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§135 入試前、あれこれ・・・
<入試前夜と当日>
今回の内容はあたらしいものではなく、毎年配信しているものです。時期が時期だけに、受験生とそのご父母の方に、入試直前、その前夜と当日の心構えといいますか、気持ちの持ち様について、すこし書いておきたく思います。
といっても、一般的なことを長々細々書いても新鮮なことはまったくないし、面白くもなんともありません。要はここまで来れば(入試日直前ですよ)、当日の体力と気力の勝負、知力なんていまさらなんとも仕様がない。肚を据えて、俎板の上の鯉、なんともでもしてくれ、という開き直りの性根と、それとは相反する細心の注意力のふたつで臨むことでしょう。
ここでは常識の嘘、一般感覚の弊害、良かれと思うものが却って足を引っ張りはしなかという問題点と症状について、わたしなりの意見を書いておきます。生徒の性格や気質、また学力状況によって個々に微妙に違うだろうし、こうすべきだ、こうやるのが普通だ、とは必ずしもいえないわけで、あくまで数ある指南(?)のひとつとして。
まず、試験前夜の状況。
「今日は早くもう寝なさい。やることをやったんだから、ぐっすり寝て、明日に備えたら?・・・」という、助言。
これは多いですね。わたしの場合、生徒にはこういっておりました。「いつもどおりなあ。はよ寝ようとしたら、かえって寝つかれないだろう?! あくまで普段と同じように、勉強はまあして、頭も身体もちょっと疲れたところで寝るほうがいいなあ」
夜遅くまで勉強するのは、2,3週間前にはやめるのは当然として、それでも直前にまた、いつもと違ったことをするのは、身体も頭も慣れていないリズムを要求することになり、眠ろうしてもなかなか寝苦しく、遅くまで目が覚めてしまう、逆に睡眠不足の結果になることは多いですね。これはよくありません。体調を整えることはもちろん、「睡眠」はしっかりとっておきたい。
次に、前夜の勉強のしかた。
まあ何をやっても、浮ついていて、殆ど頭には入らないだろう。それでいいんだ、と思う。どの科目を勉強しようが、どういった内容をしようが、それは本人次第。あくまで気持ちの整理のためのひとつの便法に過ぎないともいえる。本人の持てる実力、獲得した力は、すでに勝負はついている。当日にそれをどれだけ出せるかにかかっているんだから。
ただし一点、「数学だけは勉強しろ」と生徒には言っている。数学の頭を休めないためだ。無論それは、大部分気休めであることが多いのだけど、当日における数学のテストへの血の巡りを少しでもよくするための儀式(?)にはなる。すこし積極的にいえば、頭のなかの数学の思考回路を、もう一度最後に点検する意味合いがある、ともいえる。
新しい問題を解けというのではない。へたに応用のレベルの高い問題をすれば、できなくて混乱し気落ちするのが関の山だ。そうではなく、いままでに解いた問題、特に図形問題の数問を、再度軽く復習することを勧める。解法の流れとポイントをチェックし、また時間配分などを体内時計で確認するためだ。とにかく数学は、他の科目と異なり、時間的にあまるということはないのだから。
さて、当日の朝。
余計なひと言はいわぬがいい。せいぜい挨拶程度の、「頑張って」かな。事細かに、「ミスには注意して」とか「時間一杯、頑張るのよ」とか「いよいよねっ!」とか、「緊張しないようにね」とか、その意いとは裏腹の、生徒にはかえってプレッシャーがかかりがちな言葉はできるだけ避けたい。あまり励まし過ぎてもよくはない、また神経を遣いすぎる言葉も必要はない。
あくまで自然に、と言いたいが、しかしその自然を装うのが、とても難しいのが入試です。どうしても緊張する。緊張するのが自然で、正常な感覚なんだから、それを無理に静めよう、抑えようとしなくてもいいんじゃないか、とも思う。テストに入ってしまえば、そして問題に集中すれば、そんなのは大抵吹っ飛んでしまうんだから。
最後に、テストに臨んで。
自分の力を100%出そうなんて、考えないほうがいいね。考えてもそうはいかないのが入試でしょう。その気持ちが焦りをうむ原因になるものなあ。90%の力が出れば、まずは自分の受験する高校に合格するでしょう。肩の力を10%ほどでいいから抜くように意識することを勧めます。
だいたいが過去問をすれば、自分が100点満点でどのくらい取れるかがわかるもので、たとえば、点数の取れにくい数学で書くけれど、それが70点ぐらいとしたら(まあ、いいほうかな)、実際は90%の、つまり×0.9
の63点が妥当なところ。そう、思っておいたほうがいい。今年は例年と違って難しいなあ、と感じているのが生徒の常で、実はそんなに変わりがないものだ。
なぜそういうことになるかといえば、ひとつに、過去問を解いている場所は塾か家なんかでしょう? 周りの環境と緊張の度合いがまるっきり違うんだね。これを考慮に入れていないことが、また指摘していないことが、あまりに多いのではないか。
大事なことは、躓いてしまった、失敗してしまったと勘違いしないこと、そしてその気持ちをあとのテスト科目にまで引き摺らないことです。躓いたのではなくて、入試のなかではもともとそういう力だったのです。ですからその場合には気落ちなんかしている場合ではなく、また「あらかじめ、そんなものかとわかっておいて(ここが今回の、一番のポイントかな?!)」、入試に臨んでもらいたいと思うんですね。そうすれば逆に、気持ちの余裕と軽い悟りに近い精神状態で、思わぬ結果(?)、自分の力の100%近くが出ることもあるんじゃないですか?・・・。
入試(公立一般入試について書いています)は、云わずとしれた5教科です。その中で1科目や2科目は、どうしても自分の思うところの平生の点数は出せないものです。それは、公立トップ校を目指している受験生もまったく同様ですから念のため。全体の総合力での勝負であることを、とくと肝に銘じて。
そしてまた、1つや2つの痛い失敗は誰しもつきもので、しかしそれに気を取られすぎたり、また自分以外の周りの生徒の挙動や様子、雰囲気、溜息などに惑わされたりしてはいけませんね。あくまで自分との戦いです。ここを間違えないこと。他人との勝負かみたいに外に神経を遣っても、なんの価値もありませんね。
最後にもう一度繰り返しますが、100%の力を出そう、また出さねばならないとあまりに堅く考えないで、これまで培ってきた自分の力の90%ぐらいは、少なくとも発揮してみたい、と思うぐらいでちょうどよいのではないでしょうか。これはなにも気を緩めることを勧めているではありません。細心の注意を払って真剣に取り組むのはもちろんのことです。が、車を真っ直ぐ走らせるためにはハンドルに遊びがなくてはなりません。それと、同じです。
それでは皆さん、すこし早いですが、ご健闘を!
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