E-juku1st.Comの中学数・英問題集
  E-juku1st.Comの中学数・英問題集

 中学生の学習のしかた by Toppo
スマホトップページに戻る
中学生の学習のしかたに戻る
問題集ご利用者の声・お便り
問題集一覧 FAQ 問題集の価格 ご注文

§279 数学の応用問題の勉強のしかたについて new<「応用段階に入っての基本の応用」がポイントだね>

「数学の応用問題の勉強のしかた」についてアドバイスがほしいというメールをいただき、今回はこのことに関して書いてみたいと思います。

 ですが、この応用問題とは何を指しているのか、いつの時期で、生徒の数学の学力がどのくらいあるのか、それによってアドバイスのしかたや内容が当然変わってきます。また、そうでないと、おかしい。

 第一、ふだん定期テストで取っている数学の点数が、たとえば62点の生徒が応用問題に対して抱いているイメージや理解と、90点以上とれている生徒のそれとでは、捉え方が大きく異なっているものだからです。

 中学の1,2年の実力テストに出てくる問題、それは学習した基本の内容の集積であることが多いわけですが、それと業者がやっている学力テストの問題、そのどちらをとっても実は、まだそれほど大きな差はありません(ただし、中3の9月殻は別)。しかし、問題の作り方や出し方の基準ひとつで、これは応用問題だなと、生徒が感じてとらえてしまうことはよくあります。

 さらに3年生の後半ともなると、ひとつひとつの単元内容(とくに図形)がそれまでと較べて難しくなってきますが、それが理解でき、またできたとしても、学校で習うことの大部分はあくまで基本レベルのことであり、その裏側にある応用に関しては、ほとんどたいした説明も演習もないのがふつうです。仮に授業のなかで応用段階の問題演習がほんのすこしあって、これが応用問題かと生徒が思っても、それがそのまま、入試レベルで問われる応用とその力の形成に役立つことは、まず現実ありえません。

 また塾に通っていて、そこでいろいろな応用問題の説明を受け、それなりに学習している生徒も多いでしょう。しかし、その学習行為と本人の身についている応用への力が比例しているかどうかはこれまた別物で、安易に判断できないところがあります。

 一応公立中学生を想定して書いていますが、応用問題の勉強のしかたとなると、この場合、全体の生徒に当て嵌まる数学の勉強法なんて、厳密にいうと存在しないわけです。学年と時期、そしていままでに蓄えた本人の数学の力によって、応用問題の勉強のしかたは異なるのは当たり前であるので、その当たり前のなかでも一番大きなものといいますか、核心部分についてのみ、ここで、私見を述べておくことにします。

 今回のご質問は、中3生(とその親御様)で、数学をかなり得意としている生徒です。よって中3のこれからの時期、そして「入試へ向けた応用問題」の勉強のしかたに限定いたします。

 さて、入試へ向けた応用問題の勉強のしかたというか進め方のアドバイスには、大別すると、どうやらふたつになるかと思います。そのふたつのアドバイスの代表例(AとB)を、下にまず書いてみます。直接引用するのは憚れますので、その主張は枉げない程度にわたしが言い換えたものです。

 まず、ひとつ目。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
A. 問題に取り組むとき、どうやって解こうか、どう考えればいいのかを考える。今まで学習してきた知識と方法をいろいろ試し、時間をかけて粘り強く、自力で解くこと。わからなくてもすぐに投げ出してしまわず、解説を読み、教科書・参考書の関連する部分を調べ、自分で解く努力をする。それでもどうしてもわからない場合は先生などに質問しよう。また難しいからと簡単にあきらめて、解答をみて解き方を覚えよう、なんてことのないように。たとえ解けなくても、解く方法をいろいろ考えることが大切です。自分の頭で粘り強く考える、という習慣をつけること。

どうしても解けなければ、その問題はノートに写しておき、実力をつけてから再びトライすることです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 次、ふたつ目。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
B. 数学の応用問題を解くときは、ふつう答えを見ずに一問一問、まず自分の力で解いていくけれど、これにはたいへん時間がかかる。なぜなら一問を解くのに応用問題となると30分やそこら、長ければその後の理解、暗記まで含めると1時間以上も要することが少なくないからである。またほんとうに高い応用問題になるとわからないことの連続で、イヤになってしまう可能性も高い。

 そこで、解答を見ながら問題を解いていくのです。この方法を用いると、問題をスムーズに多量にこなすことができる。解答を見てもよくわらない場合は、その解き方を何度も丸写しする。そうやって解法パターンを覚ていく。そのパターンがわかってくると、なにをすればよいかが次第にわかってくる。

 数学は考えて解く科目のように世間一般では言われていますが、実は解法の大部分は暗記する必要があるのです。数学の応用問題をすらすら解ける人は、それ以前に同じような問題を解いたことがあるのであって、その解法パターンをしっかり覚えて自分のものにしているから、すらすら解けるのです。いくら秀才でも、まったく初めて経験するような応用問題となると、そうすらすら解ける生徒はまずいないでしょう。

 通常の勉強ならならいざ知らず、受験の時期を迎え、自分の力のまだ足りないことをじゅうぶん自覚している段階で、自分の力量を超えた問題に素手でぶつかっていくという勉強のしかたは、時間をかけた割には中身が少ないということになりかねません。解答を見ながらどんどん問題を解いて、出題パターンを覚えていけばよいのです。もちろん解法のポイント、重要な考えをよく理解して暗記することですね。自力ですらすらと解けるようになるまで、何度も同じ問題をくり返すことが、実力アップと入試レベルの応用問題を征服するコツです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 まさに正反対の勉強のしかたのアドバイスですね。

 Aは正論というか正攻法で、世のなか、この手のアドバイスをする人は非常に多い。たしかにキレイなアドバイスだが、読んだあと、おそらく9割9分の生徒が実践に移すことができない、まさに画餅のもち、机上の空論でしょう。こんな助言で、応用問題を解けるようになった生徒がいれば、教えてほしいものである。

 以前にも書いたことがあるけれど、数学の応用問題には、「基本レベルでの応用」と「応用段階に入っての基本の応用」、そして「応用レベルのなかの応用」とでもここでは呼びますが、この3つがあると分類・区別しておきたい。

「基本レベルでの応用」とは、教科書でいえばひとつの単元の最終部分に載っているような、つまり、その単元の知識全体を思考して使えば解ける問題、あるいは数値を変えたり条件をすこし変えた程度の問題である。Aのような勉強で実際に解けるのは、この部類の応用問題でまたこの段階まで、である。

 次に、「応用段階に入っての基本の応用」とは、たとえば中2で習った1次関数と図形との融合、中3で習う2次関数と図形の融合、相似と3平方の定理と立体図形or円など図形問題どおしの融合、1次関数と確率の融合、図形と規則性の問題との融合など、3年間で学習してきた学習事項全体から作り上げられた問題を指し、これは公立入試数学の応用問題の主体となるものです。

 では、中3で学習する基本と上記の「基本レベルでの応用」のふたつをこなせば、この「応用段階に入っての基本の応用」を自力ですぐに解けるようになるかといえば、そんなことはまったくない。数学の内申が5の生徒でもまずそんなことはなく、「今まで学習してきた知識と方法をいろいろ試し、時間をかけて粘り強く、自力で解くこと」ような勉強で対応できない問題が、入試問題にはさまざまにありますよ、ということです。

 これをどうすればいいか、また自分の手の内に入れるにはどのように勉強していけばいいのか、その手段と知識の獲得のしかたにこそ、入試勉強のあるべき正しい姿があるのでしょう。Aには、まったくこれがないということです。 

 3つ目の「応用レベルのなかの応用」ですが、これは学び習得している知識、つまり「基本レベルでの応用」と「応用段階に入っての基本の応用」を完璧に使いこなせて、そのなかのどれとどれを用いて解くか、この思考と作業に習熟している必要があり、そして直観力と数学的思考に秀でていることが求められます。つまり、ごくごく一部の私立超難関校に当て嵌まること(ごくほんの一部、公立入試にもありますが)ですから、ここでは対象外としておきます。

 Bは、一見とんでもない邪道のような学習法にみえますが、数学の応用問題を解き、その解法をわが力にするための真剣でかつ実践的な示唆に満ちている、とわたしは思っています。ただ、これを誤って使ってはいけないし、「基本の力」も「応用の基本の力」もまだない生徒が、真似をするのはそれこそ邪道に入ってしまうのでよしたほうがいい。 

 最後にわたしの考え。

 Bのアドバイスの8割がた同じなのですが、「解答を見ながら問題を解いていく」という勉強のしかたは、大学入試の段階ならいざ知らず、高校入試に向けた勉強ではお勧めしません。

 まず自分で、集中して解こうとする。しかし、5分集中し考えて解けないものは、いくら粘っても解けない! これをまず知るべし、です。解く道筋や攻略のひらめきがあれば別だが、なんら頭に浮かばないのならそれ以上時間をかけて粘っても意味はない。それは「基本レベルでの応用」でのみ通じるやり方である。ここを誤解している生徒が多い。

「応用段階に入っての基本の応用」では、そもそもその問題への解法パターンや解くノウハウをまだわかっていないのだし、理解も自分でできる力も身につけていないのである。潔く解く作業をやめ、解答を熟視して、その問題の解法のポイント、重要な考えをよくよく理解して、暗記することから勉強は始まる。

 次に、その類題をする。もしすらすら解ければ、ある程度ものにしたことになる。ただし、応用問題のレベルになると、類題とはいえ微妙に設問のしかたや難度が違うため、当然の如くすらすら解けない場合が出てくる。その場合にこそ、粘り強く解くのである。それでもわからなければ、解答をすぐさまみればよい。そしてやることは、理解と暗記である。まだほんとうにはわかっていないことを知った上で、解法のポイントと重要な考えを、自分の頭にひたすら叩き込むこと。

 次の類題、次の類題へと進む。まあ問題の種類やその出題頻度によるけれど、1つのタイプの問題に4,5題はするのがいいですね。そのような応用問題のタイプの種類は、4,50あるかもしれない。具体的に数えたことはないけれど、けっこうありますよ。ここで学ぶ知識や解法の攻め方は、教科書レベルでは得られるものでは決してなく、されど「応用段階に入っての基本の応用」とは、まさにこの段階の力を指しているのである。その解法パターンをしっかり覚えて自分のものにすることが、入試レベルの応用問題を征服する、まっすぐな道といえるのではないかと考えている次第。