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§411メディア・リテラシーについて
<問題集の選び方のポイント?>
メディア・リテラシーという言葉があります。すでにご存じの方もいらっしゃるでしょうが、ウィキペディアの説明をそのまま引くと、「情報メディアを主体的に読み解いて必要な情報を引き出し、その真偽を見抜き、活用する能力のこと」という意味になります。簡単にいえば、情報を評価・識別する能力。
メディアとは、マスメディアの新聞、テレビ、ラジオ、そしてインターネット、また多くの書籍類や雑誌等の出版物、広告、公的機関の発表などが該当し、口頭やブログなどのクチコミや各種の芸術なども含めてしまうケースもあるそうです。
このなかの大型メディアである新聞、テレビ、インターネット。その信頼度はやはり、新聞を信頼している人がもっとも多く、次にテレビ、そしてインターネットの順になります。「とても信頼している」と「少し信頼している」とは、本来きっぱり区別したいとわたしなどは思うのですが、それをくっつけた統計で書きますと、新聞は89%ほど、テレビは74%ほど、そしてインターネットは64%ほどになるそうです。
わたしなどは昔からへそがかなり曲がっておりますもので、また年をとるにつれますますこの「信頼する」って言葉から距離を置く醒めた意識がつよくなってきているもので、こういう種類のメディアの統計上の質問にはまったく関心がありません。
でもまあ、ネット上の情報にここでは限定しますが、「とても信頼している」と「少し信頼している」の合計が3分の2、残りの3分の1は「信頼していない」という割合は、メディアを読み解いて必要な情報を引き出し、さらにその真偽を見抜いて活用する能力であるメディア・リテラシーをみんなけっこう持っていることを表しているようで、なにやらすこし安心させられるところを感じています。
さてそれでも、わたしなんかもそうですが人は誰しも無警戒に、またあまり頭が働かず気を抜いた状態だったりすると、そしてこちらのほうが圧倒的に多いでしょうが、あまりよく知らない分野にもなると、新聞、テレビ、インターネットといったマスメディアからの情報を、自分でよく考えもせずついついそのまま受け入れたり、鵜呑みにすることがあります。
ネット上の学習情報も同様です。あきらかに間違っているなと思える情報もよく目にしますし、現実にはどうしても実践できそうにない勉強のしかた、これをやれば短期間で偏差値が20も上がるなど甘言にみちた学習法など、玉石混交の石でしかない情報も多数混じっています。
そういう事例ではなく今回言及したいのは、ごくふつうの、また常識的かつ良心的と思える情報(ここではとくに学習法)のなかにも、いやちょっと待て、必ずしもそうとは言えないこともあるよ、というものを一例を引いて、考えておいてみたいと思うのです。
つまり「情報メディアを主体的に読み解いて必要な情報を引き出し、その真偽を見抜き、活用する能力」であるメディア・リテラシーの、情報の引き出す際のその選別と活用に、ちょっと用心が要るのではなかろうか、と。
たとえば、勉強するのにどのような問題集を選んでやればいいのか、といった理由でネットで検索しますと、問題集の選び方のコツやポイントが記されたページが数多出てくるかと思います。その中のひとつ。
そのままではいけませんので、主張の骨子は曲げずしかし言葉や表現は変えます。また中学生に限定して。
「中学生なら書店で中身を見て、自分のレベルにあった使いやすい問題集を選ぶというのが、まず正攻法です。 しかし、問題集の使いやすさなど書店で30分や1時間見たところで判断できません。実際に買って、それを何ヶ月か使ってみてはじめて、この問題集は自分にとって使いやすいとか、いい問題がたくさん載っているとか、また逆に、難しすぎると感じたり、簡単すぎて物足りないとかの感想が出てくるものです。
そこで5教科の各問題集の選び方のポイントとお薦め問題集を提案してみます。」
一読だけするなら、言葉の使い方や言い回しがかなり自信のある断定口調で、説得力ある説明のように聞こえます。まだ問題集を自分で選んで買う習慣がないあるいは自信のない生徒や、問題集の多さにどれを選んで買えばいいのかに迷う生徒(いや、実際にはその親御が買うケースが半数以上でしょうが)にとっては、なるほどこのとおりと共感することも多いでしょうか。
しかしこの説明は、正攻法を指し示しながらその大事な点や良さにはまったく触れておらず、そのデメリットというか問題点だけを採り上げて、それだけを一般化しています。論が半分です。たしかに現実の生徒の多くはこのとおりなんですが、失敗から学ぶことはほんとに多くありますし、また大切です。問題集の選び方も失敗の経験を通して徐々に上手くなっていくものであり、この辺の言及がないのが、すこし残念に思います。
次に、5科目の問題集の選び方について、そのポイントが書かれていましたが、逐一批判を加えていくことが目的ではまったくなくメディア・リテラシーの観点ではどうかということをみたいので、英語だけ触ってみます。
問題集はいろいろな種類を買ってはいけません。一冊をきっちりやり通しましょう。と書かれていますが、英語では。
「1.教科書によっ文法の順番や単語などが異なるので、教科書準拠のもの。
2.準拠でも問題の英文が教科書本文とまったく同じではなく、適当に変更
してあり、また教科書の要点が書かれているほうが使いやすい。」
これにはまったく同感です。ただし、ここに書いてあることに関してだけは。
中1、中2、中3と通常の英語の勉強は、まずは教科書の内容をきっちり理解し、理解するだけでなく文法も単語もその他の語彙もすべて暗記し、そして先生の授業で説明していることを集中して聞く姿勢をもっておくことが、まず第一でしょう。そのためには、教科書準拠の問題集を利用して勉強するのは、ひとつの定番的な勉強法といえます。
しかし、これは必要条件だけれど、十分条件とはいえません。このことだけは、はっきり申せます。そのわけはていねいに書くと原稿用紙10枚以上になりますので、また過去に英語に関する記述であちこちと厖大に述べていますのでここでは省かせていただきますが、手短にいえば、この勉強法だけに終始すると「実力のつき方が結果的に足りない」ことになるからです。
わたしの20数年の経験則でいえば、こうです。
塾を始めて数年は教科書重視型の指導を、準拠型の問題集を利用して演習するのはもちろん、ノートに教科書の本文を書き写し、その訳から単語の練習のしかた、音読のくり返し、それらの確認テストや再テストなど基本ですべきことは徹底してやりましたが、定期テストではできるも、実力テストや学力評価テストになると、定期テストの点数となかなか結びつかなかったり、思うほど反映されていない結果が出ました。
そこでがらっと180度転換、実力養成重視型の指導に切り替えました。教材は準拠型問題集はいっさいやめ、わたしの手作りのプリント(これがのちに、何度も修正や改良を加え、いまの英語通年用問題集になっています)に転換しました。その内容や途中の実力の定着程度などを書くといささか宣伝臭くなるので省くとして、結果だけ記しますと、実力テストや学力テスト、そして入試に向けた学力に、かなり結びつくようになりました。
また数々のメールをいただくなか、英語に関する内容でも、親の目からいってもまじめに授業を受け、教科書や出されたプリント類の勉強をし、定期のテストでも90何点かをとっているのに、わたしのメルマガのテストなどをやってみると75点にも届かないとか、あるいは購入した問題集で勉強していくと、驚くほど基本がまだわかっていなかったり身についていなかったことに気づいたとか、教科書中心の勉強だけでは実力にどうも限界を感じるとか、ほかにもまたさまざまな感想や意見があるのですが総じて、日頃評価、判断しているほど実力が本人にはまだ備わっていない、という声をそれこそ多数いただいているのが現状です。
あと簡単に書きますが昨今の英語の中学教科書自体の内容と構成バランス、この影響もすくなくないかもしれません。
以上こうして瞰ると、上記の英語の問題集の選び方のポイントなるものは、全体をみる視野に立っての内容とは言い難い面があります。
どの情報を評価するか、識別するか、また信頼して活用するか、みなさまのメディア・リテラシーの万のなかのひとつに、今回の内容がなればさいわいです。
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