§109 数・英問題集を使っての勉強の進め方VOL.4
<中3の場合の数学について(続)>
中1・2年の学習内容をA 、中3の学習内容をB
、入試に関する応用内容をCとします。入試問題でのその比率は前回のVOL.3で、A:B:C=3:3:4と書きました。
C の中には中1と中2の知識、関連事項も含まれており、また中3の基礎も入っているので、厳密には4すべてが応用のレベルではありません。これまでに習ったこと、中3での各単元をしっかり理解しておれば、その半分は出来る内容です。ですから学力全体を10とした場合、3+3+2=8
の学力、実力までは、努力次第で形成されるということです。
その学力全体の10とは何を基準にしているかといえば、公立入試数学の100点とこの場合、ストレートに考えていただいていいですね。では、9や10の力はどうつけるんだ?という声が聞こえてきそうですが、これはかなり難しい。どれくらい難しいんだいえば、99%難しい。わたしが過去教えた生徒数百人の中で、5,6名ぐらいがこの領域に入ったかな、という程度です(随分厳しい見方ですが)。
それは大手の塾の特進クラスに在籍していて、それも数学が得意という生徒の中でもごく僅かな率でしょう。実際、学校の数学の内申が9や10の生徒でも、上のわたしの基準である‘8’にも到達していないなあ、という生徒は思いのほか多いのが実情で、もちろん9や10のレベルを教えるわけですけど、なかなか自分のものにする生徒は少ない。しかしまあ、その中の半分でも、いや3分の1でも吸収してくれればいいね、と思ってやっていますが。ちなみに‘8’という力は、公立トップ校に受験できる最低の線は十分に有していますので。
(このゾーンの問題は、E-juku1stの中3数学問題集にも当然入っていますし、またトッポの図形特訓教室でも本格的に扱っています。ご参考に)
さて話を戻して、前回最後に書きました「大多数の生徒の現実に沿った学習の進め方、その問題点」について――
中1,2年の学習内容は前回、たいしたことはないとあえて書きましたが、生徒の視点に立つと、とてもとてもそうは言えないのですね。また、いまの勉強も大変なのです。中3の場合も1、2年同様最初は計算からで、式の展開・因数分解、平方根、2次方程式と続くわけですが、どうもね、計算する力も、観ていてたよんないですね。いま世間では学力低下を喧しくいってその対策をあれこれ盛んに論じておりますが、もう土台も土台の計算一つ、説明、解説したことをすんなりわかってくれないというか、ふむふむと飲み込んだようにみえる割には、いざするとなると、昔の生徒と較べてその計算する作業時間はじりじりかかるし、小さなひっかかりを持っている生徒がまあ多く、滑らかに授業が進むということはまずありえません。
次に復習の光景。実はこれは、あとで述べる問題のその余韻で生徒に問うたことですが、この場合先に書くとして。
<問題1>
「3角形がある。適当な3角形だ。頂点をABCとする。∠Bの2等分線と∠Cの2等分線の交点をPとする。∠Aが80度のとき、∠BPCは何度になるか?」
黒板に図を描き、質問する。
中2の図形で学習した問題。教科書、問題集、どこにも載っている基礎の範疇の定番的応用問題。解法は2通り。1つは連立方程式で解く基本のやり方、もう一つは裏公式を用いる。
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まあ一応参考に。
1.∠PBC=∠ABP=a、∠PCB=∠ACP=b、また∠BPC=Xとして、3角形の内角の
和は180°を利用して、△ABCと△PBCで連立方程式を立て解けばいい。
<答え:130度>
2.2等分線の交点で作る角つまり∠BPCは、∠Aの半分と90°を加えた角に等し い。
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正攻法の1と、それを忘れた場合を想定して簡便な出し方2の両方を教えてある。特に2は、記憶に残るように強調し、また刺激を与えて強い印象を残すように工夫して教えた。2を用いれば、暗算で瞬間に答えられる。80を2で割り、それに90を足せばいいだけだ。
しかし生徒は、誰も答えることができない。不思議だ。ほんとに、不思議だ。どうして公式を忘れるのかが、それも「便利な」公式をたやすく見事に忘れるのかが、わからない。
英語の場合も、助動詞may の2つの意味をいってみろ、といえば、
「〜してもいいですか」と、答える。
「それは、May I 〜?のときだろう? 助動詞may
の意味をいま、問うているの」
「〜してもいい。・・・」
1つしか答えられない。もう1つを、じっと考えている。
「次、○○、助動詞may の意味」
「〜してもいい、と・・・」
次々指名しても、2つの答えは返ってこない。学校での実力テストの英語の結果が91点の生徒ですら、正解をいえない(ちなみに半数以上は80点以上なのだが)。おかしい。5個の意味を問うているのではない。5個の中の3個しか覚えていないなら、わかる。たった2つだ。たった2つの、その1つしか覚えていないのは、いったいどうしたことか? どういう暗記力をしているんだ?! それも十分読み書きして、問題演習して、おまけに暗記テストもして、さらには忘れてはいけないと、ところどころでその問題も入れて復習してあるのに、この結果。「〜かもしれない(推量)」が、いえないのです。
何故なんだ、なぜ、基本ですらこうも抜けるんだ?! おかしい。ひどすぎる。それは生徒の現実に触れると、到るところに数多ころがっていますが、そしてその知識の欠落をいちいち拾っては取り繕い、拾っては補修してるのが、まあ日々の学習の実態でしょうか。
さて、もう1つの学習上の問題点。
それは前回、最後に図形の問題を出しておいたのですが、それを通してさらなる問題点を考えます。
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<問題2>
△ABC(上の頂点がA 、左回りにB 、C )で、AB
を1辺とする正3角形を、そ の外側に描き、D
とする。同様に、AC を1辺とする正3角形を描き、E
とする。
D とC, E とB を結び、DC とEB の交点をP
とする。
∠BPC は何度か、求めよ。<制限時間5分> <答え>120度
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この問題は中2学習を終えればできるわけですが、E-juku1st.Com
の問題数では中3学習と平行して、その宿題編に取り入れてある問題です(いまだけではなく、絶えず過去を振り返る。なぜなら、いまの力は実力ではないから)。
以下、解答説明は読み飛ばしてもらって結構ですが(数学から離れた方にはなんのこっちゃ?と、頭が痛い筈ですから)、一応説明しておきますね。
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<解答>
条件の正3角形の印を図形に入れる。そうすると、△ADCと△ABEが合同であ ることに気付かなければならない。AD=AB、AC=AE、また∠DAC=60°+∠BAC ∠BAE=60°+∠BACで、∠DAC=∠BAEがいえ、2辺とその間の角が相当で合同 となる。その結果、∠ACD=∠AEBであることがわかる。ここで3角形ECPに着 目し、外角定理を用いて、∠BPC=∠PEC+∠PCEである。ところで∠PEC= 60°−∠AEB
であり、また∠PCE=60°+∠ACD であるから、それを ∠BPC=∠PEC+∠PCEに代入すると、∠ACD=∠AEBであるわけだから(相殺され)、
60°+60°=120°になる、ということ。
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文章に説明すると長たらしくなりますが、図形で見ると、直観力というものもあり、もう少し簡単ではあります。まあ、偏差値的には60ぐらいに相応する問題でしょうか。たいしたことはありませんが、でも、いい問題です。問題1が中1・2年の学習内容のAに属するなら
、この問題2は入試に関する応用内容のCに属するからです。
問題1は、ああそうかと覚えればすむだけで、他につながることもなく、それ以上発展性がありませんが、問題2は、図形問題を見る目を養い、思考力と直観力を練り、またその解法のノウハウは他に活かせ、発展性を多分に含んでいるからです。問題1はなるほど中3の実力テストにはたまに出ますがそこまでの問題であり、問題2は入試には出ることはないにしても、その図形を捉えるコツ、証明の術、解法へのパターンは、非常に重要だといえるのです。それだけに是非、習得してほしいと思うわけです。
ところが、問題は教えたあと、解説し、「生徒がわかった」あとにあるんですね。つまり、まだ本当にはわかってはいないわけで、わかっていないなということが、大抵の生徒にはわかっていない。
図形問題は、特にこのレベル以上の図形は、自分で解けなければ、解けないということ(変な言いまわしだけど)。自分の力で解くことができなければ、以後も大抵の場合同じ問題ですら解くことは出来やしない。そんなものなんですよ。なぜなら、単にわかったに過ぎないからですね。そんな曖昧な感覚は、ほんのちょっと時間が経つだけで吹っ飛びますね、殆どの場合。
大体わかった? ある程度わかった? ばかな、そんなものは糞の役にも立たない。完全にわかって自分の手の内に入れたものしか、出来はしないし、他にも使えません。そもそも生徒は、大体わかったことを、家に帰ってもう一度自分の頭で考え直し、未消化の部分を納得いくまで理解し、そして本質のポイントを探り、覚え込む学習をしないでしょう。(これさえ出来れば、塾も家庭教師も必要ない。わたしもその数多くの中の一人でしたが、昔からのごく普通で基本的な勉強方法なんですけどね。)
この認識は嫌なものですが、真正面に受け取らざるを得ない。それは成績のよくない生徒にだけ当て嵌まる事実ではなく、成績がいい生徒にも共通するいまの現象ゆえ、どうも勉強の根っこのところで歯痒いものを感じますね。
説明したあと、
「じゃあ、この問題の解法のポイントは何だ? 何をおさえておかねばならないんだ? また何がわかっていなかったから、解くことが出来なかったんだ?そこが逆にポイントだろう?! 2点、この問題から学ぶことを言ってみろ?
!」
と、問うわけですが、満足な答えは10分経っても得られない。中3の授業を進めることもなく、いや進めることが出来ず、5分で済むことを結果、90分の中の60分を費やすことになる。うーっ、堪んない・・・。
さて当然、宿題の一部としてこの問題のノートまとめがあるわけです。
この作業の中にこそ、問題2の図形を生かすか殺すか、生徒の真の勉強の姿が投影されるわけです。自分のものにしたかどうか。石を磨いてもただに石に過ぎないが、中には宝石になる石もある。この問題は、宝石になる石の1つだ。
生徒のノートを観るに、誰一人、例によって磨けている者はいない。石そのままであることが、そのノートから伝わってくる。目を瞑れば、その問題と条件が浮かび、解法の要点、ポイントが脳裏に瞬時に伝わる。そうでなければ、他の同類の応用問題には活かせない。
虚しさの軽い吐息を吐きつつ、再度この問題の大切さと解法の手順、その切り口なるポイントを指摘、注意する。はて、どうなるやら・・・。教え込みすぎは、よくないよ。
長々と述べてきました。「生徒の現実に沿った学習の進め方、その問題点」について、特にその問題点のほうを例を挙げながら説明してきたわけですが、こう思うのです。
人は成功例から学ぶより、1つの失敗から学ぶほうがはるかに多い。同様に、学習法も学習の進め方も数多くあるでしょうが、1から10すべて或いはその殆どを、人の力を借りるのではなく、また頼る姿勢、気持ちを持つのではなく、自分のこととして、自分の力で、自分の中の1つのまずいやり方を改善していく、中途半端な学習の中身を埋めていく、そういう目と努力の方向性を持つことが必要で、そして行動していくのが、やはりベターだと思いますね。
「物事の本質とは、自分との切実なかかわりのなかで、みすえるものだ。火の粉を浴びない対岸の火事をみて、火の本質をつかみようがないではないか」
<
宮城谷昌光著『管仲』の一節より >
数学において、中3生にとって切実なかかわりとは、上述しましたが3つあるでしょう? A(中1・2年の学習内容):B(中3の学習内容):C(入試に関する応用内容)=3:3:4と、わたしは長年の経験から勝手に規定していますが、B
に関して、内申面においても中3学習のいまとこれからの内容をしっかり学んでいくことがまず第一としても、自分とのかかわりでみすえるなら、大多数の生徒にとってAは、対岸の火事ではなくまさに自分の身に降り懸かっている火の粉なのですから、夏休みの終わりまでには出来るだけ少なくしておきたいものですね。またB
も、学校の授業内容とスピードに任せていると、とてもC
には突入出来ませんから、遅くとも年内一杯に終えることが望まれます(こんなことは当たり前で、誰でもが知っているとは思いますが、念のため)。
さてC は、はっきりいって、力のある生徒のみ、或いは既述したように「自分の力で、自分の中の1つのまずいやり方を改善していく、中途半端な学習の中身を埋めていく、そういう目と努力の方向性を持ち行動していける生徒」のみに通ずる領域でしょう。そしてその学習の時期は、B
が終わった年内か年明けからではなく、既にもうとっくに始まっているということですね。
以下、少し宣伝になりますので、ご必要のない方はここまで。
ふー、お疲れ様でした。中1,2生のお母様方にとっても何かしら参考になることがあれば、さいわいです。
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さて上記の勉強には問題集が必要なのですが、E-juku1st.Com
の「中3数学」に対する問題集と対策の在りかた、その構成内容を少し説明します。A(中1・2年の学習内容):B(中3の学習内容):C(入試に関する応用内容) 用意しているのは3つです。
・「中3数学問題集(通年用)」:B を中心として、A
もC もどしどし取り入 れてある。つまり、いまの力を作り、過去の実力を補強し、未来の応用力に備えるオール・イン・ワンの問題集。
URL: http://www.e-juku1st.com/indexcontents1.htm.htm
・「中3数学実力対策問題集」:A とB の力をつける。学校の実力テスト対策 にバッチリ照準を合わすも、同時にこれは、集中して復習を行なえる便利な問題集。
URL: http://www.e-juku1st.com/referencebooks/mathjituryoku2.htm
・「トッポの図形特訓教室」:C のゾーンの問題を徹底的に訓練し、そのノウハウを出来るだけ吸収する学習。公立トップ校を目指すのはもちろん、それと同程度の私立高校にも十二分に対応する図形能力の開発を目指す。
URL: http://www.e-juku1st.com/basetoppo/geoindex.htm
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