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§262 数学の復習の実情についてnew
<中3の1学期>
ネット検索によって、わたしのHPにも多くの方が来ていただいています。そ
の比較的多いもののひとつとして、「中3数学の実力対策及び過去問」を捜し
て来られるケースがけっこう多いです。
いささか宣伝気味になり恐縮ですが“中3生対象”に企画、作成した「中学
数学/1・2年の復習問題集」という問題集にすこし絡める形で、中3生の数学の
復習の実情とその問題点について述べてみたい思います。
中3生対象の数学問題集はこれまで、「中3数学(通年用)問題集」「中3数
学実力テスト対策問題集」「<新版>公立入試数学の攻略」そして「入試図形
問題の攻略Version5」と、その使用目的と達成レベルを明確に別けて、編集・
作成してあります。これを「攻め」と「守り」の概念で色分けするなら、「攻
め」の問題集に属することになります。それに対し「中学数学/1・2年の復習
問題集」は、完全なる「守り」の問題集というわけです。
何を守るかといえば、名前が示すとおり、1,2年の数学の内容です。中1と
中2の2年間に習った基礎知識の習得と運用が身についているかどうか、その力
の確認をまずしなければなりません。もしあまりなければ、もっとしっかりと
基本の何たるかを知って、集中的にまた的を得た演習を積み、基礎をとことん
固めておかねばなりません。このレベルを追求した問題集です。
この防禦が、わたしから観れば、生徒はたまらなく弱い。防禦が甘いと、攻
めも満足にできないと思うのだが・・・。この弱い面を抱えたまま中3の勉強
を進めている生徒が、実に多くいます。
その数は半数どころではなく、程度の差は当然あるものの7,8割はいる、と
わたしは経験上認識している。しかし、目の前に展開されている中3数学に頭
も気持も向いて、それは当然な姿といえるでしょうが、防禦がどうも手薄なま
ま、因数分解や平方根といった1学期で習う計算分野に取り組んでいる。その
狭い範囲での定期テストで80何点かをとれば、数学はそこそこやれていると、
大抵の生徒は思うでしょう。
ところが、過去の学力となると、ところどころに穴をあけている。それはた
とえ小さな穴であっても、ヤッカイなものなのです。いつまで経っても塞ぐこ
とを自らの手であまりしませんから。それゆえ、確実にその穴から何点かは(ひ
どい生徒は20点以上)、以後の実力テストで目減りし続けるのがふつうです。
また、大きな穴も当然ヤッカイ。その状態では、先々の応用段階(特に図形
分野なのですが)になれば、橋渡しになる知識すら備わっていないことが多く、
まったく太刀打ちできないことは目に見えている。あるいは、基本的問題です
ら対応できる力がないまま、無策にも受験まで引きずっていきかねません。
中3初めに、1,2年の範囲の実力テスト(その多くはまだ基礎と基本レベルの
問題なんですが)がある場合が多いかと思います。その結果で、あるいは塾に
通っていればその学力テストの結果を見て、自分の現状持っている力の正体が
わかっておかねばなりません。
計算問題で相変わらずミスをしている。思考力まで行かないほんのささいな
知識を問う定番問題が忘れてできない。また図形問題やその証明が解けなかっ
たと、さらに1次関数の問題になると、習った当初はなんとかできていたのに
深く理解できていなかったのか、もうさっぱりわからなくなってしまった。な
どなど、まあそれらによる失点は、さまざまに顕れているのです。しかし、下
は平均点以下からやや上は60数点や70点台まで、その落ち込みようの正体には
一様にヒドイものがあるかと想像されます。
がっくりきて、自分のこれまで2年間の数学の力、その防禦の薄さに気づき
自信を失うのはわかるが、その気分は残念ながら大抵ほんの束の間で、そこか
らの立ち直りのなんと早いことか?!・・・。すこしシニカルに書くけれど、
へこむならもっと底の底までへこめよ、といいたくなる。なんでそう簡単に1
日や2日落ち込んだだけで、立ち直るのか?!と、逆にいいたくもなる。つまり、
そこにはほんとうの反省も切羽詰った必死な思いもまだないのである。立ち直
った手になにも掴んでいないのが、こちらからはよくみえる。
だから、「1,2年の復習をしなければ」という生徒の感想や、ネット上で散
見されるご父兄の方ちちの「1,2年の復習が課題です」なんて意見は、実際に
はその多くが、具体的行動に移ることなく有耶無耶のまま終わるだろうことは
容易に想像しうるのである。3日以内に行動を起こさないものは、脳裏から消
滅するのである。
まあ我が身に照らしてみても、そのことはよくよく自覚できているし、承知
している。それ以上に数多の生徒をみてきて、そのひどさにはうんざりするほ
ど思い知らされましたからね。自分の過去2年の数学の力の正体に気づいても、
結局なにも手を打たない。残念ながらそれが大方の、1学期の実情でしょうか。
まだ習っていない先の勉強とか応用段階に入ったややこしい問題なら、自分
の手に負えないケースがあることはわかるけれど、一度学習して、じゅうぶん
(?)勉強したはずの各単元の復習なんてものは、基本的に自分の力で適切な
問題集があればできるものである。
ところが、どうもやりませんね。まるで学校や塾など人からしてもらうのを
待っているように見えます。しかし、たいていはそのようなことを、あらたま
って1学期に時間をとってしない、またする余裕もない。それゆえ、自分でし
て当たり前なんですが、やらないから上記で書いたような問題が起こるのです。
いいや、そのようなことはありません、自分で課題と目標を決めて自主的に
やっています、という生徒やご父母の方はもちろんいます。しかし、こうした
生徒は全体のなかではほんとに少ない。あくまで今回の対象としている生徒―
―定期テストではまずまずの成績も実力テストとなると2,30点も下がる生徒、
また関数や図形(&証明問題)に弱点を抱えている生徒、あるいは平均点前後
で四苦八苦している生徒などに基準を置いてその姿を書いていますので、その
つもりでお読み願えればと思っております。
では、次の問題点。時期が来て、周りも自分もいよいよやらねばならない、
と思ったときからの復習の中身とは。
復習には、その日に学校や塾で習った内容を自宅でもう一度よく自分で理解
し、覚えるべきものは覚えるといった小さな、しかし大切な作業である復習が
あります。定期テストのために1,2ヶ月のあいだに習った範囲を総ざらいして、
すべて覚えているかどうかチェックし、抜けているところを補充しなおす復習
があります。また今回の内容のように、過去2年間学習した知識を総復習する
ものがあります。この3タイプは、質も量もともに当然違ってきます。
しかし、この違いが果たしてわかっているのかな?と思います。だってね、
2年間の内容を復習するなんて事は、ほとんどの生徒にとって、はじめての経
験であろうから。
この復習は別に難しいことでもややこしくもないんですが、しかし、いい加
減で中途半端な状態の勉強だけはしないほうがいいといっておきたい。復習し
たからといって、以前と同じところで計算間違いはするわ、たんに覚えれゃあ
済むような問題をまた忘れるわ、相変わらず証明はできないわ、相変わらず関
数問題を苦手としているわ、なんてことが、もうざらにあちこちありますから
ね。
復習して成績を上げるはずだった勉強が、終わってみればほとんど成果が得
られなかった。ってことは、よく耳にしたことがあるかと思います。が、しか
しその内実は、得られなかったというより、得るような勉強のしかたをしなか
った、というのが正しい捉え方でしょう。このことは、自分で勉強しているケ
ースにかぎらず、塾で復習の集中講義を受けているケースても、同様に起こっ
ています。
ですから、復習をしたからいいというものでは、決してありません。塾の集
中講義による復習を受けたからというそれだけの事実をとらえて、生徒も親も
とかく満足しがちであるけれども、それだけではよくありません。
たとえばですよ、計算ひとつをとっても1年から正しい計算方法を身につけ
ている生徒、またその指導を徹底して受けてきた生徒ならいいのですが、そう
でなければ、まあいろんな癖や間違った計算のしかたをしている生徒がいるわ
けです。それを復習する場合、必ず直しておかないといけないのです。
この復習段階では、もはや計算演習をたっぷりやればいいというものではな
いと思いますが、なぜ計算ミスをしたのか、どこでミスをしてしまうのか、そ
の箇所を突き止めて、次に繰り返さないよう警告マークを自分の頭に刷り込ん
だり、ミスを防御する小さな手立てを考えることが、とても大切な作業でしょ
う。いい加減な復習をする生徒は、こうしたことがまったく直せていないはず
です。ですから、次の実力テストでも相変わらず同じ間違いをすることになる。
この進歩のない復習は、無意味です。と、あえて書いておきます。
次に、中途半端な勉強だけで終わるだろうなあ・・・、と思う復習の内容。
それは、1次関数と図形の証明。断定はしませんが、8,9割までおそらく復
習しても、その勉強は不徹底なうえ中途半端な学力しかつかなったといえるの
が、この2つの中2の単元です。というのも、8,9割までの生徒(全体ではあり
ません。今回、主に対象としている生徒です)が、中3の2学期段階の実力テス
トや学力テスト、はたまた入試対策に入った時点でも明らかにデキがよくあり
ませんから。
数学という科目は、理科や社会の科目に較べ、覚えるべき量はとても少なく
すむもので、基本に関してはある意味、とても楽に復習できる教科です。
しかし、ただよく書かれている「教科書とそのワークを使って何度も復習す
ればいい」なんて聞こえのいいアドバイスは、わたしから言わせてもらえば、
生徒の現実のごく一部しか知らない戯言か虚妄に部類にすぎないと感じていま
す。また実際に束の間の成績を上げるケースはあったとしても、根底からの実
力を上げたことのない者の科白だな、とも判断しています。
できない生徒は、ただ真似はするけれども、なにがわかっていないかが自分
でわかっていないところが多分にあるわけで、また、なにを深く理解しなけれ
ばならないかも勉強するなかで追求しない傾向が強く、そしてさらに、どこが
ポイントで覚えこんでおかないといけないかもあまり自分で考えようともしま
せん。
そうした生徒は、教科書やワークの、平凡で平面的な事柄は復習して吸収し
得ても、実はそこから先にあるポイント、思考すべき箇所を掴まない勉強を見
事にやってしまうので、「1次関数や図形、図形の証明」は苦手なまま、勉強
したように見えても実は上っ面を撫ぜただけの復習に終わってしまうのです。
これで次に、テストの点数が上がると期待できますか? すべての単元を均
等に割ったような勉強、メリハリのない学習の進め方、またそのような問題集
やワークでは、決して苦手分野を克服する勉強はできない、と書いておきます。
この進歩・向上の見込めない復習は、すべきではないでしょう。
最後に、どのくらいの期間を費やせば、1,2年の全範囲の復習ができるのか
?について。
これは生徒の学力状況がまちまちなわけですから、一概に言えるものではあ
りません。
見かけの成績ではなく、ほんとうに実力のある生徒は、このような2年分の
基礎と基本の復習に回す時間があるなら、先の勉強をすればどんどんすればい
いでしょうし、あるいはあちこちに隠れている応用問題に取り組んで、さらに
実力を磨くことも大いにけっこうなことだと考えています。
しかし、そうではない生徒(85%以上かな)は、やはりきちんと復習の時間
をとって、2年間の数学の土台の力をもっと地道に固めておくべきでしょう。
当然成績の低い生徒ほど復習にかける時間が多くなくてはならないのに、逆の
現象がたびたびあることには、ほんと注意してください。1週間やそこらで安
易にできるものでは決してありません。一月くらいは最低かけないと、本物の
復習には到達しないと思います。
以上です。結果、進歩の跡が見えない復習にならないためにも、今回の内容
が少しでもその具体的方策の参考になれば、と思っております。
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<付記>
このような生徒の問題点と課題を踏まえて作ってあるのが、「中学数学/1・2年の復習問題集」です。
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