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  高校入試でターイセツなこと、って何だ?!
§327 5科目の成績をみる目について VOL.1
<5段階評価の成績表>

 今回はひさびさに基本に戻ったテーマにしたというか、「5科目の成績をみる目」について書いてみます。

 英語・数学・国語・理科・社会のこの5科目の成績って、いったい何を基準にしてみているのでしょうか?――

 まず、ここの土俵がお互いに合っていないと、書いているほうも読んでいるほうも実はそれぞれ別なことを考えていたり、違う目線でみていたり、またもし意見交換してもたぶんに齟齬を生じることになります。そしてこのことは、現実のなかでけっこう多く目立ってあるものです。

 ふつうはまず、学校の定期テストで取る点数と、その評価を示す(はずである?・・・)5段階評価の成績表をみて、たとえば英語がいいとか社会がよくないとかを判断するかと思います。つまりこれが、5科目の成績を見る目の素朴な土俵であり、生徒も親もまず疑念なく第一の基準にして考えていることでしょう。

 これはこれで自然だと思います。しかし、その点数や5段階評価が、実力と正確に直結しているかといえば、あるいはその生徒のほんとうの学力を表しているかといえば、話はまったく違います。といえばすこし言いすぎにしても、きわめて危なっかしい見方であることは間違いところでしょう。けれどもこんな当たり前の事実が、どうもまだわかっていない人が多いのも世のなかでしょうか。

 たとえば次のようなの記述。中2の男子生徒をもつ、ある親御様の質問内容(をネットで見かけた)。

「数学・英語の成績は4、国語・理科・社会は3。偏差値60ぐらいの公立高校を考えています。意見をお伺いした塾ではやはり英語と数学に時間をとったほうがいいとアドバイスされましたが、常に数学が4でも塾は必要ですか? 受験で応用問題を解けるようになる為には学校の勉強だけでは無理なのでし
ょうか? 英語は小4から習いにいっているので塾は考えていません。でも、今75点くらいとっている数学が90点になり通知表が5になれば、云々・・・」

 この方がどうのこうのというのではありません。ただ、ほんとによく見受けられる事例のひとつとして、ちょっと捉え方の間違っている部分と疑問に感じるところを、ここですこし分析しておきます。

 まず、5科目の学校での成績評価と偏差値を、この方は同じ次元において捉
えているようです。

 わかりやすくするためすこし極端に書きますが、数・英・国・理・社がオール4でも偏差値が50という生徒はいます。逆にオール3でも、偏差値が60である生徒もいます。どちらもまったく感心しない。前者はうわべの力だけで実力が伴っていない生徒。後者は学校の授業を軽視し、おそらく塾の勉強だけしっかりやっておけばいいと思っている生徒。細部はいろいろあるにしても、簡単に書けばこうなる。

 では、こういうのは特殊で一部の生徒なのかといえば、たしかにすこし極端に書いてますからその意味では特殊ですが、目をぐっと近づけて観れば、けっこう多くの生徒がこのどちらかのタイプに属しているわけで、それは各科目に分けて診るとさらにくっきり判明することなのですが、そのことはあとで触れるにして、ふつう常識的に考えているように5科目の学校での成績評価と偏差値が客観的にも主観的にも合致している生徒なんて、逆に少数派に属するでしょう。これは意外に思われるでしょうが、長年の経験則から書いていることです。

 大体が、「相対評価」なら信用置ける面がまだしもあるものの、5段階の「絶対評価」だという点、そのつけ方自体にも先生間・学校間で大いにばらつきがある上に、ご存知のようにその評価にはテストの点数だけでなくあれこれうるさい観点をつけて決めるわけですから、事学力の面だけの正確な力を推し量ることには、到底無理があるというものです。

 このいささか冷めた目というか学力を誤認しない目で成績をみていくのが、ほんとうの学力形成とその向上に欠かせないものと考えています。

 ゆえにこの視座でいえば、上記の質問には、3点ほど問題点があります。まず「数学・英語の成績は4、国語・理科・社会は3。偏差値60ぐらいの公立高校を考えています」の主張が、如何にあやふやな観点で根拠の弱い、正確に目標を見ていないたんなる願望でまだあるかがわかることでしょう。

 こう書くと、いかにも手厳しく冷たい批判のように聞こえますが、もちろん親の子を思う気持、贔屓目にみてしまう思いや考えはよくわかります。しかしこのままの考えと心構えでゆけば、おそらく偏差値60あたりの高校には到底届かず、ツーランク下の平均的な公立高校(偏差値は50とします)に行くことになる確率が、非常に高いことだけはじゅうぶん観測されるのです。もうこうした現実は世間にはいっぱいあり、できたら黙っていたい事案(?)です。

 でもこれをお読みいただいている方にはできるかぎりそうはならないように、1年あるいは2年先の最終段階でいやな結果を迎えないように、そういう趣旨で書いております。

 さてしかし、それでも今回のVOL.1では、学校の5段階評価の成績表(絶対評価!)を基準にし、かつこだわって5科目の成績を見ていくとします。くり返しますが、5段階評価の成績表では学力の面に関する正確な力を推し量ることはできません。価値は半分もない。その半分もないところにあえて限定、設定して以下5科目の成績を論じますので、その目と視点で続きをお読みください。

 数学・英語の成績は4、国語・理科・社会は3というのは、いったいどういう成績なんでしょうか? 数学と英語は、がんばっています、他の3教科はふつうです、と捉えるのか、あるいは捉えていいのか。これはそれぞれの目線の位置や常日頃の考え方によって大きく異なるでしょうが、まあここは偏差値60あたりの高校を目指しているのですからその観点で瞰ますが、ひと言でいえば、この生徒の力はごくごく平均的、ふつうでしょう。

「英語は小4から習いにいっているので塾は考えていません」と、書かれています。

 小4でも小5でも構いませんが、そんな早くからじゅうぶんに余分に(?)英語に接してきてるのですから5ならわかりますが、4という成績はどうなんでしょうか? もし勉強してこなかったなら3ぐらいの吸収力なのか、3年もよぶんに勉強してきたから4なのか、どちらでもいいですが、平凡すぎる力が容易に想像できます。

「受験で応用問題を解けるようになる為には学校の勉強だけでは無理なのでし
ょうか。でも、今75点くらいとっている数学が90点になり通知表が5になり、・・・」と、書かれています。

 75点で評価4をもらえる中学校にも驚きですが、それ以上に入試数学のなかの応用レベルの問題を解けるようになるには、学校の評価のたとえ5でも甚だこころもとない、いやまったく通じないことを、奈何せんご存じないようです。(その詳しい説明は、HP上の「数学について」のところであらゆる角度から言及していますので、ここでは省きます。)

「意見をお伺いした塾ではやはり英語と数学に時間をとったほうがいいとアドバイスされました」と、また書かれています。

 たしかにそうです。英語と数学にもっと時間をかけなければ、評価は4でも偏差値で60の力に達していないことは圧倒的に多い。この生徒の場合現状では50とか55とかそんなものであるかもしれない。しかしそれ以上に、成績にたいしてしっかり目を開いて考えねばならないのは、「国語・理科・社会は3」という事実でしょう。こちらが大問題(?)ではないか。時間をじゅうぶんとってなんとかしなけばならないのは、むしろこちらの3教科でしょう。

 評価の3って成績は、ごく平均的な学力テストの偏差値に直せば、いったいどのくらいなんでしょう? そもそも絶対評価の3を相対評価(?)の偏差値に置き換えること自体馬鹿げていて大いなる矛盾を起こしていますが、そこはまあ無理に目を瞑り、物事をざっくりと掴むために書いているのですが、3がふつうであるともし認識しているのなら、偏差値でいうところのふつうの50の力があるんでしょうか? 経験上の感覚で書きますが7,8割方の生徒は、まず50はありえません。45とか40、そのあたりであることが、限りなく現実に近い姿でしょう。

 よって、以上の4つの視点で総じて判断するに、この生徒の力(数学・英語の成績は4、国語・理科・社会は3)は、「この生徒の力はごくふつうでしょう」となってしまうのです。成績に対するあまい見方や認識は、必ず先になって裏切られるというか、こんなはずではなかったという状況に陥りやすいので、できるだけ厳しい目で成績表をみてほしいと思うのです。

 この続きは、次回に。