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§138 ノートまとめについて・再び<改訂>
<立方体が描けるか?>
今回再び、「ノートまとめ」について少し書いてみます。
小学5年生をお持ちのあるお母様から、
「もし機会があれば、さらに詳しく具体的な書き方など、ノートまとめについて教えていただけたら有難いです。」
という内容を受けて、書く事にいたしました。
といってもこのことは、すでに「学習のしかた」で述べているのですが、さらに詳しくということで、そうか、まだ詳しくはないか、とついその気になってしまい書くことにしました。けれどもつらつら考えてみますと、「具体的な」という要求に応え具現化することはけっこう難しいものがあります。なぜなら、そのことを表現し伝えるためには、図や表が描け、また線や矢印なども書けることが必要になり、こうしたテキスト形式のメルマガではそうしたイメージが描けませんから。
以前、「ノートまとめ」に対するこころ構え、取り組む基本姿勢、および諸注意などを書きました。重複しないためにすこし読み直してみたのですが、なるほどふむふむと、自分でもなかなかいいことを述べているわいと感じた(?そんなこともたまにある)ところがあったもので、もう一度その要所だけ書いてみます。
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「ノートまとめ」というのは、自分の頭で考える作業なんです。わかってることを整理し、またそれ以上に、まだほんとうにはわかっていないぞ、ということの確認なんです。習ってわかったことを、もう一度自分の言葉で整理し直してみる。大切な箇所、ポイントをよく考え、文字や図、表で書き表してみる。これは、覚えこむ作業になります。深い暗記につながります。そしてまた、習ってもうひとつまだわかっていないあやふやな知識、中途半端な理解に対し、自分の頭でもう一度考える機会を与えてくれます。
「ノートまとめ」は“ノート写し”ではないんです。この学習法は、つかの間の気まぐれでやるものでもやれるものでもなく、第一、継続が必要です。持続する学習法は、ある意味、できるだけ手ぬき(?)をしなければ“もちません”。理解とともに覚えること、覚えきることが主体なわけで、できうる限り本質に迫らなければなりません。すなわち、余分な贅肉を取り去る作業がそのなかにあります。
ノートまとめの前に理解しておくことは基本なんですが、それをするなかで理解が深まることは結構あります。見えてなかったことが見えてくることもあるのです。実は、これが一番重要なことかもしれません。
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さて、具体的にということで、一例(小6生用)を挙げて説明してみます。
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【問題】
「下図のような、一辺6cm の立方体ABCD-EFGH があります。この立方体を、
3つの頂点A,C,F を通る平面で切るとき、次の問いに答えなさい。
1.角ACF の大きさは何度になりますか。
2.切り口の形は、どんな形になりますか。その名称を書きなさい。
3.2つに分けられた立体のうち、小さいほうは、立方体全体の何倍になりますか。」
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算数の問題です。応用問題のごく基礎にあたる定番問題ですね。図が描けません。できれば、そこら辺にある適当な紙に鉛筆で図を描き、問題も書いてみてください。(立方体を描き、左上の頂点から反時計回りにABCD
で、A の真下にE が来て、同じく反時計回りにEFGH が来ます。AとC,AとF,FとC を線で結びます。)
算数の問題(小6生用、ただし受験勉強しているのなら5年生レベル)と書きましたが、いまはこんな簡単な問題ですら教科書には出てきませんし、また授業でも習いはしないこともあるでしょう。市販の問題集ならどれにでも載っているレベルの平易な内容です。はっきりいってこんな問題は、応用の基礎というより、基礎レベルのなかの応用に当たるものですが、いまの小学校の算数の内容では、基礎の応用などからっきしなく、どこからどこまでも基礎の固まりに過ぎませんね。
つまり、「基本」にも至ってはいない。基本というものは、もっと幅広く考えねばならない内容がさまざまにあるものです。その基本なるものがいまの教科書ではスカスカの状況ですから、目があてられません。これでは応用問題を解くための力なんかつくはずがありません。よく思考力という言葉が使われますが、こうした「基本」ですら学習し身につけていない学力では、なにが思考力かと、戯けたことをいうなと言いたくなります。こうした現実の結果、上の問題は、中学1,2年生ですら、3つともすぐさま正解を出せる生徒は半数をはるかに下回るでしょう。なんなら、お試しあれ。
話を戻します。塾で勉強したにしろ自分でやって解答チェックしたにしろ、とにかく習ったとします。そしてそれが、自分の力で解けなかったとします。その場では一応、解き方とポイントがわかりました。しかしそれは、たいていの場合、わかるようにただ教わった(あるいは解答をみて、答えを写した)だけです。つまり、その解法は、まだ他人のもので、なんら自分のものに所有していないのです。この認識が重要です。
しかし、この意識と認識がとても弱いのがいまのかなり多くの生徒の実情ですね。習ったことを確実に自分の懐に入れることが、復習の意味だと思いますが、その際、ノートまとめをする勉強法は、実力を鍛え、より確かなものにする最善の方法かと思います。
その確かなものにした感覚と判断をこの問題でいえば、1分で処理できるかどうかにあるいえます。なぜそんなに速く処理できるかといえば、問題の図を見ただけで、ああ、あれかというパターン化した代表問題であり、覚えておくべき図形の基本知識に属するからです。それだけに、最初にこれを習えば、必ず自分の頭で理解、暗記するのは当然の作業といえるでしょう。ノートにやり直してみる。そこで、実はいろいろと問題が出てくるのです。
その問題点を次に書いてみます。
生徒はさまざまなおかしなことをします。考えられない間違い、問題以前の問題点を曝け出します。上の算数の問題で書きます。
実は立方体が正確に描けないのです。たとえ描けても、とにかく時間がかかる。消しゴムで何度も何度も消したり描き直したり、また描く順番にあれこれ手間取ったり、1分以上は最低かかるのではないでしょうか? ですから、上の図形もできれば自分で描かせてみてください。この症状がよくわかります。
こんなもん、10秒で描けるようになることです。あえていいますが、ものさしなんか使うべきではありません。手書きですばやく正確に描けることです。そのほうが実は作業として難しいことですが、より問題に迫ることができるのです。
図形の応用問題を解くためには、図や絵が素早く正確に描けることは最低の必要条件であり、欠かすことのできない絶対条件でもあります。こうした力のない生徒は、平常の定期テストでは通じても学力評価のテストや入試では通じません。図形が苦手だという生徒はかなり多いですが、そのほとんどは、この図が、正確に、速く、描くことができません。逆にいえば、図を描かせてみれば、その子の図形能力があらかたわかるともある面いえます。ですから大いにに訓練してください、基本の作図を。ノートに、自分で。
この例をもう一例、引いてみます。
――「中心角120度のおうぎ形をできるだけ正確に描きなさい」
これは問題でありませんね。あくまで単なる作図です。分度器は用いません、手書きで、とします。小学6年以上なら描けるでしょう。中学生ならなおのこと。しかし、あれれ?ということが起きますね。どこかおかしい。それは2点あります。1つは中心角がおかしい。明らかにどうみても90度以下の生徒がいます。また100度ぐらいにしかならない生徒はそれこそかなり多いはずです。
120度を正確にはなかなか描けないでしょうが、でもある程度は描けるはずなのです。真ん中に線を1本入れれば、60度になるのですから。60度ということは、その両端(弧の両端)を結べば正三角形になる。それが実際に描いているのは、そうは見えないはずです。もう1点は、弧の描き方です。120度の弧はかなり彎曲しているのです。弧の両端を結べば、上で書いた60度の線を垂直2等分しなければならないのですから。とてもそういうふうには描けていないはずです。なぜこんな小さなことを指摘するかといえば、その正確さがなければ、応用レベルの問題はこなせないことが多々出てくるからです。雑な描き方では、次の問題の段階のほんとうに考えねばならないことが、視覚的にも絶対に見えてこないのです。
ですからノートまとめを通してより確かなものにするためには、図形の場合、問題の解法とポイントの前に、そしてまた、わからない、わかったという前に、もっと基礎的なことをしっかり訓練、演習すること(図形をよく観る、何度も観る、その図形固有の性質、特徴を掴む、また同時に何度も何度も自分の手で描いてみる、正しく速く描いてみる、など)が、まず絶対必要であり、応用ではその力も問われていることをよくよく理解して、実行してほしいと思います。
次にもう一点、ノートまとめの際にすべきことを書いておきます。
それは問題文の写し方です。そのまま写す生徒が多いのですが、これは時間がかかるだけではなく、非常につたなく、また安易な方法といえます。なぜなら、「考えない」からです。自分の頭で考える、ポイントを整理整頓する学習を常に訓練していくことが大切です。それをノートまとめに取り入れることで
す。このポイントを掴む能力もいま、中学生でもとんでもなく弱いのが実情ですから。
具体例。
「右の図のように、いま長方形ABCD があります。ABの長さは4cm、ADの長さは3cm、また対角線の長さは5cmです。この長方形が直線XY上を図のようにすべることなく転がってゆきます。次の問いに答えなさい。問1・・・・・。問2・・・・・。」
要らんでしょう、右の図のように、という言葉。すべることなく、という言葉(滑ったら、問題にはならない)も。次の問いに答えなさい、も不要! ABの長さは4cmも、ABは4cm、でわかる。削るんですね、余計な言葉を。つまり、削った残りが、ほんとうの条件である。問題を解くための必要知識である。
「長方形ABCD がある。AB4cm、AD3cm、対角線5cm。この長方形が直線XY上を転
がってゆく。問1・・・・・。問2・・・・・。」
どうですか? 最初のと較べて。短くなりました。これでわかる、じゅぶんですね。これは問題のポイントを掴む訓練で、解法のポイントを掴むこととはまた別ですね。その解法のポイントを自分で掴むことこそ、またここからこそが、ほんとうの学習が始まるのですね。
まあ、それはいいとして、算数のノートまとめにについて今回、具体的に大きく2点だけ書きましたが、このやり方と考え方は他の科目についても当て嵌まりますので、自分で応用してもらいたいと考えております。
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