学校と違って塾の場合には地理・歴史・公民の3分野すべて教えなければならないわけですから、それも入試まで1年はなく10ヶ月ぐらいの期間で中1、中2の習った(?!・・・)社会を復習し、かつ中3の公民をおさえ、そして入試対策をするという、まことにもってきついスケジュールをこなさねばなりません。仕事だから当然といえば当然なのですが。

 しかしほんとうにきついのはスケジュールではなく、教える生徒のあまりにも知識のなさに気付くときでしょうか。毎年、慄然とします。恐ろしく何も入っていない。頭に、残っていない、習ったことが――  これを、なんとかしなければならない、なんとか入試に間に合うよう力を上げねばならない。
 まさに、must の世界。

 習った基本の中の基礎事項A(100)と、基本の周りにすぐある問題B(80)、そして少しだけ突っ込んだ知識C(20)の合計が200としましょうか。
 具体的に書きます。
「歴史」より、その中の飛鳥時代、奈良時代。
 該当者はお試しを。3分もあれば十分に出来ます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 <問題>
1.645年、大化の改新で蘇我氏を倒したのは、中臣鎌足とあともう一人誰か、
 漢字で書きなさい。 〔        〕

2.聖武天皇の頃の文化を何というか。 〔     文化 〕

3.班田収受の法で、全国の特産物にあたる税を何というか。 〔    〕

4.聖武天皇は奈良に東大寺、そして大仏を作り、また全国に国分寺、国分尼
 寺などを建立した。なぜそのようなことをしたのか、その理由を簡潔に述べなさい。
 〔                            〕

5.次の出来事が起こった順番に、(  )に記号を書き入れなさい。
 a.わが国最初の和同開珎が出来る b.墾田永年私財法を出す c.平城京が出来る
 d.壬申の乱がおこる (   )→ (   )→ (   )→ (   )
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
                                    <解答は一番下に>
 これは突然、公民関係になる問題。まだ学習していない。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
6.滋賀県の豊郷町で町長が、3月9日の住民投票によって(      )が成立し、失職した。
 (  )に適する言葉を入れよ。
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 以上6問。なぜ6番を出したかというと、上の「日頃から新聞やニュースなどに関心を持ち、国内や国外の出来事をいろいろな角度から考えてみる訓練をしておくことが大切です」ということに対して、現在その視野があるかを観るため。

 1,2番が基本の中の基礎事項A、3,4番が基本の周りにすぐある問題B、そして5番が少しだけ突っ込んだ知識Cにあたります。6番はプラスαの力ですね。

 さて、どうでしょうか? 1番から4番までは、学校の定期テストで必ずといっていいほど出題されるごく平凡な基本問題です。もし学校のテストで80,90点取れているのなら、4問できて欲しいのですが。

 もし5問以上できるならその生徒は、相当な社会の学力があるといえます。教え甲斐があるというか、ますますその知識に磨きをかけたくなります。が、そんな生徒にいままで、残念ながらお目にかかったことはありません(いるはずなんですが・・・。もし出来ておれば、メールでご一報を)。

 基準を落として、つまりこちらの教える感覚を喉元あたりから腹の位置まで落として、2問は最低出来ていて欲しい、と思うわけです。なぜなら、基本の中のそれも基礎事項だからです。小学校でも歴史で習ったことがある事項で、いくらなんでもそれくらいは覚えていてくれよと、ほんと、心の底から思います。それは実力以前の、これから復習していく上での最低の基準の力だからです。そうでなければ、またまた復習する端から抜けていくのは経験上目に見えているからです。(それでも繰り返し教えるというか、強制的に暗記させますから、最終にはかなりましにはなるのですが)

 このゾーンの生徒ですか? 半数以上はそうでしょう。上の分析と対策が、いかに現実の生徒をおさえていないかが、これ一つとってもおわかりになるかと思います。

 次に3問出来た生徒。学校のテストではそこそこ出来ていたのでしょうね。でも実力は、はっきりいってありません。勉強し直しです。 最後に4問出来た生徒。基礎がおさえられている生徒です。5%もいませんから。偏差値的には65以上はあるでしょうか。(むかしの指導範囲の学習量に較べて、随分と基準が甘いものです)でもそれは、現在の公立レベルの話で、知識の幅も深さもありませんから、入試に向けてもっともっと実力を磨いていかねばなりません。

「年号や人物など単なる暗記に頼るのではなく・・・」「記憶や知識だけに頼らず・・・」 この欺瞞に満ちた、また空洞化した言葉は、有害である。
 敢えていう。
「年号や人物は単に暗記せよ。記憶や知識にまずは頼れ!」

 まず、きっちりした知識の骨を入れよ。骨がなくて、なんで肉付けが出来るんだ?! 上記の問題、1番から4番まではすべて骨の部分ですよ。歴史的流れをとらえるには、まず「骨組みの知識をしっかり形成する」のが大前提でしょう。そのための復習を多いにせよ! 地理も歴史も。

 作成中の社会の問題集(中3生対象)について、復習、繰り返し、骨組みの形成のしかた、海馬の下の貯水池に放り込むという作業、横糸を通す!という勉強方法は、次回にずれてしまいました。
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【解答】
1.中大兄皇子 2.天平文化 3.調 4.仏教の力で国を守る(or治める)ため。 
5.( d )→ ( a )→ ( c )→ ( b ) 6.リコール

a.わが国最初の和同開珎が出来る(708年) b.墾田永年私財法を出す(743年)
c.平城京が出来る(710年)d.壬申の乱がおこる(672年)

◎和同開珎は奈良時代に入る直前という知識。壬申の乱は、天武天皇(天智天
 皇の弟)が大友皇子(天智天皇の息子)に勝つ出来事という知識<これはな
 ぜか翌入試で出るから年代は暗記>。