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§350 「中1英語の土台構築110%」
<新問題集を作りながら思ったこと>
ここ続けて受験用あるいは難度の高い英語問題集(Aクラス英語編)を制作してきましたが、今回それと真逆の、中1生対象の基礎英語に立ち返りその問題集を完成しました。
そこで作りながら思ったこと、これはぜひまた伝えておきたいなあと感じたことについてすこし書かせていただきます。
問題集を作るにあたり参考にと、市販のよく売れている評判のいい英語問題集を新たに2冊買ってきたのですが、その内容のあまりにもお粗末さにがっかりいたしました。なにがどうお粗末なのか―――。
「学ぶ者の能力と意欲」+「教える側の力量」+「教材の質・量」。
この3つが英語の場合特に、その学力形成に大きく影響を及ぼすものかと考えています。3つともいいものが揃えば、いうことなし。1つだけでは成り立たない。2つなら、中学の場合、足りない部分を補完し合ってなんとかなるケースも多々あるでしょう。
それゆえ「教材の質・量」の問題だけを採り上げても、それ単独で英語の出来不出来の原因としてとらえるわけにはいかないですが、教える側の教師の力量が特段すぐれていないならば(残念がらすぐれている者は多くはないでしょう)、2つのうちの1つとしてやはり出来の足を引っ張る大きな要因となりえるでしょう。
生徒の多くはなぜ2学期も後半になると、英語が混乱するのか? 表面的にはできているように見えても、その実、実力がそれほど高くないことが多いのはなぜか? その原因はいろいろあります。この原因に関しては過去何度も言及してきました。ここでは上記の意味からも「教材」という観点でみてみます。
これはおそらく読者の方にとって、ふだんあまり考えたことがない視点かもしれません。そして大きな盲点になっている部分でもあります。「教材」とは、学校の教科書、市販の問題集、塾専用の問題集、ほか参考書やプリント類などの総称ですが、まあざっくり、適当にイメージする問題集でお考えください。
4つのがっくりすることがあります。
1.学習する文法の順番に、おおいに問題あり!
be動詞から勉強すべきなのである。be動詞を勉強しているあいだ、一般動詞を混ぜてはいけないのである。それだけのことで混乱するのである。be動詞の文法をとことん徹底してやり遂げてから、一般動詞の文法に入るべきなのである。
be動詞の文法をなぜ徹底してやらねばならないかというと、それは「主語」をしっかり捉えることがとてもとても大切だからである。ふつうの文には主語と述語がありますが、ご存じのようにbe動詞の文法ではis,am,areの3つのなかのいずれかが、述語にきます。否定文はbe動詞のあとにnotをつければよく(あるいは短縮形)、疑問文はbe動詞を文頭にもってきて、あと?マークをつける。
つまり、述語は3つのbe動詞のいずれかですから、それを決めるのは主語にあり、思考と注意を働かすのは主語の見極めにあります。1人称、2人称、3人称、そしてそれの単・複の区別です。1学期のあいだは述語を動かさず、つまりbe動詞に固定して、ひたすらあらゆる形の主語を知れ、ということです。
主語は、教科書や問題集の配列でゆけば、<This is〜.That〜.I am〜.You are〜.He is〜.She is〜.>のthis,that,I,you,he,sheの6つぐらいでまず1学期のあいだ文法が進められるが、たとえばmy
brother,your mother,his uncle,her friend,these,those,Mary,Tom,Mrs. White,that
bus,this river,baseball,my house,their son,our parents,his sister's name,those
animals,your students,the dictionaries,the stationなどがあり、さらにone of them,some
of usなどもあり(これは主部だけど、主語がどれかも教え)、疑問詞who,what,whichも、ときに文の主語になりますね。
適当に羅列しましたがこういう語句が主語を形成している。これらはbe動詞の文法の文でしっかり学べるし、また一貫して学ぶ必要がある。代名詞の格も、主格・所有格・目的格・独立所有格(所有代名詞)もすべて、be動詞の文法を集中して勉強するなかで1学期中にマスターしておくべきものである。
英問英答問題。とても大事な形式の問題だけど、設問の主語を答えの文では代名詞転換するのがルール。上で書いた主語を瞬時に代名詞転換できるだろうか? 1秒もかからず、ほぼ100%つねに正しく転換できるだろうか? これも訓練です。be動詞の文法のなかでしっかり身につけておくべき力です。
また、主語がしっかりとらえられていれば、その単複は見えているわけで、冠詞+名詞、冠詞+形容詞+名詞などの冠詞のつけ忘れはありません。よく見えていなから、あるいは意識が不十分だから、不注意な冠詞のつけ忘れをすることに2学期はなるんですね。
存在のbe動詞。これもbe動詞の集中した文法勉強のなかで習得しておくべきものですが、長年の指導の経験からいいますが中1英語がほんとうにわかっておりまたできる生徒は、この存在のbe動詞ができる生徒だと思っています。しかし、弱いですね。
あと、ほんとに初歩的なことですが、疑問文では?マークをつける癖。新しい単語は書いて覚える訓練。これらも1学期からbe動詞の文法を徹底して演習するなかで身につけておくべき基本でしょう。
ところがどうでしょうか。教科書、一般の問題集などでは、<This is〜.That〜.I am〜.You are〜.He is〜.She is〜.>のbe動詞の文法をすこしやれば、主語をIやYouに限定してhave,play,playなどの一般動詞の文法に入ります。そうかと思うと次に、冠詞と形容詞、複数形の文のbe動詞主体の文法になり、それがすむと主語が3人称単数の一般動詞の文法に入ります。その次はいろいろ別れるところですがふつう代名詞の所有格、所有代名詞と絡んだwhoseなどの疑問詞の文法になるわけですが、これはbe動詞の文法です。そのあとは時間やHow,When,Whereなどの疑問詞の入った疑問文の文法、これはbe動詞と一般動詞の混合した内容になりますね。
多くの生徒が、2学期の半ばから文法があやふやになり混乱する理由がこれでおわかりいただけるでしょうか? 本来be動詞の文法で徹底して主語を知り、その他文法の基本ルールを徹底して叩き込むべき時期に、be動詞の文法をちょっとかじればすぐに一般動詞の文法に入るといった学習順番、それをさらに行ったり来たりするわけですからごっちゃになり、それも演習量がすくなければ整理整頓できないまま勉強が進むことになります。そうした生徒はとても多い。
2.問題の出し方・形式に、問題あり!
・疑問文に対してどう答えればよいか。いわゆる問答文の問題は平常のテストや実力テストは言うに及ばず、入試でも必出の問題形式である。どの文法単元においてもつねに、よくよく訓練をし正確に答えらるようにしなておかなければならない。
ところが案外その演習量がすくない。生徒の力も弱い。問題あり、なのである。
さらに困ったことに逆の形式で問題に出す、すなわち「次の英文の下線部をたずねる疑問文を書きなさい」の問題を当然のように必ず入れる問題集が多い。この意味と意図はじゅうぶんわかる。しかし、なんの合理性があるというのか。通常のテストなら気まぐれに出す見識の低い先生もいるかもしれないが、実力・学力テスト、入試問題ではこの種の形式の問題が出ることは皆無である。
これは、本筋がまずしっかりできなければならないのに、脇道もつねに歩けと言っているようなものだ。生徒の実情は、本筋がふらふらしているのである。つねに本筋を固めることが大事ではないか。
・よくヒントが右端とかに下に載っている問題集がある。そこの部分は注意するところ、ちょと考えるところである場合がほとんどだけど、このヒントというものはどうなのかな、と思う。
これは生徒自身の性格や気質にもよるけれど、一般論として書けば、低きに流れるといえようか。つまり自分でよく考えようとせず、すぐにヒントをみてしまう癖がつきそうだ。コワいのはこの自分でよく考えないという勉強への姿勢、ヒントの上に成り立った力と自分の素の力の混同、錯覚である。
本来、ひとつのことを学び、理解すれば、それがはたしてどこまで自分がわかっているか、あるいは深く吸収するために問題演習がある。逆な言い方をすれば、わかっていないことをつかむこと、間違いをすることが演習の目的であろう。それを修正していくのが、ひとつの勉強の姿である。そこに安易なヒントは要らないというか、不純物だと思うのだが。より厳しい勉強のなかにこそ、実力がつく要因がある。
・和訳がすくない。
生徒は和訳も間違うものである。疑問文を肯定文で訳したり、学習が進むにつれ時制が増えてくるが過去形を現在形で訳したりその逆もしたり、その他考えらない間違いも和訳には出てくる。ひとつの文法単元を学習し終えれば、和訳ほどやさしいものはない、またミスが出る率が低いものはないと思うのだけど、生徒の現実はそれを許さない。だから和訳問題も英作問題同様、じゅうぶん意識して和訳単独の問題だけにかぎらずつねに訓練を積むべきである。それがいまの問題集には乏しい。
3.演習量に、問題あり!
市販の問題集の問題数は、たとえばひとつの問題に対し多くて5問程度、少なければ2問とか3問である。ひとつの文法に対し左右2ページで設問が4〜6問、総問数で12問から18問くらいか。わたしからみれば、ほんとに演習量が少ない。これでは、その場の理解はできても実力への深い定着にはつながらないと思うのだが。
4.くり返しの少なさに、問題あり!
いっぱい例があるが、ここでは代表的なものをひとつだけ。someは肯定文、anyは疑問文と否定文で用いる、という文法(語法)(ただしこれは、中1段階の文法に限る)。
これを生徒は何回間違うか。理解するのは一度でいい。理解したことをその場で問題演習して、できればいいというものではない。次の機会にできなければならない。設問の形式は文の転換ですね。
買ってきた問題集でこれをチェックすると、はじめにたった2問。その単元のまとめテストで1問。そして最終の過去形の文法で1問でした。これでは生徒はできるようにはならない。その都度間違います。この3倍も4倍もくり返さねば、実力にはなりません。
以上、これら4つの問題集の不備と課題を考え、そのなかでもいま特に1の指摘をもとに1学期の勉強内容を振り返ることによって、その点数や成績評価では決して見えないもっと重要な何かに気づいていただけると、いまの勉強と今後の勉強にもお役に立てる点があろうかと思っている次第です。
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