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  高校入試でターイセツなこと、って何だ?!
§119 塾の功罪についての一視点
<高校入試以後の学力の伸長>

 塾に行くべきなのかな、行かないでもいいのかな、そのあたり少し、今回考えてみたい。

 私のメルマガの対象は、公立中学生とご父兄のかた、またその関係者を中心としたものであります。小学校お受験を考えてる人や有名私立中学を目指して猛勉強してる生徒、ご父兄の方は、「まあ、なんてのんびりしたことを!!」と、驚かれるテーマですね。(でもそのような方は、恐らくお読み頂いていないか?・・)

 それにしても時折、Yahoo!掲示板のホーム>教育> 学習指導 を覗いてみると、私立中学受験を目指してる親御さんの、熱き想い、真剣な情報交換、貴重な体験談なんかが書かれていて、参考になったりならなかったり(いや、殆どならないが)。塾をやってる私なども、「ふーむ・・・」と、ため息が出るような
猛烈な実態が生々しく述べられていたり、「そこまでやらねばならないのかね・・・」と唸ったり、いろいろ世の中、方向性、次元の違う考えがあるものだ、と冷めて観たり、退いて考えたりもします。が、ためになるというか感動する内容に出遭ったことは不思議にないなあ。

 さて、塾に行くべきなのか、行かないでもいいのか、という論題は、既に通塾している人にとっては余計なお世話(It's none of your business.)だし、「あなたのお子さんはこのままでは、公立高校で行くところがありませんよ」なんて、学校の先生に懇談会なんかで言われたら、そんな暢気なことは言っておれないわけで、その意図するところ状況は、各自、千差万別。

 そんな中で、通塾されてる方もこれから塾を考える方も、塾なんて行かないでもいいわよと考えてる方も、何か共通する話題は何か、参考になることはないか、と考えますに、「塾の功罪」というテーマがあるのですね。功罪といえば、なにか肩に力が入る感じで重々しいけど、「功罪なかばす(特によいとも
悪いともいえない)」の軽い感じで、ある局面について考えることにする。

 それは、高校入試までとそれ以後の学力の伸長についてです。 取り敢えずどこか公立の高校に入ってくれば、という考えで、塾に行ってその目的を達した生徒も、一般にたくさんいますね。わが塾でもいます。別に大学に行く事が目標でもないし、大きな課題でもない、高校生活をエンジョイしつつ自分の進むべき道を決めていったらいい(これも余計なお世話)。

 そうではなく、大学に行くことを一つの目標とし、私立高校もここではちょっと措いておいて、それなりの実績のある公立高校に進学することを目指してる生徒について、以下少し述べたい。

 本来、私なんかの専門とするところは、中学生対象の受験進学指導で、高校へ無事入学してしまうとそれで終わりなわけで(以前、高校の英語だけを、専門に指導したことが数年ありましたが)、各生徒への感慨はいろいろあるもののすっきりお役目終了、その後の勉強は本人次第だな、と思ってるわけです。

 ですから、高校での学業とその後の成績に関しては触れる必要もないし、責任もないわけですが、その後の高校でのテストの成績や大学への進学状況を、本人や父兄の方から時折小耳に挟むに、順調に行ってる生徒もいますが、あまり芳しい答えが返って来ない生徒も、それはそれは悲しいかな結構いるわけです。まあ、当然といえば当然の帰結かもしれない。何故かといえば、高校の勉強は、ほんものでなければならないからですね。これはどこの塾へ行こうが、恐らく同じ結果だと推います。

 ご存知のように、有名私立中学や国立中学と較べて、一般の公立中学は、その授業内容と進度が真ん中以下の生徒に照準をあてて行なわれてるわけですね。もう少し具体的に言えば、数・英ばかりでなく、国・理・社についても基本の学習をゆっくり、浅く(深いところまでしない、という意味です)です。これ
でもついて来れない生徒は現在相当いますし、定期テストではまあまあの点を取っても、実力テストになると本当の力が備わっていないためにヒドイ点数になる生徒もかなりでてくるわけで、こういうのは通例としても、概ねその勉強環境は、あまりにゆったりしたリズムに支配されてるといわねばなりません。

 それに反し、有名私立中学や国立中学で学ぶ生徒は、その中でも格差が次第につくものの、それでもある一定の勉学に対する知的学力レベルと心構えを持ってるわけで、その5教科の学習内容は中学の時点でも質、量はかなりなもので、且つ学習スピードは速く、深いものです。そのようなことは、高校入試問題を見れば直ぐわかることですが。 

 自ずとそこには、中学の定期テストでも仮に習う単元が同じとしても、内容的に質的出題レベルが違うのは当然です。例えば、中2で習う数学の連立方程式がテスト範囲だとすると(この設定も実はおかしい。何故ならスピードが違うから。そんなの私立によっては中1で済ましてるかも知れないし、また出題
範囲も他の単元と一緒の構成、量的にも多いかも知れないからです。まあ今は無理やり同じだとして)、公立の中学で数学の点をいつも90点以上取ってる優秀な生徒がその私立の問題をすると、果たして何点取れるのだろうか? 60点かな、いえいえ40点以下かも知れませんね。

 これは数学にとどまらず他の4教科にもいえることで、確かに学校の定期テストで、5科目総合450点以上取れる生徒は優秀だなあと思うんですけど(すみません、今回はレベルの高い見方になりまして)、そしてまた、かなりしっかり勉強をしないと取れる点でもないことは重々承知してるのですが、一歩視野を大きく観ると、また実力レベルで俯瞰すると、決して安閑とはしてられないのも事実なんです。

 じゃあ、どうすればいいんだ? 高いレベルの問題に積極的にチャレンジしてどんどん先の勉強もすればいいのか、とは言うつもりはありません。それは現実味の薄い論理で、また容易には出来ないでしょう。むしろ、基本に徹すべきだと思います。その基本を完全に習得すべきです。そしてそこから届く応用問題、思考力を要する問題、表現力を伴う問題を進んで取り入れ、訓練することが肝要ではないか、と考えています。

 ところがここに、塾の功罪についての一つの問題点があるのです。私の塾指導22年あまりの感覚で言えば、中学生の場合、その生徒の持てる力に対し、実力で30%ほど上げられる、と思ってます(学校の定期テストに対してではありません、そんなものは容易です)。これを具体的に高校入学で置き換えると、語弊があるかもしれませんが、下のレベルでは公立高校が無理な生徒を何とか公立校高へ行かせることであり、平均的(?)な生徒をワンランク上の人気のある高校へ合格させることであり、そこそこの学力の生徒を準トップ高や更にその地区のトップ高に進学させることに相当するかと思います。

 その過程の細々した有り余る問題点は今回省きますが、要は、学習の基本を完全に習得すべきです。そしてそこから届く応用問題・・・云々に、とてつもない基本の繰り返し、労力、神経、時間、テクニックが費やされてるか、なんです。これは仕事ですから当然なんですが、問題は生徒本人の学力です。確か
に学力、実力は伸びます。それは本人の努力と修練の賜物です。

 しかしちょっと厳しい言い方ですが、その学力(中3の最終時点)が「自立学習」の成果ではないということ、教えられ過ぎた結果であるということ、この点に気付いてる生徒、父兄の方は意外に少ない。人にたよって得られた知識は本物ではない。応用し、活用することができて、初めて知識となるのでしょう。学力も同様です。これが塾の功罪の罪のほう、といえないことはない。

 高校に入れば、実は公立中学で習った学習内容が氷山の一角――中学の学習量が見えてる氷山、高校の学習量が見えていない水面下の氷山――であることに気付くわけですが(気付かないまま過ごす生徒も多いね)、特に公立上位高に進んだ生徒(orこれから目指す生徒)に言いたいことですが、有名私立の中高一貫教育で揉まれた生徒の学力は、とっくに1年先を歩いてるということです。

 慌てることはないわけですが、識っておくことも必要ではないかと思います。何故ならそれらの生徒達と大学入試でぶつかるわけですからね。それが難関の私立大、国立大になればなるほど。

 もう一度言いますが、高校の勉強は本物でなければ通じない。人に頼れるところは5%にも満たないのではなかろうか?・・・。ちょっとわからないからといってよく考えもせずに人に聞いたりする姿勢ではとてもやっていけません。また塾、予備校に行っても、プラスαを求めるなら少しはわかるが、マイナスを埋めることはほんとに難しいと思います。あくまで、本人次第になるわけです。

 高校以後の学力伸長を期するなら、中学時代にもし塾に行って学んだとして、そのいいところを今度は「自分で具現化すること」であり、よくないところは切り捨てることでしょう(抽象的な表現ですが、自分で考えて下さい)。また現在中学生で(殆どがそうだと思いますが)公立の上位高・トップ高を目指し
てるなら、塾で学ぶ際、学ばされ過ぎないように(変な表現ですが)、そして、学習内容をすばやく吸収するのはもちろんですが、そのものとすぐ周りにある事象にいつも目を向けて、自分流に絶えず工夫して取り組むこと、自分流を確立することが大事だ思います。