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§180 数学の応用問題について VOL.2
<自分で考えてから、他人の知恵をもらう>
当たり前のことなんだけど、急に応用問題がすらすら解けるようには、絶対になりませんね。わたしは極力「絶対に」という言葉は用いないようにしているんですが、ここでは使います。ここで使わずしてどこで使うんだと思えるくらい、このことは生徒を観ていて感じます。その反対のケースをあまりに多く知っているからか。
大多数の生徒は、中3学習がやっと済んで公立にしろ私立にしろ入試問題の過去問を解き始めて、問題形式に慣れ、またその傾向を掴むのはいいのですが、塾に行っておろうが行っていまいが関係なく、出来ない問題は、さっぱり歯が立たない事態に、まったくどう切り込んでいいかわからず、ただただいたずらに時間を費やすだけの問題にぶつかります。問題は、その程度なのですが、それはさておいて。
そこで解説を聞いてまたは解答を見て、「ああなるほど、こう解くのか」とわかり、より深く(?)理解し、納得したとしても、その「解法をほんとうに身につける」生徒は、残念ながら稀といっていい。間違っている勉強の急所はここなんだけど。 公立中学の生徒を23年ほど教えてきて、つくづく感じることです。仮に2週間後、解く考え方とポイントは同じだが、問題形式、数値、またほんの少し表現を変えた問題を出したとすれば、10人中8、9人は確実に出来ない。つまり、理解、納得、合点したように見えて、本当には自分のものにしていないということです。
これは、つけ刃の学習では入試の応用問題に太刀打ちできない、ということを示しています。そもそも普段の学習で、基本的なことしかせずまたは習わず、また仮に応用っぽい問題をそれなりにしたとしても、すぐにわからないとあきらめたり、あるいはややこしくてこれまたすぐ人の説明に頼ったり、自分の力で十二分に考えもせず適当なところで投げ出したり、また解答をすぐに見てわかった感覚で済ませている生徒にとっては、入試間際のたかだか2、3ヶ月で、応用問題を解く力を身につけることは、まずあり得ない。
その証拠に、入試数学の点数、平均点は、みんなが熱心に本腰をいれ過去問を解いて、対策なるものをあれこれしているのに、たとえば50点が60点に上昇したかといえば、そんなことにはならないでしょう? 誰もこんな当たり前のことは書かないのですが、またそれが当然なのですが、しかし、よく考えてみるとおかしなことです。知識が溜まりその力が膨らんだように見えて、結果は
いつもの如く、縮んでいるのです。応用問題に関しては(この定義や説明をまだ、具体的にはしていませんが)、その対策がほんとうに生きているのは、1割未満か・・・。
では、いつから「応用問題」に取り組んでいけばいいのだろうか?
中1の学習内容には基本的に、応用問題なんかはありません。すべて、中2・3の数学を学ぶための基礎的な土台作りです。あるのは、無理やり作っている問題、無理に難しくした問題に過ぎず、さまざまに発展する要素のある問題、入試に繋がる重要な問題はない、とわたしは考えています。それはそれで意味のあることですが、まあ、そんな暇があるのなら、小学算数の、もっと質のよい高度な図形問題でもしろよ、と思っているわけです。
ですから、中2の連立方程式の文章題あたりから、一応なるでしょうか。そこから中3の最終単元までの1年半以上の期間が、与えられてることになります。この期間の学習内容には、基本の問題の裏側に隠されている(?)応用問題があるといえます。
しかしこれも、いまの学習指導要領の内容では正確に言い当ててはいません。というのは、以前中2の最終に習った「相似」が中3の後半に移行したからです。応用というのは、ご承知かも知れませんが、たとえば中2の1次関数でも、その単元の基本的内容と知識だけで出来上がる問題というのは、一部の問題を除いて、応用的問題レベルには達しません。他の単元と融合してはじめて、つまりその後に習う図形の知識と融合してはじめて、形作られるからです。
またそうかといって、中2後半の3角形の合同証明や平行四辺形以下の四角形
の図形の性質などは、きちっと学習して理解と暗記をしておかねばなりません
が、あくまでそれはまだ基本的事項で、その単元だけでは応用に発展しません。
つまり入試問題を見た場合、いまの中2の学習内容では、ごく一部にのみしか
応用問題は存在しない、ともいえるかと思います。でも生徒の立場から観ます
と、その基本がなかなか大変なのですが。
入試問題で主体を占める応用問題なるものは、中1や中2の図形の基本を踏ま
えて、中3の「相似」と「3平方の定理」の融合した(ときに円も)平面or空間
図形の問題に、圧倒的に多く存在するんですね。次なる応用問題は2次関数ま
たは一部1次関数になります。当然これも、平行四辺形や長方形などの図形と
融合されるか、または等積変形の利用や動点問題とミックスされた形で出され
るのが普通です。この2つで、入試問題の少なくとも半分以上は占める。
それらの問題の計算で多く使うのが、中3の1学期で習う平方根・因数分解・
2次方程式になりますから、いまの教科書通りに進めば、どうしても中3の後半から、入試に繋がるほんとうの(?)応用問題が、まるで水面に浮かぶ氷のようにその水面下に大きな塊として存在することになるんですね。
もちろんこれ以外に、小さな応用問題、さまざまな単元の最後に付随する単純な応用的な問題は在ります。またここでは、公立トップ校受験までの視野で話しているのであり、全体を瞰れば、まったくそれらとは対極の位置に在るといいますか、私立高校などでそれも超難関校で中学数学の単元で括れないような問題、確率や規則性の問題で非常に高度な数学的思考力を試す問題などがあるわけですが、それらは省いて述べています。
ということは、論理は最初の、「急に応用問題がすらすら解けるように・・・。<略>大多数の生徒は、中3学習がやっと済んで公立にしろ私立にしろ入試問題の過去問を解き始めて・・・。<略>2、3ヶ月で、応用問題を解く力を身につけることは、まずあり得ない」に戻ることになるんです。困ったもんです。(ここでちょっと、宣伝。この困った状況にならないために、または半分でも防ぐために、わたしの通年用の数学問題集は構成・企画してあります。失礼しました)
このスパイラル・桎梏から抜け出るにはどうしたらよいか・・・。
これまた、宮城谷昌光氏の或る文章の一部から引いておきたい。
「成功者は、自分で考えてから、他人の知恵をもらう。それとは逆に、他人の知恵をもらってから考えるので、失敗するのである」
出来ますれば一度じっくり、自分で考えてもらいたい。そのほうが絶対にいいのです。わたしの平凡な知恵(?)なんて、役に立つことはたまにしかないだろうから。まあ、それでも次回に少し。
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