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英語問題集を作りながら思ったこと <中1英語REVIEWほか>

 中1生対象の基礎英語問題集を作りながら思ったこと、これはぜひまた伝え
ておきたいなあと感じたことについてすこし書かせていただきます。

 問題集を作るにあたり、参考にと市販のよく売れている評判のいい英語問題
集を新たに2冊買ってきたのですが、その内容のあまりにもお粗末さにがっか
りいたしました。なにがどうお粗末なのか―――。

「学ぶ者の能力と意欲」+「教える側の力量」+「教材の質・量」。
 この3つが英語の場合特に、その学力形成に大きく影響を及ぼすものかと考
えています。3つともいいものが揃えば、いうことなし。1つだけでは成り立た
ない。2つなら、中学の場合、足りない部分を補完し合ってなんとかなるケー
スも多々あるでしょう。

 それゆえ「教材の質・量」の問題だけを採り上げても、それ単独で英語の出
来不出来の原因としてとらえるわけにはいかないのですが、教える側の教師の
力量が特段すぐれていないならば(残念がらすぐれている者はそう多くはない
でしょう)、2つのうちの1つとして、やはり英語の成績の出来として、その足
を引っ張る大きな要因となりえるでしょう。

 生徒の多くはなぜ2学期も後半になると、英語が混乱するのか? 表面的に
はできているように見えても、その実、実力がそれほど高くないことが多いの
はなぜか? その原因はいろいろあります。この原因に関しては過去何度も言
及してきました。ここでは上記の意味からも「教材」という観点でみてみます。

 これはおそらく読者の方にとって、ふだんあまり考えたことがない視点かも
しれません。そして大きな盲点になっている部分でもあります。「教材」とは、
学校の教科書、市販の問題集、塾専用の問題集、ほか参考書やプリント類など
の総称ですが、まあざっくり、適当にイメージする問題集でお考えください。

 4つのがっくりすることがあります。

1.学習する文法の順番に、おおいに問題あり!
 
 be動詞から勉強すべきなのである。be動詞を勉強しているあいだ、一般動詞
を混ぜてはいけない。それだけのことで混乱するのである。be動詞の文法をと
ことん徹底してやり遂げてから、一般動詞の文法に入るべきというのがわたし
の意見です。(これはいまの英会話を重視した教科書とは、根本的に相容れな
い視点ではありますが・・・。)

 be動詞の文法をなぜ徹底してやらねばならないかというと、それは「主語」
をしっかり捉えることがとてもとても大切だからである。ふつうの文には主語
と述語がありますが、ご存じのようにbe動詞の文法ではis,am,areの3つのなか
のいずれかが、述語にきます。否定文はbe動詞のあとにnotをつければよく
(あるいは短縮形)、疑問文はbe動詞を文頭にもってきて、あと?マークをつ
ける。

 つまり、述語は3つのbe動詞のいずれかですから、それを決めるのは主語に
あり、思考と注意を働かすのは主語の見極めにあります。1人称、2人称、3人
称、そしてそれの単・複の区別です。1学期のあいだは述語を動かさず、つま
りbe動詞に固定して、ひたすらあらゆる形の主語を知れ、ということです。

 主語は、教科書や問題集の配列でゆけば、
<This is〜.That〜.I am〜.You are〜.He is〜.She is〜.>のthis,that,I,
you,he,sheの6つぐらいでまず1学期のあいだ文法が進められるが、たとえば
mybrother,yourmother,his uncle,her friend,these,those,Mary,Tom,Mrs.
White,thatbus,thisriver,baseball,my house,their son,our parents,his
sister's name,thoseanimals,yourstudents,the dictionaries,the station
などがあり、さらにone of them,someof usなどもあり(これは主部だけど、
主語がどれかも教え)、疑問詞who,what,whichも、ときに文の主語になります
ね。

 適当に羅列しましたがこういう語句が、主語を形成している。これらはbe動
詞の文法の文でしっかり学べるし、また一貫して学ぶ必要がある。代名詞の格
も、主格・所有格・目的格・独立所有格(所有代名詞)もすべて、be動詞の文
法を集中して勉強するなかで1学期中にマスターしておくべきものである。

 英問英答問題。とても大事な形式の問題だけど、設問の主語を答えの文では
代名詞転換するのがルール。上で書いた主語を瞬時に代名詞転換できるだろう
か? 1秒もかからず、ほぼ100%つねに正しく転換できるだろうか? これも
訓練です。be動詞の文法のなかでしっかり身につけておくべき力です。

 また、主語がしっかりとらえられていれば、その単複は見えているわけで、
冠詞+名詞、冠詞+形容詞+名詞などの冠詞のつけ忘れはありません。よく見
えていなから、あるいは意識が不十分だから、不注意な冠詞のつけ忘れをする
ことに2学期はなるんですね。

 存在のbe動詞。これもbe動詞の集中した文法勉強のなかで習得しておくべき
ものですが、長年の指導の経験からいいますが中1英語がほんとうにわかって
おりまたできる生徒は、この存在のbe動詞ができる生徒だと思っています。し
かし、弱いですね。

 あと、ほんとに初歩的なことですが、疑問文では?マークをつける癖。新し
い単語は書いて覚える訓練。これらも1学期からbe動詞の文法を徹底して演習
するなかで身につけておくべき基本でしょう。

 ところがどうでしょうか。教科書、一般の問題集などでは、<This is〜.
That〜.I am〜.You are〜.He is〜.She is〜.>のbe動詞の文法をすこしやれ
ば、主語をIやYouに限定してhave,play,playなどの一般動詞の文法に入ります。
そうかと思うと次に、冠詞と形容詞、複数形の文のbe動詞主体の文法になり、
それがすむと主語が3人称単数の一般動詞の文法に入ります。その次はいろい
ろ別れるところですがふつう代名詞の所有格、所有代名詞と絡んだwhoseなど
の疑問詞の文法になるわけですが、これはbe動詞の文法です。そのあとは時間
やHow,When,Whereなどの疑問詞の入った疑問文の文法、これはbe動詞と一般動
詞の混合した内容になりますね。

 多くの生徒が、2学期の半ばから文法があやふやになり混乱する理由がこれ
でおわかりいただけるでしょうか? 本来be動詞の文法で徹底して主語を知り、
その他文法の基本ルールを徹底して叩き込むべき時期に、be動詞の文法をちょ
っとかじればすぐに一般動詞の文法に入るといった学習順番、それをさらに行
ったり来たりするわけですからごっちゃになり、それも演習量がすくなければ
整理整頓できないまま勉強が進むことになります。そうした生徒はとても多い。

2.問題の出し方・形式に、問題あり!

・疑問文に対してどう答えればよいか。いわゆる問答文の問題は平常のテスト
や実力テストは言うに及ばず、入試でも必出の問題形式である。どの文法単元
においてもつねに、よくよく訓練をし正確に答えらるようにしなておかなけれ
ばならない。

 ところが案外その演習量がすくない。生徒の力も弱い。問題あり、なのであ
る。

 さらに困ったことに逆の形式で問題に出す、すなわち「次の英文の下線部を
たずねる疑問文を書きなさい」の問題を当然のように必ず入れる問題集が多い。
この意味と意図はじゅうぶんわかる。しかし、なんの合理性があるというのか。
通常のテストなら気まぐれに出す見識の低い先生もいるかもしれないが、実力
・学力テスト、入試問題ではこの種の形式の問題が出ることは皆無である。

 これは、本筋がまずしっかりできなければならないのに、脇道もつねに歩け
と言っているようなものです。生徒の実情は、本筋がふらふらしているのであ
る。つねに本筋を固めることが大事ではないか。

・よくヒントが右端とかに下に載っている問題集がある。そこの部分は注意す
るところ、ちょと考えるところである場合がほとんどだけど、このヒントとい
うものはどうなのかな、と思う。

 これは生徒自身の性格や気質にもよるけれど、一般論として書けば、低きに
流れるといえようか。つまり自分でよく考えようとせず、すぐにヒントをみて
しまう癖がつきそうだ。コワいのはこの自分でよく考えないという勉強への姿
勢、ヒントの上に成り立った力と自分の素の力の混同、錯覚である。

 本来、ひとつのことを学び、理解すれば、それがはたしてどこまで自分がわ
かっているか、あるいは深く吸収するために問題演習がある。逆な言い方をす
れば、わかっていないことをつかむこと、間違いをすることが演習の目的であ
ろう。それを修正していくのが、ひとつの勉強の姿である。そこに安易なヒン
トは要らないというか、不純物だと思うのだが。より厳しい勉強のなかにこそ、
実力がつく要因がある。

・和訳がすくない。
 生徒は和訳も間違うものである。疑問文を肯定文で訳したり、学習が進むに
つれ時制が増えてくるが過去形を現在形で訳したりその逆もしたり、その他考
えらない間違いも和訳には出てくる。ひとつの文法単元を学習し終えれば、和
訳ほどやさしいものはない、またミスが出る率が低いものはないと思うのだけ
ど、生徒の現実はそれを許さない。だから和訳問題も英作問題同様、じゅうぶ
ん意識して和訳単独の問題だけにかぎらずつねに訓練を積むべきである。それ
がいまの問題集には乏しい。

3.演習量に、問題あり!

 市販の問題集の問題数は、たとえばひとつの問題に対し多くて5問程度、少
なければ2問とか3問である。ひとつの文法に対し左右2ページで設問が4〜6問、
総問数で12問から18問くらいか。わたしからみれば、ほんとに演習量が少ない。
これでは、その場の理解はできても実力への深い定着にはつながらないと思う
のだが。

4.くり返しの少なさに、問題あり!

 いっぱい例があるが、ここでは代表的なものをひとつだけ。someは肯定文、
anyは疑問文と否定文で用いる、という文法(語法)(ただしこれは、中1段階
の文法に限る)。

 これを生徒は何回間違うか。理解するのは一度でいい。理解したことをその
場で問題演習して、できればいいというものではない。次の機会にできなけれ
ばならない。設問の形式は文の転換ですね。

 買ってきた問題集でこれをチェックすると、はじめにたった2問。その単元
のまとめテストで1問。そして最終の過去形の文法で1問でした。これでは生
徒はできるようにはならない。その都度間違います。この3倍も4倍もくり返さ
ねば、実力にはなりません。


 以上、これら4つの問題集の不備と課題を考え、そのなかでもいま特に1の指
摘をもとに1学期の勉強内容を振り返ることによって、その点数や成績評価で
は決して見えないもっと重要な何かに気づいていただけると、いまの勉強と今
後の勉強にもお役に立てる点があろうかと思っている次第です。