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  高校入試でターイセツなこと、って何だ?!
§133 理科の問題集について 
<ノート学習があるね>

 愛知県の或るお母様から、次のようなメールをいただきました。
「先生、受験に対応できるような理科の問題集でお薦めはありませんか? 先生の問題集のように、その内容につまって、教科書をlearnしても分からない時に、聞きに来る様な体制をとってやりたいと思っております。」

 以前にも何度か、このような理科の問題集に関するご質問を別の方からも受けたことがあるのですが、その度に「いい問題集がありませんね」と、適切な情報や助言も出せずにここまで来ました。

 市販の、また塾専用の問題集にはいろいろとわたしなりにも目を通してはいるのですが、どれも一長一短、長所だけを汲み取り、一短は生徒自身が直せばいいともいえるのですが、そうすると話が進まない。いっそのこと、わたしが作るか?・・・。能ある鷹は爪を隠す、その爪をぼちぼち出そうか?!などと思案。 わたしはこれでも理科は得意であったし、中学の折は内申も10をいただくほどの実力を有していた。

 さて、こんなあほな戯言は打っ棄って、いったい、どうしたものか・・・。
 そこで発想の転換。いい問題集がないのなら、ノートで作ればいい、と。但しこれは、10人に1人も作れない学習法だ。またその半分は真似事で終わる。よって、確実にその効果が期待できる生徒は5%にも満たない、と推う。そのつもりでお読みいただきたい。

 幸いこの生徒は、理科以外の4教科の今回の平均点は91点。問題の理科が59点(うーっ、・・・)で仲間はずれの状態。やれば何とかなる。

There is no royal road to learning.(学問に王道なし)、という諺はご存知の方も多いでしょうが、その手段である王道はある。ノート学習、より正確にいえば、ノートを使った自分独自のまとめ学習は、study からまさにlearn への王道であるといってもよい。そしてそれは、王道であるがゆえ、しんどい道であるのは当然だ。しんどいがゆえ、ノートに書き留め覚えた内容は、そういとも簡単には忘れるものではない。

 これは実力をつける険峻な近道であると思うのだが、どうもいまの世間は、やたらと金をかけて安易に他人の指導を求める姿勢、わたしから観れば、だらだらと緩い遠まわりな道を、行ったり来たりしているようにも映る。しっかり踏み込みながら、刻みながら行けば、同じ道を何度も何度も戻ることは必要ないのだが。

 さて、このいまや古典的な感もする学習法を、わたしも中高を通じて実践した。いまから憶うと、随分へまな、稚拙なところもたくさんあったようだが、それは少し改めるとして、具体的に以下述べてみたい。

 必要なのものは、大学ノート1冊(A普通横罫)と鉛筆、赤、青など2色のボールペン。各単元の説明と基本、応用が入っている問題集1冊。これだけ。

 わたしの場合、理科のかなり詳しい参考書(教科書にはないカラフルな絵や図を見るのが面白かった)と問題集を併用したが、そこまではいらない。英語や数学と違って理科や社会は、教科書には比重をかけなかった。教科書や学校で使ったノート、プリント類は、一応参考にしたり知識のベースにはなったが、新たな気持ちの取り組み、違う刺激を求めて、参考書や問題集に比重を置いた。

 また理由の半分は、参考書や問題集には要領やポイントをつかみやすい点が多々あること、何が大事なのかも随所に説明されているし、理解が足りないところも詳しく解説されていたり、また問題をすればそのようなことはすぐにわかるものね。

 さて、作業の段取り。手に赤ペンを持ってまず、解説を詳しく読む。もちろん線を引きながら。ここで覚えるところは覚える。理解するところは理解する。そして基本問題にあたる。解答チェック。できなかった箇所は注意して覚える。次にやや応用レベルの問題にあたる。あとは同様。<これで同じところを3回していることになるのだけどなあ。>

 ようやく見えてきた。ここからがノート学習。代表的な問題を写すのだ。それが何かは自分で考えて。その写し方だけど、問題文をだらだら写すのではない。必要最低限の言葉、条件に止める。図はできるだけ自分で描く。これが記憶に残る最大の要素。グラフはできるだけ簡略に写す。丸写しは意味がない。時間もかかるし、それ以上に頭の中は、思考状態ではないのだ。あくまで考える勉強をしろ。設問も短く(自分でわかればいい)、そしてその答えを書く。式が要るものはもちろん式も。

 ノートの取り方は空白を残すということ。ノート左右ページを開けた状態とすると、下から7行を残し(空白部分にする)、そこに線を引く(左右ページ)。また各ページの右端6センチぐらいのところに縦線を引き空白を作る。1ページの7割の部分に問題と解答を書く。大事な箇所は線を引く。図やグラフにも解法のポイントがあれば書き込む。

 空白部分は右側と下側の2箇所あるわけだが、右の部分は自分なりの注意点や覚え方のコツ、最重点箇所の反復語句などを書くんだね。また下側の空白部分は、そのまとめる範囲で問題には出てこない重要箇所や、また後日、別問題などで新たに追加したい問題のスペースとして取っておいたりする。

 図やグラフを自分の手で描くということは、よくよく観て描くという行為で、それまで気付いていなかったこと、見落としていたことを見つけることも多い。と同時にそれは、ほんとうに観察することに繋がり、設問そのものに極めて接近した能動的姿勢が培われる。

 さらに赤ペン等でポイントのなるところ(問題文、図、式)を印をし、自分の脳に刺激を与える。さらに、右側のスペースに自分で工夫した暗記のしかたなどを明記しておく。これは駄目押しの作業だ。万が一忘れるということもあるわけで、それを防ぐ手立てにもなる。

 たとえば、化学の実験問題でマグネシウムと酸素に関する化合問題とすれば、グラフが出てきて、その問題の一つは必ず、その質量比を求めよになるわけだけど、こんなものは3:2でしょう?! グラフの意味を理解して比例式で計算して出す基本は理解しておかなければならないけど、結論も、つまりお決まりの答えそのものも覚えておけばいいんだよね。その暗記のしかたは
「マグ・サン・ニ」の言葉。サン・ニは、3:2を表している。マグ・サンは、マグネシウム:酸素でしょう。そんな自分なりの言葉、暗記の術を右側に書くんだね。ついでにもう一つの問題形式は、銅と酸素の場合の実験問題。これも「父さんよい」だな。父さんは、銅:酸素。よいは、4:1を意味している。銅と酸素の化合する質量比の割合は4:1。当然こららの問題には、「化学式を書け」ってい
うのが出題の定番だけど、2Mg+O*2→2MgO(*2 は右下小さく2)なんかも右側の空白部分に書いておく。

 理論や理屈はほんとうにそれに精通している人なら別だけど、大抵のものは恐ろしく忘れるのが普通である。たとえば、いまは中2で学習する簡単な、円周角の定理――「円周角はその弧に対する中心角の2分の1である。」 この結論は知っていても(えっ? 円周角って、なんだった?・・・という方も結構たくさんおれらるでしょうが)、では、なぜそういうことがいえるんだ、という証明は、つまり理屈は覚えているんでしょうか?! 

 酸性、アルカリ性、中性を調べる試薬、BTB溶液は理科の実験で実際によく使われ、テストでもさらによく出てくる問題だと思いますが、実際にみて確かめたことを、どうして斯くも生徒は忘れるんでしょうか? 酸性なら何色に変わり、アルカリ性なら何色になり、また中性なら何色を示すんでしょうか。こんなの即座に答えるレベルの問題でしょう。赤だったかな、青だったかな、と考えること自体、それは知識ではない。曖昧なことは糞の役にも立ちません。

 上で、「万が一忘れるということもあるわけで、それを防ぐ手立てにもなる」と書きましたが、万が一どころか生徒の知識の曖昧さは、時間が経てば万が七千ほどにも上るのが普通で、まったく思考力、表現力を言う前に、記憶力、暗記力を何とかせい、と思いますね。

 因みに、BTB溶液の色の変化は「酸き・うるせい」がわたしの覚え方です。酸性は黄色(酸き)、アルカリ性は青(あるせい→うるせい)。残り中性は緑。 覚え方のコツは自分で見つけるべきですね。他人から教えられたものは所詮借り物で、安易に手に入れたものですから、そのコツですら忘れてしまうのが通例で、生徒を観ておればほんとよくそれはわかります。自分で材料を買ってきてわざわざ時間と苦労をかけて作った料理が得てしてうまいと感じるように、もう少し自分で、勉強に対して積極的な工夫と努力を積み重ねてもらいたいと思う。

 まだまだこんな具体例はつと憶いだすだけでも次々浮かんできてご紹介したいのだが、冗長に堕する恐れあり、この辺にして、このノートへのまとめ学習を通じて学ぶものは、いや学んで収得したものは、かなり確かな学力として残るのである。問題演習してそこそこわかった段階は、そして定期テストなんかでたとえ80何点や90点以上取ったとしてもその段階は、実はまだ半分の力しか身についてないことが多い。

 ほんものでないからテスト後2,3ヶ月もたてば、いとも簡単に忘れるのでしょう。実力のつかない勉強のしかたは、これこそ効率(嫌いな言葉であるが)の悪い学習法であるといえる。そしてそれを、殆どすべての生徒が行っている。塾に行っておろうが行ってまいが関係ない。何度も同じことを繰り返して(その実態は表面的だ)、そしてまた幾分か忘れる。習ったことは一度ですむように、その一度をとことんやって、心底理解と暗記をしたらどうかと、いつも思うんですね。

 このノートを徹底して利用した学習法は、攻めの学習そのものであり、実践的問題を通してまとめるのであるから、テストでは、それが定期テストであろうと実力テストであろうとまったく動じない、問題をチラッと見ただけで、その出題内容と答えの8割がたは瞬時に頭に用意されて浮かぶのが基本となる。ちょっとじっくり考えるのは、残りの2割ぐらいなものです(一般の生徒はその逆ですね)。それができるようになるには、多少の時間は必要ですし、また普段にとことん考え込む、体の芯まで暗記してしまう作業がいるわけです。週に一度、土日のどちらかを利用して、5,6時間をかけて学習を継続し積めば、できるようになるかもしれない。