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§56 全国高校入試問題集【数学】から見えること<改訂>
<偏りを知る>
これは数学のある高校入試問題集の目次です。そこから見える問題、ポイントについて検討してみる。2007年の全国公立高校で出題された問題から構成されており、2008年入試に向けた受験対策問題集です(1年前の資料になりますが)。(
)内は、ページ数を表しています。
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1.正負の数(2) 13.平面図形(3)
2.式の計算(3) 14.空間図形(2)
3.1次方程式(2) 15.三角形・四角形の性質(3)
4.連立方程式(3) 16.円周角(2)
5.関数と比例・1次関数(5) 17.図形の相似(4)
6.確率(3) 18.三平方の定理と平面図形(3)
7.多項式の展開・因数分解(2) 19.三平方の定理と円(3)
8.平方根(2) 20.三平方の定理と空間図形(4)
9.2次方程式(2) 21.図形の総合(6)
10.2次関数(5) 22.数量と図形の総合(3)
11.整数・数学的な考え方(4)
12.数量の総合(5)
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どうでしょうか? 一見してすぐわかることは、左側の1
〜12が計算と関数問題が中心、右側の13 〜24が図形問題ですね。ページ数で比較してみても、左38ページ、右33ページと、およそ半分が図形問題で占めていることがわかります。実際の数学入試問題の大問数でみても4、5問が主流ですが、仮に4問としますと、そのうち2問が図形問題が占めてるのがごく普通です。つまり、上の入試問題の構成バランス・量は、現実の入試の比重に即していて的を得た構成になっています。中1から中3の教科書で習う項目と、ガラッと様相が変わってしまうことにも気づくでしょう。
このおおまかな見方だけでも、「図形が大切!」ということは誰の目から見ても明らかです。次に、もう少し細かくみていきますと、左側の計算関連で、5.「関数と比例・1次関数(5)」と9.「2次関数(5)」
のページ数が多いことに気づきます。つまり、図形の次に必ず出題されるのは、「関数問題」ということです。4問としますと、これで3問が決まったことになります。図形2問に関数1問ですね。
じゃあ、残りは何? 中学3年間で実にその半数以上の時間を費やしてきた(?)「計算分野」です。正負の数から文字式、1次方程式、式の計算、連立方程式、2次方程式、因数分解、平方根、また確率などの小問から構成される、大問1の問題に当てはまりますね。これがまあ、入試問題の構成の基本骨子です。(ただし問題数が7,8問や10問以上になる県もなかにありますが、その内容を割り振ると、上記の比重とそれほど大差はないでしょう。)
では、文章題はどうなってるの? 中1の方程式、中2の連立方程式、中3の2次方程式の文章題は?・・・。 たまに、出ますね。あるいは生徒にとってはわけのわからないパターン化しにくい「新傾向の問題」が。学校ではもちろん系統立てて教えませんし、生徒にとって馴染み薄い、苦手な領域です。数学思考を試すとかの理由で、この「規則性を見つける創作問題」が出題される率は高い。上の項目でいえば、11.整数・数学的な考え方(4)
と数量の総合(3) が該当します。この問題バランスに、今後もあまり変化はないと推います。
以上、入試から観た数学の出題傾向ですが、その内容は「図形」が主役、そして「関数」と「新学力観の問題」が準主役で、これで70%前後が構成されるということになります。あとはすこし乱暴な言い方ですが、カテゴリーで括るとたくさんある計算関係の問題、文章題までが、その他の脇役になるといえばよいでしょうか。
ところで生徒は、数学の何が苦手なのでしょうか? それはいわずと知れた、図形であり、その証明問題であり、また関数でしょう。いえ、まだありました、通常では今までに接したことがない数学思考を試す問題が。
一般によく耳にする言葉――計算は得意なんだけども、文章題になるとどうも今ひとつよくわからないようで・・・―― これは小学生のお母さんに多い科白ですが、中学になると、もっと問題は広く深くなりますね。確かに文章題も大切なんですが、それの3倍も5倍も重要な内容である、数多くの生徒が手を拱いてどう扱えばいいのか弱り、解法に悩み、はたまたじゅうぶんに呑み込んで理解していないものだから時間の経過とともに忘れてしまう単元があります。「図形」と「関数」ですね。そして「その応用問題」です。
この両者の思惑が見事に外れる(?)ところが、入試数学なんですね。ですから、少々受験勉強し数学の応用問題を解いたからといって、その実自分でよくわかんないものだから教えてもらったり解法を見て納得したとしても、その学習の浅さと量では根本的に本人の力にはまだまだなっていないことが多く、せいぜい100点満点の半分、50点取れるかどうかでしょう。
平均的な話ですが、入試100点で考えますと、年度による難易度の変化はあるにしても、数学の場合、まあ受験生の平均点は40点から45点ぐらいでしょう。これは、どこが取れたかといいますと、問1の計算問題中心の問題25点と、問2から問4(5)の大問の中の、最初の1番の、問題をよく読めば誰でも解けるやさしい部分の点数の寄せ集めで、合計すると40点ぐらいにはなるのです。
3年間勉強してきて、塾にも通い、あるいはケースによって家庭教師にもつき、もちろん自分の力のみで努力して勉強してきた生徒もいますが、その結果が、計算分野と各応用問題(図形・関数・新傾向)の入り口の問題だけしかできないというのは、あまりにもひどいといいますか情けないような気がします。
さて、もう一つ。最初に書きました目次を分析しますと、次のような結果になります。別の角度、学年別で出題範囲をみますと、 中1―8ページ、中2―25ページ、中3―38ページ
(計71ページ) 項目が中1、2(3)にまたがったりするものもなかにあるのですが、それはこちらで分別、判断しました。
どうでしょうか? 見事な偏りがありますね。中1の範囲はたった8ページ、中2でようやく25ページ、併せても33ページで、中3の38ページにも届きません。でも、これが正常な入試分析、入試に対応した問題内容だと、わたしは判断します。わたし自身、入試数学を20数年解いてきて感じる感覚とその配分が、みごと一致するからです。つまり、ポイントは中3にある、ということです。もう少しつけ足しますと、中2の後半から中3にあるということです。
一般に流布してる考え方といいますか、受験関係の書物によく書いてあることですが、入試問題は中1と中2の範囲から70%出題される、だから学校で習った基本事項の復習をしっかりすれば、そして中3学習を押さえていけば、じゅうぶんに対応できる、と。
これはまったくナンセンスきわまりない、誤った情報でしょう。そんななま易しいことで受験対策ができるのなら、みんな60点や70数点くらいは取りますよ。そして平常点が90点以上ある生徒なら、入試では70何点かをふつうに取れてもおかしくはないでしょう。しかし現実は、上に記した通りです。クラスで1,2番といいますか、かなり数学の力がある生徒でさえ、入試点で80点を超えるのが非常に困難なのが、現実の入試数学の実相です。
話を戻します。今回は入試数学の問題分析を試みてみましたが、意識的にその対策、じゃあどうすりゃあいいの?という部分については殆ど触れておりません。それは今まで別のところで詳しく書いているつもりです。よって、問題提起といいますか、中学の数学とその成績に対する捉え方について、下記のサジェスチョンズを書かせていただいておきます。
・学校の定期テストの点数は一つの目安だけど、それを実力と認識するのは早計にすぎる。実力テストですら数学の場合、中3の前半まではあくまで参考にすぎない。理由は、基礎問題でしか構成されてないからです。
・中1数学はまったくの基本で、まだまだ土台にすぎない。中2数学も然り。こ
の認識で入試数学に備えねば。
・中2数学の1次関数の「応用」からが、ほんとうの受験数学に繋がっていく。
・中2の図形をしっかり踏まえ活用できて、いかに中3数学の図形の応用がこな
せるよう勉強を結びつけていくか、それが大きな大きな課題。
・入試は図形・関数・新学力観の問題に偏ってる(?)ので、均一的な学習で
はなく、とにもかくにも強弱をつけた勉強をすべきである。とことん掘り下
げて勉強しなければならないところは時機に応じて、徹底的な学習をいかに
進めていくか、それが課題である。
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