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§205 小6生の算数の力をみる VOL.2
<ステップ2までの力がほしい>
前回の算数の問題です。
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【算数の力をみるテスト〜小6生対象】<制限時間:12分>
1.「42.195kmを2時間20分39秒で走るマラソンランナーは、100mを何秒で走りますか。」
2.「( )%の食塩水では、食塩の重さが水の重さの3/17(17分の3)です。
( )に入る数値を求めよ。」
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上記の問題を、生徒の力の実情とその問題点を絡ませて解説してみます。
まず1番。
<解答>
42.19km=42195m ←<4:下の説明4番のこと。>
2時間20分39秒
=3600×2+60×20+39
=7200+1200+39
=8439(秒) ←<3:同3番>
42195÷8439=5(m/秒) ←<2>
100÷5=20(秒 ←<2>
A.20秒
〔解説と問題点〕
1.細かい数値が問題条件だけに、目をとおしただけで考えることをやめてしまう生徒がいます。
2.速さと時間と距離の関係が、日常の中で具体的に掴めていない、いちいち学校で習った距離と速さ・時間の幼い相関図を描きそれに当てはめないと、どういう関係かピンとこないといったなんともスローな解き方をする生徒がいます。
3.1時間は60分であることは知っていても、2時間20分39秒を秒の単位に直せない、つまり1時間は3600秒じゃあないかという、ごく簡単な記憶もしてない生徒が多い。
4.1km=1000mは知っていても、42.195km=42195mの転換にまごつく生徒がいます。余談ですが、1リットル=1000立方センチ=1000ミリリットルの単位転換(これも基本中の基本)ができない生徒は、驚くことに3分の1近くはいます。
5.この問題は前半の条件からまず速さ、それも秒速を求めること、そして次に後半の100mの距離をその秒速で割れば時間(秒速で割るんだから何秒の時間である)が求まる、という2つの考えで処理できますね。2つの式が最低要るわけですが、正確には、料理の材料を予め切って準備しておくように、単位転換の式が最初にもう2つ要るわけです。
しかし、ふだん教科書や授業でやっている問題はふつう1つの考えで解けるか、または簡単な式2本で処理できる内容が殆どであろう。そんな問題をたとえ50問解いたとしても思考力はまったく育たない。まるでそれは、公園の安全な砂場で遊んでいるようなものである。近くの竹藪を探索してこそ新しい発見をしたり、ときに迷路に嵌ったり、ちょっとした危険を察知する能力を身につけたり、またそこから抜け出す術を自得するのだろう。
これは中学生でもなんら変わりない。単純なワンパターンの文章題はできても、ちょっと条件が複雑、あるいは複雑そうにみえる問題になると、もう見事にパタッと解けなくなる。道が真っ直ぐで、対象が見えているなら解ける。それが上記の問題のように、真っ直ぐな道の3番目の信号を右に折れ、一つの目の交差点の角にあるコンビニが対象となると、もうお手上げなのだ。ここからは対象物が陰に隠れて見えないから。
ほんとうの応用問題、思考力を要する問題というものは、上の道の喩えでいえば、そのコンビニの位置からもう一度曲がったところにあるか、あるいは手を翳してじっと見詰めたその遠く先に見えているだろう。よってそこに到達する力を持つには、少なくとも二つの考え――まずこれがわかれば、次にそれを用いて答を求めることができる、といったレベルの問題に、あるいは3本か4本以上の式を伴う問題に慣れ親しんで訓練を積み、らくらく解けるようにしておかねばならないだろう。
私はこの段階までを基礎、または応用をこなすための基礎と捉えています。これをいま、ステップ2とします。ステップ1は学校で習っている基礎、ステップ3は応用問題です、いろいろなレベルがありますが、いまは粗く括ります。
6.これは1番と関連しますが、この種の問題に対する知恵があるか?ということ。知恵とは少しおおげさですが、ある程度相手の事情を知っておくと、それなりの構えといいますか予測がつけられ、余裕を持って解くことができる。
計算にしろ、文章題にしろ、図形問題にしろ、問題条件が複雑そうに見える問題は、却ってやさしいことが多く、その反対に図形問題などは特にそうですが、シンプルな問題、条件が少ない問題ほど難しいことがままあります。そういうことは応用的な問題をさまざま解かねばわからないことですね。
この問題も、速さを出すには42.195kmの距離を2時間20分39秒の時間で割らねばならないわけですが、数字が複雑なだけになおさら割り切れることを想定して計算をすることが大事ですね。結果はすんなり5と出ます。もしも割り切れなければ、逆にそれまでの計算を見直す。間違っても小数点以下の計算を進めてはならない。
あとこの問題からちょっと覚えておきたいのは、現実の数値であるということ。2時間20分39秒というのは女子マラソンのかなり速い所要時間ですね。よくテレビのマラソン中継で耳にするのは5kmごとの走破タイムですが、16分何秒とか解説しているけれど、秒速に関しては殆ど聞いたことがありません。単位が小さすぎて比較がしづらいからでしょうが、ちょうど16分40秒なら秒速に直すとまさに5m/秒なんですね。まあ、こんなことはどこでどう役立つかわからないけれど、生きた知識として覚えておいても損はない。
さて先に2番。問題はこうです。「( )%の食塩水では、食塩の重さが水の重さの3/17(17分の3)です。( )に入る数値を求めよ。」
<解答>
食塩の重さはが水の重さの3/17ということは、水の重さがが基準になってお
り、その大きさは1である。←<4>
(あるいは3/17を比の値ととらえれば、すぐに食塩:水=3:17が出ますが。)
食塩:水=3/17:1
=3/17:17/17
=3:17
このまま食塩を3とすると、 ←<1:下の説明1番のこと。>
水は17で、 ←<1>
食塩水は3+17=20である。 ←<1>
よって、3/20×100=15(%) ←<3> A.15%
〔解説と問題点〕
1.この問題は見かけ以上に奥が深い。問題を解くテクニックとして、高校入試にもよく使う考え、それも特に図形問題の応用で使うのですが、その重要な考え、解き方を、算数の段階でも実は応用問題をすればの話しですが、まさに使うわけで、また習っているのです。
中3の後半、受験間際になって入試図形の応用を解く際に、この問題はこう考えて解くんだと説明されて学ぶのとでは、その力の差異は明らかにわかるかと思います。
2.次に、基本。食塩水の濃度自体がどんなものか、その公式もイメージもわかっていない生徒が多い。習ってもその場だけでほんとうには理解していないか、または忘れてしまっている。忘れるような複雑なものではないと思うが、どうにもこの辺の基礎が情けないほど弱いのが、現実の生徒でしょう。繰り返し、補強すべし!です。
これも1番の速さと同様、中1の方程式の文章題で(さらに中2の連立方程式でも)食塩問題というのは、重要でかつ定番問題として出題されますが、濃度の意味がわかっていないのでそこから、つまりまったく一から教え直しです。
食塩水の濃度(%)とは? (食塩量/水+食塩量)×100
この質問に対して口ですばやく(5秒以内に)答えられるか?
3.よって、食塩問題とはどう攻めるのか、何を求めることがポイントなのかもわかっていないわけですから、上記の式の意味も理解できないことになります。
ポイントは食塩水の絵を描いて、食塩量を求めることを考えればよい。
食塩量とは? 食塩水×濃度(ただし濃度は、分数表現(100分の○)or少数表現で)
4.もう一つの基本。比較量(較べる量)=基準量(もとにする量・1とする量・全体となる量)×割合、で基準量が文章からつかめない、判断できない生徒が半数以上はいる。習った当初はなんとかできている。割合のテストも90点以上、ああ、しかし、3ヶ月も経つと、ほんとうにはわかっていなかった、身についていなかった、そんな生徒はごろごろいる。
小学校の文章題で、もっと学習しておくべき内容は多々ある。しかし、学校では無理なところもあり、多くは望まない。ただし、ぎりぎりの最低、そのなかでせめてひとつ「割合に関する問題」だけは基礎的なことを完全に、ほぼ皆の生徒が完璧に理解と問題が解ける力だけはきちっと養成してもらいたい。教える限り、そのくらいの責任と力はあるだろうと思うんだけど、結果はいやは
や恐れ入るばかりで・・・。
さてこの文章題の場合、既に解答の説明はしていますが、改めて問います。
「( )%の食塩水では、食塩の重さが水の重さの3/17(17分の3)です。」
の、基準量(もとにする量・1とする量・全体となる量)は何ですか?
この2番の問題では3つの基礎的知識の指摘と、1つの応用を解くためのノウハウを説明しました。また戻って1番では、6つの指摘をしました。こうして文章で書きますとなにやら難しく感じるかもしれませんが、殆ど基本の、なんでもない、普通にできてほしい学習知識に過ぎません。
ステップ1の学校で習っている個々の基礎知識がしっかり身についているかどうか、そしてそれらが寄り集まったときの問題がステップ2の基礎とするなら、そこまでの力を磨いているか?ということ、その具体的な指摘と問題点を述べました。
以上の内容が、いまと今後の勉強を進める上で、何らかの形でよき影響が出ればさいわいです。
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●ご参考まで、わたしの作った問題集でお勧めしたいのは、
・「力のある算数」 小5&小6生用
・「算数の図形教室<B>」 小6生用
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