中学生の学習のしかた by Toppo | ||||||||||||
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§359 全国高校入試【数学】問題集から見えてくること<改訂><偏りを知る> これは数学のある高校入試問題集の目次です。そこから見える問題、ポイントについて検討してみます。ただし、数年前の全国公立高校で出題された問題構成の受験対策問題集の資料です。しかし変化はほとんどありませんのでそのまま利用します。( )内は、ページ数を表しています。 ―――――――――――――――― 1.正負の数(2) 13.平面図形(3) 2.式の計算(3) 14.空間図形(2) 3.1次方程式(2) 15.三角形・四角形の性質(3) 4.連立方程式(3) 16.円周角(2) 5.関数と比例・1次関数(5) 17.図形の相似(4) 6.確率(3) 18.三平方の定理と平面図形(3) 7.多項式の展開・因数分解(2) 19.三平方の定理と円(3) 8.平方根(2) 20.三平方の定理と空間図形(4) 9.2次方程式(2) 21.図形の総合(6) 10.2次関数(5) 22.数量と図形の総合(3) 11.整数・数学的な考え方(4) 12.数量の総合(5) ――――――――――――――――― どうでしょうか? 一見してすぐわかることは、左側の1 〜12が計算と関数問題が中心、右側の13 〜24が図形問題ですね。ページ数で比較してみても、左38ページ、右33ページと、およそ半分が図形問題で占めていることがわかります。実際の数学入試問題の大問数でみても4、5問での構成が主流ですが、仮にいま4問としますと、そのうち2問が図形問題が占めてるのがごく普通です。つまり、上の入試問題の構成バランス・量は、現実の入試の比重に即していて的を得た構成になっていることがわかります。中1から中3の教科書で習う項目と、まさにガラッと様相が変わってしまうことにも気づかれるでしょう。 このおおまかな見方だけでも、「図形がきわめて大切!」ということは誰の目からみても明らかですね。次に、もう少し細かくみていきますと、左側の計算関連で、5.「関数と比例・1次関数(5)」と9.「2次関数(5)」 のページ数が多いことに気づきます。つまり、図形の次に必ず出題されるのは、「関数問題」ということです。4問としますと、これで3問が決まったことになります。図形2問に関数1問です。 じゃあ、残りは何? 中学3年間で、実にその半数以上の時間を費やしてきた(?)「計算分野」です。正負の数から文字式、1次方程式、式の計算、連立方程式、2次方程式、因数分解、平方根、また確率などの小問から構成される、「大問1の問題」に当てはまるといいますか押し込められ(?)ます。これがまあ、入試問題における構成の基本骨子の姿です。(ただし問題数が7,8問や10問以上になる県もなかにありますが、その内容を割り振ると、上記の比重とそれほど大差はないでしょう。) では、文章題はどうなってるの? 中1の方程式、中2の連立方程式、中3の2次方程式の文章題は?・・・。たまに、出ますね。あるいは生徒にとってはわけのわからない、パターン化しにくい「新傾向の問題」が。学校ではもちろん系統立てて教えませんし、生徒にとって馴染み薄い、苦手な領域です。数学思考を試すとかの理由で、この「規則性を見つける創作問題」が出題される率は高い。上の項目でいえば、11.整数・数学的な考え方(4) と数量の総合(3) が該当します。この問題バランスに、今後もあまり変化はないと推います。 以上、入試から観た数学の出題傾向ですが、その内容は、「図形」が主役、そして「関数」と「新学力観の問題」が準主役となり、これで70%前後が構成されるということになります。あとはすこし乱暴な言い方ですがカテゴリーで括ると、たくさんある計算関係の問題、文章題までが「その他の脇役」になるといえばよいでしょうか。 ところで、生徒は、数学の何が苦手なのでしょうか?―― それは、いわずと知れた図形でありその証明問題であり、また関数でしょう。いえ、まだありました、通常の授業では今までに接したことがない数学思考を試す問題も。 一般によく耳にする言葉――計算は得意なんだけども、文章題になるとどうも今ひとつよくわからないようで・・・――。これは小学生のお母さんに多い表現ですが、中学になると、問題となる分野はもっと広く深くなります。たしかに文章題も大切なんですが、それの3倍も5倍も重要な内容である、数多くの生徒が手を拱いてどう扱えばいいのかに弱り果て、解法に悩み、はたまたじゅうぶんに呑み込んで理解していないものだから時間の経過とともに忘れてしまう単元が、存在するのです。「図形」と「関数」です。そしてそれをさらに練った「応用問題」です。 この両者の思惑が見事に外れる(?)ところが、高校入試の数学の姿でしょう。ですから、少々受験勉強し数学の応用問題を解いたからといって、その実、自分でよくわかんないものだから教えてもらったり解法を見て納得したとしても、そのやっている学習の浅さと量では根本的に本人の力にはまだまだなっていない状態がほんとに多く、せいぜい100点満点の半分、50点取れるかどうかになってしまう・・・。 平均的な話ですが、入試100点で考えますと、年度による難易度の変化はあるにしても、数学の場合、まあ受験生の平均点は40点から45点ぐらいでしょう。この獲得点数の中身を分析しますと、問1の計算問題中心の問題25点と、問2から問4(5)の大問のなかのはじめの問い1番の問題、よく読めばほぼ誰でも解けるやさしい部分の点数の寄せ集めです。合計すると40点ぐらいにはなるのです。 3年間数学を勉強してきて、かつ塾にも通い、あるいはケースによって家庭教師にもついて、もちろん自分の力のみで努力して勉強してきた生徒もいますが、その結果が、計算分野と各応用問題(図形・関数・新傾向)の入り口の問題だけしかできないというのはあまりにもヒドイといいますか情けないように思います。 さて、もう一つ。最初に書きました目次を分析しますと、次のような結果になります。別の角度、学年別で出題範囲をみますと、 中1―8ページ、中2―25ページ、中3―38ページ (計71ページ) 項目が中1、2(3)にまたがったりするものもなかにあるのですが、それはこちらで分別、判断しました。 どうでしょうか? 見事な偏りがありますね。中1の範囲はたった8ページ、中2でようやく25ページ、併せても33ページで、中3の38ページには届きません。でも、これが正常な入試分析、入試に対応した問題内容だと、わたしは判断します。わたし自身、入試数学を20数年解いてきて感じる感覚とその配分が、みごと一致するからです。つまり、ポイントは中3にある、ということです。もう少しつけ足しますと、中2の後半から中3にあるということです。 一般に流布している考え方、受験関係の書物によく書いてあることですが、入試問題は中1と中2の範囲から70%出題される、だから学校で習った基本事項の復習をしっかりやって、そして中3学習を押さえていけば、じゅうぶんに入試数学に対応できる、などとよく説明されています。 これはまったくナンセンスきわまりない誤った情報でしょう。そんななま易しいことで受験対策ができるのなら、みんな60点や70数点くらいはとれますね。そして平常点が90点以上ある生徒なら、入試では70何点かをふつうに取れてもおかしくはないでしょう。しかし現実は、上に記したとおりです。クラスで1,2番、かなり数学の力がある生徒でさえ、入試点で80点を超えるのが非常に困難なのが現実の入試数学の実相でしょう。 話を戻します。 今回は入試数学の問題分析を試みてみましたが、意識的にその対策、じゃあどうすりゃあいいの?という部分についてはほとんど触れておりません。それは今まで別のところで詳しく書いています。よってここでは、ひとつの問題提起、中学の数学とその成績に対する捉え方について、下記のサジェスチョンズを書かせていただいておくことにしておきます。とくにいま中1や中2生の場合、ご留意していただければ、と。 ・学校の定期テストの点数はひとつの目安であるけれど、それを実力と認識する、あるいは混同するのはもってのほかである。実力テストですら数学の場 合、中3の前半まではあくまで参考にすぎない。理由は、基礎問題でしか構 成されてないからです。 ・中1数学はまったくの基本で、まだまだほんの土台にすぎない。中2数学もほぼ同様である。この認識で、入試数学に備えねば! ・中2数学の1次関数の「応用」からが、ほんとうの受験数学に繋がってゆく。 ・中2の図形をしっかり踏まえ活用できて、いかに中3数学の図形の応用がこなせるようその勉強を結びつけていくか、それが最大の課題であり目標。入試数学は、図形・関数・新学力観の問題にとても偏ってるので、均一的な学習ではなく、とにもかくにも強弱をつけた勉強をすべきである。とことん掘り下げて勉強しなければならない分野・単元は、時機に応じて徹底的な学習を押し進めていくこと、またその時間をかけることがポイントになる。 |