§586 社会の知識って
<ナイアガラの滝の位置>
社会の知識ってどこまであればいいんだっ?ということについて、今回考えてみたい。
というのも、ある中3生の親御さまから、下記※内の〜〜線部分のご質問を受けて、ちょっと考えさせられたからです。その質問の一部分でありますがわたしの返答もそのまま載せて、述べていきたいと思います。
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すでに土台編に着手しましたが、子供は歴史、公民は、ほぼすべてできると言っています。しかし地理はいくつか答えられない問題があるとのこと。<筆者注:この問題集は「<新版>入試社会の攻略>」です。>
実は、全教科のなかで地理を最大の苦手としており、夏休みに集中的に勉強したのですが、まだ記憶の曖昧なところがあるのかもしれません。地理は歴史のようにある意味で範囲が限定されていないので、オープンな問題がいくらでも作れる可能性もあります。
そこでお聞きしたいのは、この土台編において地理、歴史、公民のレベルは同一に調整してあるのでしょうか? それとも地理だけ少し難しめとか、いかがでしょう。
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いいえ、同じレベルで作成してあります。
地理は、教科書や教える先生、また都道府県によって、その習う内容はまちまちといいますか、偏りもいくぶんあるのがふつうです。公立入試ではその範囲内で対応できますが、私立入試になると必ずしもしっくり当て嵌まらないことがときどき出てきます。それゆえ、オーソドックスに、これだけは最低ベースとして知って覚えておけよという知識を、「土台編」では網羅して作ってある次第です。
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上記と同様な課題は入試問題においても存在します。○○大学附属高校の社会は、”オニ”と呼ばれるくらい難しく、特に、地理が難しいと子供は言います。たとえば、五大湖あたりの地図が出され、どの湖が何かも表示されないまま、ナイアガラの滝の位置はどこか?といった問題があります。普通の地図には掲載されていないのですが。観光ガイドブックには載っていると思います。
あるいは、ある日本の地方のあまり特徴的でない地図が出され、ここにある発電所は何の発電所か? A地点から矢印の方向を望んだときの写真は次のどれか?といった問題があります。大した高山がない場合に等高線から風景を想像するのは山登りを趣味にしていてもかなり困難です。
現状で○○大学附属高校の社会の対策が十分にできません。高校の地理の問題に手を出すことも考えられますが、内容がかなり異なるように思います。
資料読解とか、より細かい地理の対策でおすすめの問題集とか、方法をご存じなら教えて頂きたいのですが。
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・ナイアガラの滝の位置ですか。スペリオル、ミシガン、ヒューロン湖があって、たしかエリー湖とオンタリオ湖(どちらがエリー湖でオンタリオ湖は忘れましたが)の間に、ナイアガラの滝があったような。でも、位置的には右側の小さな湖のふたつの間かな、と。
わたしの頭のなかに残っている知識では、こんな程度ですが、それも覚えたのは中学時代のもので、つまり地図帳をさんざん眺めた経験があるからなのですが、昔の中学生ならこれくらいは覚えていたのかもしれません。
しかし、いまの公立中学はとてもここまで教えません。
・ある日本の地方のあまり特徴的でない地図が出され、ここにある発電所は何の発電所か?
火力か水力か原子力。あと、風力や太陽光などの新エネルギー発電、それに地熱発電もろもろがあるのでしょうが、しかし、特徴がないようにみえても、地図からみておよそ判断できるのではないでしょうか? 大都市周辺の海近くではないようですし、山や川がもしあるなら水力ではないでしょうか?
・A地点から矢印の方向を望んだときの写真は次のどれか?といった問題があります。大した高山がない場合に等高線から風景を想像するのは山登りを趣味にしていてもかなり困難です。
しかし、山ではなく、写真のなかに何が写っているか、それと地図の矢印の方向に何があるのか、それをよく見較べたら手がかりはみつかり、わかるようにも思うのですが・・。針葉樹、広葉樹、鳥居、果樹、警察、学校、消防署、工場ほか。
ナイアガラなどの知識はいまからではとても間に合いませんが、下の2点については、資料を読み取る訓練を積めばある程度正解に近づけるのではないでしょうか?
「資料読解とか、より細かい地理の対策でおすすめの問題集」ですが、これは次のように考えています。
二見書房の「データブック」(世界各国要覧と最新情報)2015年版、また「統計要覧」というふたつの本が、各1000円以内であります。大手の本屋さんあるいはネット通販でも手に入ります。
しかし、これは生徒にとって非常に使いづらいですし、もうこの時期からの勉強補助としては向いていません。
それより大手の本屋さんで、学参コーナーの隅っこに、本名は忘れましたが中学生に向けた資料が販売されているかと思います。それを捜されて利用されればどうでしょうか?
あともうひとつは、地図帳です。地図帳の裏、また地図と地図のあいだにけっこう詳しい資料が載っています。この活用もありかと考えている次第です。
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国立附属や私立超難関校の高校入試問題となると、たとえ社会であっても難度の高い問題が出ます。まあ、わたしの範疇外として、あまり近寄らないようにはしているんですが、その理由はといいますと、正直ウザイと思っているからです。
稀になにかのきっかけで、うっかり遭遇してしまったときなど、証拠と無しに解くわけですが、頭のギアをふつうにして問題読むと、なんだか頬っぺた張り倒されてような感覚になって、すぐさまギアを高速用に切り替え、集中し、頭にいっぱい血を回さねば解けないのであります。
もうとにかく知識量が半端では間に合いません。また正確無比な知識がたっぷり要ります。大体とかおよそとかで覚えている知識なんて、すぐ問題の壁やそのなかにある厄介な皺にぶつかってしまい通じません。
それに、問題文の説明とか出し方も妙に粘っこく纏わりつくものがあって、あっさりしていませんのでどうも肌に合いません。もちろん各校その問題作りには癖と特徴があって、この度合いもまちまちなのだが、そして慣れれば、それほど苦痛には感じないかもしれませんが。
このことを、知識量の拡がりという観点でいうなら、公立中学における社会の授業内容はもちろん、その教科書や副教材、プリント類を、そう厚くはない別の用紙でもう一枚くるんだ印象があります。その隙間に、発展的な知識といえばいいのか、あるいは雑多な知識が入り込んでいる。そこが問われているし、また問題となる。ただし、すべてがそうではなく、まあここでは2割前後としておきましょうか。
たとえば、上記のような例です。「五大湖あたりの地図が出され、どの湖が何かも表示されないまま、ナイアガラの滝の位置はどこか?」といった問題。
この例をとって、公立中学で習う知識と、いわゆる超難関高入試で問われる知識の差を、わたしなりにすこし解説してみます。
正確を期すために、ネットのウィキペディアで調べてみました。そのほんの一部だけ抜粋しますと、次にようになっていました。
「ナイアガラの滝は、エリー湖からオンタリオ湖に流れるナイアガラ川にあり、カナダのオンタリオ州とアメリカのニューヨーク州とを分ける国境になっている。五大湖の水流がナイアガラ崖線を経て大西洋に流れ込む過程にある。」
さて、本来なら、五大湖などの地図を描いて、その周りにある都市や覚えておくべき地理の知識などをささっと書き込めば済むことなんですが、テキスト形式ではそうはいきません。よって、文章で表現するとします。
まず、公立中学で学習する内容。
といっても、満足に習わないあるいは教えない学校もあるでしょうし、下に書くことはあくまでわたしが作った社会の問題集から、そして入試問題とその出題傾向をじゅうぶん踏まえた知識で述べることにします。
公立中学生で、五大湖のなかで覚えておくべき湖は、スペリオル湖だけかもしれません。このすぐ上にあるメサビ鉄山(鉄鉱石)が問題に出ます。そしてすぐ右下に縦長でなすびのような形したミシガン湖があり、その南端近くにシカゴ(アメリカ第3位の人口。小麦など穀物の集散地)があります。あまり出ないが、私立入試では覚えておくべき知識。そしてスペリオル湖のまた右側に、ふにゃふにゃっとしたカエデみたいな形をしたヒューロン湖があります。この湖のやや南に位置したところにデトロイト(自動車)があり、かつてはよく問題に出ましたが、いまはどうでしょうか。でも、覚えておくべき知識です。あとピッツバーグ(製鉄業)、この都市の位置はすこし離れてエリー湖の南のほう。
今回、五大湖のなかで一番右寄りにあって、上下に位置しているふたつの湖で、どちらがエリー湖でどちらがオンタリオ湖なのか、曖昧になっている頭の記憶を地図を見て直してみました。ウィキペディアの説明でもあったように、カナダにはオンタリオ州やケベック州(仏語と英語)があるんだから、カナダ側に近い上の湖が当然オンタリオ湖になるんですよね。この記憶を改めてつなぎ直しました。中学時に覚えたとき、この関連付けができてなかった。
あと五大湖関連でいえば、セントローレンス川を覚えていなければなりません。五大湖と大西洋を結ぶ重要な水運です。農産物関係でいえば、五大湖周辺は酪農地帯。あともう少し覚えてくべき知識はありますが長くなるので、このへんにしておきたいと思います。我慢してお読みいただき、ありがとうございます。
で、問題となったのは、「ナイアガラの滝の位置はどこか?」です。どうでしょうか、覚えておくべき対象から見事に(?)ズレている、いや意識的に外されていることがわかるかと思います。
この親御さまが書かれていましたように、「普通の地図には掲載されていないのですが。観光ガイドブックには載っていると思います。」の通りであります。わたしもここに来てチェックしてみましたが、地図帳には載っていません。
問題は、こうした問題に対応する勉強をするかしないか、あるいはできるかできないか、ということ。そしてもうひとつは、教科書や公立中学の授業で学ぶ知識量、その基礎と基本の知識をどの程度生徒が吸収・暗記できているかどうか、その実態と脆弱な知識量を知っておくことです。
まず前者。このような時期(中3の11月)からでは、とても無理です。効率的とは対極にある勉強が強いられます。このような問題の知識習得は、できる限り小学生のあいだに、または中1で地理を学んでいるあいだに、教科書や授業と離れたところてしておくべきものでしょう。ただこういう非生産的な勉強は、地理がほんとうに好きな者でしかできないでしょう。公立中学生の場合、100人に1人いるかどうか・・・かもしれません。ですから、こうした問題に対応する勉強をするかしないか、あるいはできるかできないか、と書いた次第。
さて後者。こちらこそ、大多数の生徒の現実。
ご質問いただいた方の生徒は、中3生対象の社会問題集「<新版>入試社会の攻略>」の土台編(と入試実践編の2部構成です)で、「歴史、公民は、ほぼすべてできると言っています。しかし地理はいくつか答えられない問題がある」と、また「実は、全教科のなかで地理を最大の苦手としており、夏休みに集中的に勉強したのですが、まだ記憶の曖昧なところがあるのかもしれません。<中略>この土台編において地理、歴史、公民のレベルは同一に調整してあるのでしょうか? それとも地理だけ少し難しめとか、いかがでしょう。」と書かれています。
国立附属高校を狙うほどですから、学力にかなり秀でている生徒です。社会のなかで歴史、公民は、ほぼすべてできる、とのことですから、これだけでもどの程度の学力があるのか察し得ます。ふつう相当に社会の実力がある生徒でも、まず8割ほどできればいいほうですから。ところが、地理だけは苦手。夏休みには集中的に勉強したのに、土台編の地理ではまだその身についた知識はじゅうぶんではなかったようです。
この原因は、記憶に曖昧なところがあったことも事実でしょうが、もうひとつ考えられます。それはこの生徒に限りませんが、微妙なズレ。
教科書や授業で学ぶ知識量、その基礎と基本の知識をどの程度生徒が吸収・暗記できているか、当然その範囲内での勉強となりますが、入試社会で必要な知識との微妙なズレがあるようにも感じてます。それは入試数学ほど大きくはないにしても、社会にもほんのすこし、土台となるべき知識の習得において、押さえておくべきポイントのズレが生じているんでしょう。まあ、抽象的な言い回しなってしまいましたが、具体的にはここでは言及しにくいので省かせていただきます。
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