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  高校入試でターイセツなこと、って何だ?!
§318 感心しないこと
<感じとる力>

 近頃、自転車に乗りつつ携帯電話を耳にあて話している人の光景をよく目にする。同時にふたつのことを操っているのだから、器用だなと思うけれど、しかしその器用さはどうも他人には危なっかしく映る。こちらがたまたまその傍を通るときなどは、余計に神経を遣うというか、ともすると相手の足りない注意力をカバーしてあげないといけないかなといった気分にもなり、実はその器用さは、他人を軽く巻き込んで成り立っているのではないかと思うのだ。

 いい大人がこれを平気でやっているものだから、若い者も当然真似をする。電車に乗ってもバスに乗ってもいまの時代、本を片手に読んでいる姿を見かけることはめっきり減った。本屋で熱心に立ち読みしている姿を見かけても、それは文学本のコーナーではなくコミック本関係の列である。昔ならちょっと静かな雰囲気の喫茶店に入れると、必ず誰かしら本を読み耽っている光景を目にしたものだけど、いまは殆どいない。いい大人がこれを平気でやっていないのだから、若い者も当然真似をしない。

 この一例をもって、いまの日本人の教養・文化程度の落ち込みを語るつもりはまったくけれど、若い者が、特に中高生が、自転車に乗りながら携帯電話をしている、その姿には、あまり感心しないと書きたいのである。自転車に乗っているなら、自転車に乗っているときしか味わえない気分、感覚というものがあるだろう。それを大事にするというか、もっと深く味わってもらいたいのである。

 早朝の空気は、新鮮でおいしい。夕暮れの空気も、夕餉のにおいが混じっておいしい。ちょと空を見上げれば、雲がいろんな形して流れている。想像はふくらみ、思念は湧く。風を、体全体で受けとめるのも気持いい。それは時として厳しい。そのなかに含まれる、あるいは芽生えつつある季節の薫りを感じるのも愉しい。また、人を見、草花を見、木々の枝葉を見、いまならすっかり色
づいておいしそうな柿を見、曲がった標識を見、目でとらえる風景、観察する光景はいっぱいある。

 自転車に乗りながら携帯電話をしている生徒には、他人に甘えた器用さともにおそらくこれらの光景は目に映らないだろうし、自ら感じとり、まだまだゆたかにしてゆくものである五感の発達にもいい影響は及ぼさないのでは、と大袈裟ながら危惧してしまう。そこに在るのは乾いた感性と萎んだ情緒、と捉えるのはさすがに言いすぎだけど、国語力というものは、なにも読解力や表現力、論理力だけから成り立っているものではなく、それらを目にみえぬところで支えている感性や情緒、感じとる力が平行して、個人としてゆたかであらねばならないと思うのである。



 今回は、はじめて国語の問題集なるものを作り上げて、その残務処理(?)や最終の細々した作業に追われ、急遽メルマガを書きましたので、雑感というか問題集完成の余韻というか、内容も整わず、また時間もなく、たいへん短い内容になりました。どうか悪しからず。