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  高校入試でターイセツなこと、って何だ?!
§255 理科と社会の問題集について<改訂>
<ある質問に答えて>

 あるお母様から、次のようなご質問を受けました。

 これは過去にも幾度となくいただいた質問で、とりわけはじめてご注文をい
ただくケース、そして新中1生になられるご父母の方に多いご質問でもあるの
ですが。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「理科と社会についてまたまた質問です。先生の問題集はかなりレベルが高い
ように思います。
 娘は学校では80〜90点ぐらいはとってますが、すぐに忘れています・・・。
 悲しいぐらいにすぐに(^_^;)。興味がない、その一言につきます。だから先
生の問題集をする前に、またはまずは定期テスト対策用に、何かお薦めの問題
集はありますか? HPには社会の問題集で(学研の定期テスト対策と満点BON)
の2点を勧めておられましたが、理科のお薦めはないでしょうか? やはり先
生の問題集でしょうか?」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 すでに一度、なにかしらかの問題集をご注文をいただいて実際にご利用され
た場合、その良さもまた悪さも知悉され、次にはある程度類推されて新たな問
題集をご依頼いただくケースが多いのですが(すみません、宣伝臭くなりまし
て)、はじめての場合、値段が値段だけに(これもほんとうにすみません)慎
重にご思案されるのは、当然の上にも当然かと思います。

 ただ大手のようにテレビやその他の媒体で、ばかばか宣伝できる規模もゆと
りもなく、そしてまた押し売りまがいの途方もない金額の一括購入をセールス
する教材でもありません。ドモホルンリンクルのように(?)お試しのサンプ
ルを提供できるものでもなく、一部の塾のように無料体験ができるものでもあ
りません。ただほんのすこしあるのは、受動的な形のHPでの学習情報と問題集
の説明のみであります。あとはちょっとご信用いただけて、えいやーの掛け声
とともに崖から飛び降りるお気持(?)でご購入いただけるかどうか、です。

 くだらぬ余計なことを書きました。もちろんこのお母様のご趣意はここには
なく、わたしの問題集はレベルが高く、その前にやっておくべきor推薦する問
題集があるかどうかのご質問です。

 まず問題集のレベルが高いのか?!について。

 これはときに誤解されていることがあるのですが、決して高いことはありま
せん。簡単にいえば、いまの中学の学習内容、それに合わせた問題集などに高
いレベルのものは、私立超難関高校(偏差値70を超える)への受験向けのもの
を除いてまずないでしょう。というのが、わたしの見方です。

 レベルを高くするには、二つの方法があります。

 ひとつは、問題そのもののレベルを上げること(当たり前ですね)。いわゆ
る応用ですが、これは基本的にいまの公立中学の1年や2年の教科書内容や授業
にはまずありません。よって、上げようがない。あるとすればそれは中3の内
容であり、2年の学習内容と融合して難しくすることはできます。そしてそれ
ができるのは、数学と英語の入試問題を採り入れたときです。

 もうひとつは、習う量を増やすか、習うスピードを上げるかです。

 習う量を増やすことがなぜレベルを上げることになるのか。それはかつての
詰め込み教育といわれた時代の学習内容からすれば、いまはせいぜいその8割
くらいなんですから、レベルがあきらかに下がったことを確認、あるいは実感
していればわかることです。ただし英語は、新指導要領の下、覚えるべき単語
量が驚くほど増え、この限りではありませんが。
 
 あともう1点、習うスピードを上げることです。これも中学3ヵ年分の内容を
2年で終える私立中学の授業のスピードと展開をすこし想像してもらえばわか
るか・・・と思います。

 つまり、基準をどこに据えてとらえるかによってレベルの判断は異なってき
ます。現在の公立中学の学習量とゆったり習うスピードに基準を置くなら、わ
たしの問題集はレベルは高いといえるし、おそらくご父母の方々が公立中学
(?)で習ったときの、その学習量とスピードに基準を置くなら、わたしの問
題集はごくふつうの当然のレベルといえるでしょう。

 ただし、学校の授業レベルや市販の問題集の内容に迎合しているようでは、
おそろしい生徒の忘却力に負けてしまいますから、そしてある日突然、生徒の
受験での知識レベルが変異的上がるわけでは決してありませんから、高校入試
へのたしかな実力を中1より徐々に徐々につけていけるよう、いろいろと工夫
して作ってあるわけです。

 ちょっと脱線。

 わたしの通った公立中学は1学年13クラス、1クラスもそのころは50人あまり
にもなり、学年全体では670人前後の生徒が確かいました。いまではとても考
えられない超マンモス公立中学でした。なにしろ校庭は、上段・中段・下段と
呼ばれていて、上段だけでもいまの中学の規模くらい、中段はテニスコートや
クラブの施設、講堂などがあり、そして下段は甲子園球場といえば大袈裟だけ
どまあとてつもなく大きく感じる運動場がありました。そんなもんで校区は広
く、我が家はその校区のまさに端も端に位置し、それゆえ毎日3キロあまりの
道を通学していました。

 その道の半ばほどからなだらかな坂が続き、登りきると貯水池が3つと閑静
な大邸宅や領事館が立ち並び、貯水池のまわりにはみごとな桜並木が続いて春
にもなると桜吹雪が、夏には蝉時雨が降りそそぐ、そんな季節の変化をいっぱ
い感じさせてくれるやさしい道でありました。

 こんな感傷はどうでもいいとして、中学生にとってこの3キロ強の道のりは
ちょっと長い。長いけど慣れてしまえば平気でなんともなくなる。まあでも、
都会は別として今でも日本の山村では険しい山道を、もっと長い距離を歩いて
通学している子供たちはいるだろうし、ケニアやエチオピアなど高原を片道10
キロ以上走って通学している子供たちのいることを想えば、とてもえらそうな
ことはいえず、たいしたことではないんですね。

 しかしいま、この3キロあまりの道のりを昔の公立中学生の普通の勉強と仮
定すると、これはレベル云々ではなく、規則的な勉強とその量的な問題だとい
えるのではないかと思うんですね。それをこなせるものはできる、こなせない
ものはそれなりの力しかならない。これがわたしの問題集のレベルであり、ま
たそういうふうに捉えていただけるととても有難いのです。

 さて、もう少し焦点を合わしていかねばなりません。理科と社会の問題集に
関してです。

「理科と社会。小学校で80〜90点ぐらいはとっている。しかし、すぐに忘れて
いまう。そして興味がない。」

 公立中学生に非常に多いケースでしょう。これはまず、どんなに説明を詳し
くまた論理をつくしても、生徒の耳とこころに届かなければなんの解決にもま
たその緒にもつかないわけで、それだけにとても悩ましい問題です。

 ただそれでも、国語とは本質的に違い理科と社会は形から入って勉強ができ
るわけですが、つまり定期テスト対策用の問題集や教科書準拠の問題集を使っ
てある程度勉強し努力すれば、目先の定期テストでいい点数がとれることは可
能だし、またそのような生徒も多い。しかしその内実、実力と結びついた勉強
をしているかというと、甚だしく疑問であります。この疑問が杞憂ですむケー
スを捜すほうが、むしろむつかしいともいえるでしょう。

「すぐに忘れる」。そうであるなら、また覚えなおせばよい。とともに、忘れ
ないような学習とはどういうものかを考え、錯誤しつつ実行し、そしてつたな
いところを見つけてはそれを埋め、あらたなことを足す、といった小さな努力
を積み重ねていくことなんでしょう。このシンプルなことができるかどうかが、
いや、していくことが、中学での勉強の課題であり本道である。

 いままでのやり方からどう脱却するか・・・。それにはまず、時間をかけね
ばなりません。かかることを厭ってはならない。数学や英語の学習のあと回し
であまった時間でやればよいとか、気がむいた日に適当にやるとか、まとめて
テスト前だけに集中してやるといった姿勢や気持からは、決してほんとうの実
力は育たないでしょう。9教科あるなかで主要5科目と実技4科目の意識は当然
違うとしても、主要5科目については同等の気持とやる意欲で臨むべきであろう。
実際にかかる時間は、たしかに数・英に多いところが出てくるにしても、理科
と社会にも同様の熱意と学習する習慣が必要である。

「興味がない」。これは、「すぐに忘れる」以上にやっかいな問題である。興
味がないならしなければよい。世のなかには、興味があることがいっぱいある
反面、興味がないこともそれ以上に山のようにいっぱいある。しかし、仕事な
らどうだろうか? 興味ある仕事についている人はさいわいだけど、興味のな
い仕事や職場についている人は、その数倍、いや数十倍多いのではないか。大
事なことは、その放り出された恵まれない環境でとにもかくにも自分を生かそ
うと努めること、必死に活動することであろう(ちょっと格好良すぎる文句で、
わたしにはまったく不似合いですが。あいすみません)。

 勉強も同じこと。ただ仕事と違うのは、仕事はどれほど心を込めて精一杯努
力しても、ときに報われないことが少なからずあるのに対し、勉強は必ずやっ
ただけの報われるべき成果が出るのだから、これほど楽で(?)うらやましい
ことはほんとうはないのである。そこに中学レベルのまだ基礎の学習で、興味
がある、ないという感情や感覚を持ち込むこと自体おこがましいこと、また早
計な驕りで、学生の本分を知るべし、と思うのである。

 で、つまるところ、「わたしの問題集をする前に、またはまずは定期テスト
対策用に、社会と理科で何かお薦めの問題集はありますか?」になりますが、
このご返答へのほぼ急所となることはすでに上記で述べてきたつもりで、また
それ以上にもっと大切なこと、勉強の基本として持っていたいものを膨らませ
て述べてきました。

 HP上で社会と理科の各問題集の狙いや使い方はご説明しておりますので、重
複することは避けるとして、ふだんの勉強でノートまとめがとれる生徒(これ
が理想ですね。またとれている優秀な生徒もいますが)なら、市販の問題集は
いっさい利用しなくとも直接に勉強できるであろうし、また定期テスト対策用
にも活用できるように作ってありますので、そのようにご理解いただけると有
難く思う次第です。

 最後に1点、補足。市販の問題集を選ぶ場合は、「自分でみて選ぶべし」で
しょうか。

 これは以前にもどこかで書いていますが、中学生なら自分ひとりで書店に行
き、捜し、逡巡し、そして判断して買うべきでしょう。自分で選んだという行
為から生まれる責任と自覚は、人から買い与えられたものより大事にし、やら
ねばならないという意欲に結びつくことも、より多くあるでしょうから。