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§548 なぜこの生徒は数学の応用問題ができないのか
<偏差値50の生徒の場合>
「中でも応用が特に苦手、出題されたものは全滅です。問題いっぱい解いてるのにいっこうに成績が伸びません。この前の模試を受けたのですが、ほかは偏差値が60ほどあるのに数学は50ぐらいです。計算などは得意中の得意なんですが、応用となるとからきしダメになってしまいます。」
こういう文面が、ネット上に載っていた。今回、そのほんの一部だけ拝借。中2である可能性もありますが、おそらく中3生であると想われます。
こうした生徒はけっこういるもので、すこし内容を分析してみます。
数学のなかで応用が苦手。模試では応用問題にはまったく歯が立たず、全滅。それゆえ、偏差値50。なーるほど・・・。ほかの教科(4つ)は偏差値が60ほどあるということですから、5教科の偏差値ではほぼ60くらいになるはずで、そこそこ頑張っているかと思います。
弱点は数学。問題いっぱい解いているので、いっこうに成績が伸びない。この悩みと問題点を持った生徒はすくなからずいます。
「いっこうに成績が伸びない」ということは、つかの間の勉強ではなく、かなり意識して、以前から時間をかけて取り組んできたのであろう。
といっても、それはいつからか? ふつうに考えれば、この場合、文面からして、2,3か月前からではなかろうか。つまり、そんなに長い期間、応用問題にぶつかって勉強してきたわけではないと推測します。
この生徒が中3だとして、そしてこうした悩みと質問が出てくるのは、中3の夏休みが過ぎたころからが目立ちます。<注:これをたまたま保存したのは数年前のことで、いまでは時期が特定できず。>
ただ、応用が特に苦手という意識は、中3より前の中2の後半時にある程度感じだし抱ていたはずだし、ひょっとすれば中1の段階でも模試などを通じて感じていたかもしれない。問題は積もり積もって、自分ではどうしようもカバーできない段階になって、噴き出したのだ。
ご存じのように偏差値とは、模試などの母集団で平均点をとった生徒を50として、そのなかでの自分の学力位置を示す数値のことですが、この生徒の数学の偏差値はまさに50なので、平均点そのものであります。仮にこの模試の平均点を45点(100点満点)とすると、その45点取って、55点がなんとできなかった勘定になります。偏差値でみることも大事ですが、点数でみることも大事にしてください。うーん、ヒドイ。
模試のレベルにも拠りますが、ここではふつうによくある模試とすると、では、「応用」はどのくらい占めるのか? 配点比率からザクッといって、基礎と基本が6割、応用が4割といったところでしょうか。しかし、この応用といってもピンからキリまであり、その半分は実際基本レベルのなかの応用というか、あるいは応用のなかの基礎レベル程度ですね。そして残り半分(全体の2割)ほどが、解くためのノウハウを持っているかを問う、かなり思考力の要るほんとうの応用題といっていいかもしれません。(注:この比率はあくまで模試などのケースで、入試問題となるとまたすこし違います。)
で、この生徒の書いている内容をもう一度吟味・チェックしますと、「中でも応用が特に苦手、出題されたものは全滅です」と書いていますが、偏差値と予想できる点数からみて実は、ふつうにイメージする難度の高い応用ができてないだけでなく、勉強を積み努力すれば吸収できる基礎の応用もまったく身についていないことが判ります。そしてさらにいえば、平均点の45点とすると、基礎と基本が6割ほど占める問題比率に対し、15点ほどがミスかなんだかしりませんがこの部分もとれていない勘定になります。
さて、この生徒の本質的な問題点と、とるべき勉強法は何なんでしょうか? 問題点ととるべき方法は、この場合、裏表の関係で、密着していなければなりません。離れたところに在るわけではない。ところが、実際の勉強は離れているんですね。
おそらく塾にも通っていることでしょう。そして応用も勉強している。これが受験勉強だと思って、真面目にやっている。しかし、その姿は、自分の手の届かない樹の枝にぶら下がっている実を、爪先立って採ろうとしている感じに似ている。しかし自分の手にとったものは、実際は他人(講師)がその実の枝を採りやすく下に曲げたことによるものか、あるいは踏み台を置いて手が届くようにしたものに過ぎない。自分の手と頭で採ったものではない。これに気づいてもいない。もっと目を凝らせば、自分の手でとれる実が、踏ん張って手と脚を伸ばせば届く実があるはずなのに、そこには目もくれない。
よくいるんですよ、こうした生徒が。そもそも自分の力を知らなすぎる。正確に把握、認識できていない。具体的に自分のとった成績の分析と反省も満足にできているとは、まったく思われない。これでどうして成績を伸ばせるんでしょうか!?
「計算などは得意中の得意なんですが、応用となるとからきしダメになってしまいます。」と書いているように、一応自己分析して部分もあるようにも感じるかもしれません。が、計算が得意なんていうのは小学生ならまだしも、中学生にもなってそれも中3の時点でいうのは、ちと幼稚すぎますね。もちろん計算力がしっかりしているのは大事なことですが、それは数学全体のなかでベースに沈み込ませて見えない力にするものであって、得意を主張してもテストにはもうあまり反映いたしません。(余計なことながら、関数は得意だが図形が苦手とか、文章題は得意だが関数が苦手とか、せめてそんな言葉の遣い方がほしいが・・・。)
もっと具体的に、自分のとった点数の分析と反省を過去に正しくしていたなら、上述したように焦点があった勉強、つまり、自分の数学の学力と離れていない勉強、実力のつけ方ができていたのではなかろうか? それができてないから、「問題いっぱい解いてるのにいっこうに成績が伸びません。」となる。
模試で平均点45点あたりの生徒が、80点から100点をとるための問題と勉強は決してすべきではない。ぼこんと真ん中に、学力の大きな穴が空いているんですから。その前の前の自分の学力から離れてない、60点をとる勉強とその問題に目を向けて、もっととことんしなければ。それができてからようやく、応用のなかの基礎レベルの問題に入ればいい、ということになる。
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