大学合格体験記を読んでVOL.5 <数学に苦労して>
一見大学入試へ向かう高校生の勉強の姿が、中学生の勉強にいったいどう関
係するんだ、次元が違う話ではないか、とお考えのご父母の方も多いかと思い
ます。たしかに、そうであります。
今回のVOL.5でひとまず最終になりますが、ただ、高校生が扱う専門的な問
題集の話題や授業の形態、学習進度諸々の体験内容は基本的に全部省きました。
あくまで勉強にまつわる本質、勉強に取り組む姿、勉強以前の問題点で、中学
生でも変わらず注意しておきたい点、またより突っ込んで今後磨いていきたい
ところなど、そのヒントになる箇所を過去4回、多く採り上げてみたつもりです。
このVOL.5では、定まったテーマはありません。体験記を読んでまだ伝えて
おきたい点、示唆に富むきらっと光る箇所、高校入試でも関連していて気をつ
けておきたいあるいは役に立つ視点など、すこし列挙してみたいと思います。
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1.つぎに、これは僕が問題集や過去問などを解いているときに意識していたこ
とですが、「この問題から何を学べるのか」を自分なりに考えていました。な
ぜそんなことをわざわざ言うかというと、過去問で出た問題は高確率で入試本
番には出ないからです。数学だったら「問題文のこの言葉があるからこういう
式の立て方をする」など、問題の答えが出たらいいんじゃなくて、答えに至る
過程を問題文のどの要素から引っ張ってこれるのかを考えることが非常に重要
です。 <大阪大学 基礎工学部>
なぜ答えの思考法になるのか分かるように考えることを重視しました。
<奈良県立医科大学 医学部>
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中学生にとって最終段階の高校入試の数学問題、その中で非常に大きな比重
を占める図形応用問題に対する勉強方法。その核心部分の勉強のしかたが上の
ふたつに書かれています。
できればお子様自身がこのぶんを何度も何度も読んで、この意味するところ
を理解してみてください。入試の図形問題を解いていて、上記の意味が納得で
き、はたと実感できる生徒はそう多くはありません。2,3%未満でしょう。
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2.数学の演習は学校と塾の教材を使いながら難しめの問題をコンスタンに取り
組み、あとは一橋の過去問をひたすら解きまくりました。はじめは時間を計ら
ずにじっくり考え、後半は解答用紙を使いながらテスト形式でやるとよいです。
<一橋大学 法学部>
それから理系科目についてはテスト演習を積むようにしたほうが良いと思い
ます。<中略> またどうしても数学で差をつけたい人は、入試標準レベルの
パターン問題、つまり北大や神大レベルの問題を見た瞬間に方針が経つ程度に
は習得している必要があります。 <京都大学 医学部>
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数学と理科は上記の生徒が指摘してるように、相当な演習を積むことが重要
です。特に入試段階の問題では。
でも一般に、ほとんどの生徒は入試演習が足りていません。足りていないま
ま、あるいは入試問題の表面をなぞっただけでそのまま入試に突入してしまい
ます。そのことは、高校入試の平均点に如実に表れている。どちらも大抵35点
から45点のあいだでしょう。この点数の意味することは、基礎問題だけしか点
数がとれていないのです。あれだけ入試対策の勉強をやり、応用問題を解いて
きたはずなのに、その結果が反映されていない。
それは、「はじめは時間を計らずにじっくり考え、後半は解答用紙を使いな
がらテスト形式でやる」勉強方法をどうもやっていないことと、その演習量も
まだまだ足りていないからです。そして付け加えるなら、数学の場合、上記1
の勉強のしかたがとれていないことです。
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3.11月後半くらいからセンター試験の過去問を解きまくっていました。ですが、
国語と社会だけは夏期講習からセンター試験対策講座をとっていました。周り
の子からは「夏にセンターとか笑い」みたいな扱いを受けましたが、基礎を夏
で一回学べば、直前期の勉強が頭に入りやすくなるかと思っています。実際セ
ンター本番で地理は97点を取れたのも、夏期講習や普段の授業で一度基礎を頭
に入れていた結果だと思っています。 <東北大学 医学部>
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国語は別として、社会と理科の教科は、積み重ねの知識ではなく横に並んだ
多単元の知識獲得の教科ですから、基礎でも忘れる確率が極めて高く、くり返
しの復習での知識習得は欠かせません。
この生徒は夏期講習とふだんの授業でしっかり基礎を頭に入れたその結果、
センター本番の地理で97点もとれたわけですが、中学生も社会と理科の2教科
は、ふだんのそれも豊富な演習のなかでしっかり頭に基礎を叩き込む勉強を積
むことがまず第一。
そしてくり返しの復習による知識の補強と強化が、ほんとうの実力に繋がる
ことをぜひ確認しておきたいと思います。定期テストの点数など実力評価とな
ると多くの生徒の場合、なんら信用できるものではないことを書いておきます。
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4.本来は定期テストさえしっかり勉強していて私のようにさぼらなければ、勉
強以外に注力しても基礎は身につくはずです。わたしの場合は数学が嫌いで、
後回しにしてしまいました。特に国公立はどの教科もある程度まで出来ること
が求められるので嫌いでもやっておくべきです。当時、その他の教科は比較的
出来るのでそれらで数学をカバーしようと考えていました。
得意科目がある人は陥りやすい思考ですが、この考え方は危険です。実際、
現役時は得意科目が差をつけるほどの出来ではなく落ちてしまいました。
<一橋大学 商学部>
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「定期テストさえしっかり勉強していていれば、基礎は身につくはずです。」
と、この生徒がいうのは当然かもしれませんが、それはこの生徒が基本的にき
わめて頭がいいからで、決して一般的に通じる話ではありませんね。
それより、納得してしまうのは、得意科目がある人は陥りやすい思考、つま
り数学を他の教科でカバーしようという考え方が危険である、という指摘です。
もちろん中学生の場合は、不得意科目をその他の科目でカバーする、このこ
とが通用することが多いのですが、レベルが上がれば上がるほど、つまり公立
トップ校受験などになると、得意科目で差をつけることは現実かなり難しいの、
であって、キライな科目、不得意な科目をできるだけ作らないこと、そして徐
々に徐々に実力を上げていく努力を続けていくことが肝要かと思います。
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5.数学は、一応得意科目でした。高3になるまでは。昔は何もしなくても点数
はとれていたので勉強しませんでした。調子に乗っていますね。馬鹿でしたほ
んとに。そのツケが高3になって回ってきたんですね。
高3の1学期、突然問題が解けなくなりました。何カ月たっても解けるように
なりません。夏休みは勉強時間の半分を数学に費やしました。さすがに少しは
解けるようになっただろうと臨んだ夏終わりの京大模試で0完。絶望。勉強や
めようかなって思いました。キツかったですね。2学期に入っても相変わらず
解けないままでしたが、そんなある日の数学の授業を境に、途端に解けるよう
になりました。不思議なこともあるもんです。いい経験でした。あきらめなか
ったらどうにかなると学びました。陳腐ですが大事なことですね。
<京都大学 工学部>
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ほんとにこういう生徒もいるんですね、愕きです。中学の3カ年と高校2年ま
で、ほとんど何もしなくてもいい点数がとれていたんですから、数学について
は、人並外れて才能があったというか、ほんとに得意科目だったんでしょう。
高3の1学期、突然問題が解けなくなった、そして何カ月たっても解けるよう
にならなかった、その後夏休みの半分を数学に費やしても京大模試で0完に終
わった。この原因は何なのか?
この生徒にとっては、いま目の前にあり新しく教わる基本的知識とその問題、
そしてその応用に関する問題も極めてスムーズに理解ができ、また解くことが
出来たのであろう。ふつう習っている途中でややこしいとか難しいとか、ある
いはどこから手をつけて考えればいいのかまったく解法が浮かばないなど、そ
うした感覚が数学の場合起こってくる場面があるものだが、この生徒は中学で
はなく、高校に入っても1,2年のあいだも閃きや直感で処理でき、無かったの
かもしれない。
これはこれでスゴイことなのだが、しかしいま目の前にない、習った範囲の
知識の総合及びその解法ポイントの集約という意味では、蓄積が本人の自覚と
は裏腹にできていなかったのではないだろうか? それを取り戻すというか、
新たに構築するために高3の1学期、夏休みの半分、そして2学期のある日の授
業までかかったように推察する。だからこの期間は決して無駄ではなく、いや
逆に非常に重要な勉強をしたことになるだろう。
学習してきた数学の知識の体系化を自分で行い、そのいずれを抽出して問題
に使うか、その土台を再構築したからこそまた応用へのひらめきと直感力が戻
ったきたのではなかろうか、そう考える。
たまたまなんですが採り上げたのが、なんだか数学の話題ばかりになってし
まいました。それだけみんな数学には手を焼き苦労している証拠なんでしょう
が、逆にいえば、英語や国語(漢文・古文を含め)、社会などには確かな学力
を築き備えていっているとも言えます(理科は微妙なところがあります)。
以上、です。
こういうのは、どこか一か所心に引っかかるというか、印象に残ってくれれ
ばいいんですね。そこだけを参考にする、あるいは勉強のなかにすこし採り入
れてみるようにしてもらえば、それでじゅうぶんかと思っています。
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