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  高校入試でターイセツなこと、って何だ?!
§221 入試数学の最終段階で生徒を観た場合<続>
<入試数学攻略の核>

 今回は入試数学をみるにおいて、トップレベル乃至それに近い生徒の力の実態と助言について書いていきます。

 受験対策の期間を3ヶ月とした場合、その前、中3の2学期の後半の11月終わりごろには、各生徒の学力の判断を下します。それは中学校の内申点の評価や志望校選定に合わせるという意味で普通なことです。が、もうひとつ、数学に関してはその能力の見究めを、最終的に判断します。

「えっ、受験対策をしてもっと実力をあげるのではないの? 能力の見究めなんて、入試の過去問を解いていかないとわからないのではないの?」と、思われる方もいるかと思います。

 それでは逆に訊きますが、数学の実力は、2年8ヶ月(中1と中2と中3の2学期後半まで)と3ヶ月の期間で較べた場合、どちらでつけるものですか? 実力といっても基本の実力と入試に出る応用の実力がありますが、応用の実力をこの短期につけられると、ほんとに思いますか? 数学以外に、英語も社会も理科も国語も勉強するのですから、実際3ヶ月を丸ごと数学に費やすわけでは毛頭ありませんね。

 ましてやこの期間、冬休み明けのテストや学年末テストはあるは、さらに私立入試はあるは、まったくばたばたと毛色の違う(?)試験も重なります。あれもこれも頭のなかだけで勝手に描く大切な勉強作業など、現実その半分も達成されないのが普通でしょう。それほど足早に過ぎる短い期間だといえます。

 応用の実力とは何か、前回VOL.2で書きました入試数学の中身・レベルを、もう一度載せてみます。
 ほんとに基礎、中学数学を3ヵ年学び「最低これだけは知っているだろうな、またできるだろうな?」という確認レベルの問題がおよそ40%、習った知識の基本運用をまず確実にすれば出来る問題が30%、そして残りの30%が応用問題といいますか、各生徒の数学の能力差を調べる問題、といっていいかも知れません。いわゆる考える問題(その中にはパターン化されていない、いや、され得ない問題も増加してきています)で、高校側が生徒の真の力をみたい、と思っている問題です。
 
 お解かりのように応用の実力とは、基本と中レベルの計70%(と、ここではします)をしっかり固めた上での、残り30%のことを指しています。さてもう一度これも書きますが、平均点は45点。公立入試数学における平均点の正体、その力の意味するところをしっかり見定めてもらいたい。はっきり書きましょうか、3年も数学に時間かけて、たったこれだけのことしかできないのか、という内容です。平均という言葉の概念に、目が雲らされているに過ぎない。

 さてそれからして70%、つまり70点の力はどういうものか? こうして書くとなにかたいそうなような点数だけど、ちっともたいしたことではない。なぜなら、習った知識の基本運用をまず確実にできる力を、普段の学習のなかでたっぷり演習し、忘れることなく身につけておけば、十分に獲得できる点数だからです。平均というイメージは、少なくともこのゾーンの真ん中あたりに置きたいのであるが、事実はそうではない。

 このゾーン、即ち50%から70%の範囲に入っている生徒も実に多いのですが、今回のテーマは、最初に設定したようにトップレベル乃至それに近い生徒の力の実態と助言なので、一点だけ受験勉強の指摘をするに留めます。それは、身の丈を超える勉強をするな、ということです。自分の実力どおりの結果を入試で発揮したいのなら、自分の手の届く範囲の問題を、過去問を解いて十二分にまず知ることです。そして70%の範囲の問題を確実に固める演習に邁進することが、なにより重要な課題です。

 さっぱりわからない応用の問題、解答をみてなんとか理解が出来る問題、そんなのはこの段階で身につくものではない。理解とできるようになることとは、まったく別物です。理解したものを明確にして、またそのポイントをしっかり掴み、実際に別問題に当て嵌め、運用できてこそ、さらに正答を得られてこそ、「できる」という実力に到達するわけで、2年8ヶ月のなかでそういう勉強の姿勢と努力を積めていない生徒には無茶なことです。

 これは現在、中1や中2の生徒、そのご父母の方にもしっかり押さえておいてもらいたい視点です。また、表面的にもわかることとして、定期テストで90点前後あるいはそれ以上取れているのに、実力テストになるといとも容易く70点台に落ちる生徒、通常の試験問題にも難しい問題がほんの少し含まれているとしたら、それがまずできていない、あともほったらかしでいる生徒の大半は、間違いなく上のゾーンに入る生徒で応用問題に対応できる能力をまったくつけていませんから、その学力判断にはよくよく注意して視てもらいたいと思います。

 さて、ここから公立トップ校を目指す生徒、ないしそれに近い生徒の力について。前回、入試の数学に対し自分の素の力が75点とすると、蓋を開けた結果は、78点、75点、70点のいずれかです、と書きました。入試対策前にもてる、この75点の力は、トップ校を目指す最低のラインといえるかと思います。

 確認レベルの基本問題40%+習った基本の知識を確実に運用すれば出来る問題30%に、高校側が生徒の真の力をみたいと思って出す、数学の能力差を調べる応用問題30%のなかの5%で、75点。こんなに計算通りに力を測れるものではもちろんありませんが、経験上誤差は極めて少ないと思っておいてください。

 この75点の力は、もう一度書きますが2年8ヶ月の期間のなかでつけたものです。厳しくいえば、応用段階(宣伝になりますが、E-juku1stの数学関係の問題集は基本から入試レベルの応用まで常に入っています)の問題を10教えた、または学習したことに対し、8ぐらいしか吸収できなかった、ともいえます。さらに本人に数学の能力があり、また「できる」という実力に到達するまで絶えず深く勉強を実践、積み上げてきた生徒は、85点や90点近くまでの力を身につけています。が、それはほんとに少ない。

 受験対策に入る。75点の生徒の力はどうか。過去問をし、いままでに教えた知識やテクニック、解法のコツや問題への攻め方、そして取り組んではいけない、つまり捨てるべき問題などを細かく指摘、またしてはならないミスを何度もくり返し注意していく。応用問題30%の中の半分は、このレベルの生徒でも十分できるのだ。ただ、あと一歩のところに躓いている、習ったさまざまな知識やテクニックが微妙なところで使いきれていないことが殆どだから。その確認指導と吸収に、全力を費やす。

 この過程で、75点の生徒は、80点や85点までは取れるようになっていく。最後の底上げだ。けれども、その応用への対応力の伸びが果たして本物であるかどうか、それは生徒次第、グレイゾーンであると思っている。勝手知った塾や家の雰囲気のなかで行うのと、入試本番の緊張感とプレッシャーに包まれた状況下とでの実力の発揮は、明らかに異なる面がある。蓋を開けた結果が、78点、75点、70点のいずれかである、とは、そういう意味です。

 つまり、全体の実力、そしてそのなかの応用に対する実力のなかで、周りのいかなる条件にも影響されない、岩のようにがんと動じない素の力が、入試数学攻略の核となる。そして核の周りに付着する力もあるわけで、その部分が、残りの少ない受験時期に行う過去問対策その他になる、とわたしは位置づけています。

 75点の生徒が83点取れることは稀であり、78点の結果なら上等であり、75点の結果ならまず満足すべきです。ただ70点になるような結果だけは避けたい。それは、ふだん決してしてないミスを入試でたまさかしているのだから。

 ご参考になる点があれば、さいわいです。