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§283 たまにはドラッカーで
<よい習慣を身につけなければならない>

 ドラッカー名言録のなかより、すこし叙述を拝借。

 ドラッカーは「効率性を考える場合」、3つの大きな領域がある、ということを強調している。
 第1の領域は、人間の時間に関する点である。一貫した観察を行い、時間を最高度に貢献させるためには正しく使用することが重要だ。これにはどうして、「優先順位(プライオリティ)」の決定を含む。優先順位の決定を正しくくだすまでは、われわれは単に「優れたプランを抱えている」にすぎない、とドラッカーはいう。
 第2の領域は、貢献に対する責任や、経営に関する適切な知識、訓練、教育を自ら引き受けることだとする。すなわち、現代の企業においては、「現代の組織」という恐ろしいほど複雑な制度や構造を築いて発展させることが必要なので、どうしてもそれに対する主要なアプローチと訓練の方法を心得ていなければならないというのである。
 第3の領域は、ドラッカーが口を酸っぱくして説いていることなのだが、自らの「強み」について絶えず意識的に探求し、そして、その強みをベースにした仕事を築き上げるという点である。
 これら3つの重要な領域は、一見難しいようであるが、誰もが努力によって実行することが可能だとドラッカーは言う。そして、それが可能な経営者以上に優れた効率を上げる組織といったものは存在しないと続ける。どんなに多くの従業員がいようとも、会社の業績は、最終的には経営者のクオリティに左右される。経営者は企業が効率的であるための「機関」であり、アイデアと知識と仕事とを業績に変換させていく存在なのである。
 こうした経営者の仕事は、よく世間で言われているような、他の人々を管理することからスタートするものではなく、自分自身を管理する仕事から始まるのだと、ドラッカーは力説している。
 真の「自己管理」ができなければ、何事も達成することは不可能であるが、効率的な経営者になるのは、決して不可能なことではない。しかしドラッカーは、効率のよい経営者になることは、正直に言って、すべてが大変な難事であるとしている。そのためには、どうしても積極的によい習慣を身に付けなければならないし、それを繰り返し行うことによってこそ、文字通り、習慣が「第2
の天性」となるとする。


 これを読まれたご父母の方にとっては、頭の痛い内容であるかと推います。なんのこっちゃ、ようわからん、と理解に苦しむかもしれないし、また、わかったようなわからぬような曖昧なものだけが頭のなかにぼんやり点滅している方もおられるかもしれません。

 専門家に一部の企業経営者とサラリーマン、そして現役の経済学部の大学生(まじめに勉強している一部だろうけれど)なら、頭のなかに自然と染み込むものが、そして正しくスムーズに理解しえるものがあるかと想われますが、普通の場合、この内容を理解する動機も目的もなく、テストに出るからと無理やり勉強する必要もなく、ましてや知的好奇心なんかまったく湧く対象(?)でもないでしょうから、ほとんどの方はよく思考せず、難しいというかややこしいというか、そんな印象であっさり片付けるかと想われます(わたしももちろん、そのひとりですが)。

 ところが、これを別の視座で捉えると、この種のまさに感情や感覚そのものが、たとえば生徒が算数や数学の文章題を読んで解こうとするときに起こっているとするならば、それは英語でも理科でも社会でもいいわけですが(おいおい、問題を摩り替えるな、となりますがそれはさておき)、どうやら生徒の問題点が見えてくるといいますか、解決策のひとつが、はっきり意識できるよう
に思えてくるのではないでしょうか?

 それは、本気になる、そしてわかるまで何度も繰り返して読むことである、という、なんでもない基本かと思います。これは、読解のテクニックやコツなんていったものではなく、学習におけるもっとも基本の動作であり、できうる限り小学生のときに身につけておくべき、習慣に属するものであろう。一度読んでわからなければ二度読めばいい。二度読んでわからなければ三度読めばい
い。三度でわからなければさらに読めばいい。他人に聞くのは最後でいい。二度目は一度目よりすこしわかるだろう。三度目は二度目よりさらにわかることが増えてくるはずです。四度目はさらに深く、気づかぬこともまた見えてくるでしょう。

 テストのときはこんな悠長なことはできないが、ふだんの学習のなかでは、ややこしいことに出遭えばこうするのが基本なのである。それを積み重ねていくと、やがて習慣になる。習慣には、よぶんな動作や思考は少ない。四度かかるのものは三度で済み、三度かかるものは二度で済むようになる。二度かかるものは、ときに一度で済むのである。これを、ほんとうの要領という。

 いまは文字通り塾など、他人から便利で都合のよい勉強上の要領を教えられ、すこし頭がいい生徒とならそれをうまく吸収して、成績もいいだろうが、果たして自分ひとりで勉強していかねばならないときや環境が来ると、さらにいえば、将来、自分で物を創り出さねばならないときが来ると、他人から便利で都合のよい要領をもらうなんてことはまず考えられもせず、ほんとうの要領とはなにか?!を、自分で苦労して獲得した要領だけが最終自分を活かすことを、幼いときから学んでいってほしいと願う。

 ドラッカーも最後に、言っているではないか。
「効率のよい経営者になることは、正直に言って、すべてが大変な難事であるとしている。そのためには、どうしても積極的によい習慣を身に付けなければならないし、それを繰り返し行うことによってこそ、文字通り、習慣が「第2の天性」となるとする。」

 場面は違うが、勉強の環境においても同じであろう。「どうしても積極的によい習慣を身に付けなければならない」「それを繰り返し行うことによってこそ、習慣が第2の天性となる」

 ‘どうしても’‘積極的に’‘よい習慣’を身につけなければならない。それを‘繰り返し行うこと’によってこそ、習慣が第2の天性となる。

 ところが大抵の生徒は、一度読んでわからなければ、そこでいともたやすくあきらめる。二度目を読もうとしない。一度目でわからなければ二度目を読めと教えると、一度目と同じ調子で読むものだから、読む深さも幅もさして変化はなく、つまり、言われたからただ読むにすぎず、わからないことが狭まらないまま、ただわからない状態のなかに沈む(この状態から脱却させるには、大変な労力と時間がかかる)。つまり「習慣」には到底至っていないのだ。

 ○○の学習法とか、効率的に勉強を進める方法とか、やる気の出る方法とか、そんなことを外に求めるまえに、まず自らのうちに、勉強に関する‘よい習慣’があるかどうかを問うべきであろう。例えばということで、次の3つを挙げてみた。

・宿題はその日のうちにかたづける。
・毎日決まった時間に、自分の勉強机のまえに座る。自分で決めた日々の勉強
 のノルマと決めた時間をこなし、理由の如何に関わらずただ黙々と辛抱して
 継続する。
・やる気とか意欲とかその時々の自分の気分を持ち込まないようにする。

 さて、どうなんだろうか・・・。



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