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  高校入試でターイセツなこと、って何だ?!
§34 夏休みをどう使うか?! VOL.3 new
<中1・2生の場合>

 「夏休みをどう使うか?!」について今回、中1、2年生についてすこし述
べさせていただきます。

 結論的なことを先に書けば、こうしなければ、ああしなければといった、差
し迫った指摘や差出がましい意見は特にないのです。中3の夏休みほんとに大
変なので、中1、2の時はのんびりすれば、と思っている気持ちのほうが大きい
です。また、目標がじゅうぶん定まっていない生徒やあるいは自分の実力をま
だ正確に掴んでいない生徒に対して、「今までに習ったところのきっちり復習
しなさい」「応用問題を解いて、更に力を磨いたら」と抽象的なことをいって
も、まあ殆ど聞く耳をもたない、また聞いても実行に移す可能性が薄いだろう、
という現実認識がこちらにはあります。

 しかし反面、中1、2の現時点で、目先の成績と実力とは違う!ことをはっき
り識っておられ、かつ冷静に顧みられて、習ったところでの復習(数・英中心、
なかには理・社にも)を行い、2学期以降に備える生徒や親御様も少ないですが
当然います。

 まあ、中1、2生にとっての夏休みというものは、自由闊達に平常の学習から
離れたところで、各々の経験と世界を拡げていくいい機会なのでありましょう。
でもそれでは、これを書いている意味が無いというか、特徴のない平凡な教育
的談話に堕する惧れがありますので、ひとつだけ日頃感じてること、夏にこれ
だけはしておけば、というものを書いてみることにします。

 それは、読書と雑学です。読書の重要性は言うまでもないでしょう。「国語
について思うこと」のところで詳しく述べてますので、今回は雑学の面で以下
述べたいと思います。

 雑学とは、いわゆる無象の雑多な知識であります。それには少し専門的で深
い知識もあれば、勉強とはまったく関係なく個人的なことに関わるものもある
でしょう。また平凡だけど勉強とかかわる知識も、なかにさまざまあるでしょ
う。知識といえばなにか大袈裟ですけど、要するに、「こんなこと人から教わ
らずとも、知ってるよ」というものが、今の生徒にはなぜか驚くほど少ないと
いう気がします。

 逆にいえば、「中学生にもなって、何でこんなこと知らないの?・・・」と
いうことが、最近どんどん増えています。これは塾だけの立場から見ただけで
なく、公立中学の先生の感慨でもありましょうし、高校の先生の立場からいえ
ば、「何で中学校で、こんな初歩的な因数分解を教えていないんだ?」ともな
りましょう。大学の先生から見れば、「今の学生は論理的な文章が書けん、漢
字も満足にその使い方を知らない」ともなります。

 この原因を遡ると、つまるところ小学校になるわけです。ここでは何もそれ
に言及したいと思いませんので、あくまで生徒本人の問題に焦点をあてて考え
てみたい。 
 
 勉強の上で「知る」ということは、大別するに、先生から教えられて「知る」
ことと、自分勝手に「知る」ことのふたつがあります。前者は、例えば因数分
解のしかたなどは先生から教わらなければ大半の生徒は自分の力だけではわか
らないわけです。しかし、後者の「知る」は、生活のいたる所が勉強の場であ
り、それこそ挙げればきりがありませんが、本、参考書、図鑑、新聞、テレビ、
雑誌、そしてインターネット等は言うまでもなく、親、兄弟、友人など人から、
また自然から、さまざま知っていくわけでしょう。

(ところで本当に「知る」ということは、いま目の前にあるものを見て、その
ものの先のかたち、未来のかたちまでを見ることができる力、のことをいいま
す。そこまで追求して初めて、「知る」に至る。これは余談です。)

 この後者の「知る」、「こんなこと教わらずとも知ってるよ」という雑多な
知識を、生徒自身が各々の方法で、中1,2の夏休みを通して習得、広く浅くて
もいいから涵養、膨らましてほしいと思うのです。

 問題点の具体例をひとつ書いてみます。それは中3の社会の授業のなかの一
コマでした。中1の地理の復習をプリントをほぼ終え、暗記し直し、テストで
繰り返しました。次に、問題集を使い、要点を確認し、具体的な問題の答え合
わせの段階です。

《問題》
 地図中に●で示した地域では、さばく化が進んでいる。その原因の1つに雨
が降らないことがあげられるが、それ以外の原因を「家畜」と「燃料」の2つ
の言葉を使って説明せよ。<公立入試問題より>
 
<この問題は、アフリカの地図が書いてあり、サハラ砂漠の南を大陸の東西に
またがり、灰色で塗り潰されている。国名でいえば、マリ、ニジェール、チャ
ド、スーダン、等>

【解説】サハラ砂漠の南側に広がる半乾燥地域はサヘルと呼ばれ、砂漠化が深
刻な問題になっている。これは中1の地理で習う基礎事項です。また、上の問
題は定期テスト、学力テスト、入試等で出題されるが、しかしいまではいささ
か古くさい部類に入る問題です。ちなみに今の主流は、SDGsとかダイバーシテ
ィとか、メディアリテラシーなんかの説明を求めるものが増えてきてますが

 こういう記述式問題は新学力観ということで、公立高入試に占める割合が高
く、いまや3割前後になるのかな、当然配点も高いわけです。これを避けて通
ると満足な点は得られません。しかし現実の生徒はこの種の問題形式がとても
嫌いらしく、それに応じて苦手ときている。ここでも読書嫌いな影響は深刻で
す。

 こちらにしてみれば、「これぐらいの簡単な文章は書けよ。字数制限はない
ものの、たかだか30字〜50字ぐらいじゃないか、それもこの問題はご丁寧に語
句まで指定してくれてる」と思うのだけど、生徒の多くはそうでもないらしい。
だから懇懇とその重要性を教え、表現訓練を無理やり(この無理は、教える側
からいってもとてもしんどいものです。学習した時にふつうに自然に吸収して
おいてくれればいいのだが、このふつうの自然が、どうも生徒にはあまりない
のである。それゆえ中3にもなってまたまた指導するのだけど、まあしかし、
これを徹底して全員に行き渡らせるのには、なんと半年もかかるでしょうか。

 愚痴はこれまでにして、ここからが問題点なのですが、約半数の生徒が無記
入なので(つまり、まだ半年も経っていない途中の時期)、その生徒達に厳し
く注意をする。書いた生徒の解答を読ませると、次の如く。

生徒A:「森林を伐採して燃料としたり、家畜のえさとしたため」
私  :「あのなあ、何で家畜が森林をえさにするんだ? この文では、そ
  ういう意味になるぞ」
生徒A:「・・・」
私  :「ここはアフリカだ、サハラ砂漠の南、乾燥地帯。まあ、ステップや
サバナ地帯、草や木々が生えてるぐらいで、ロシアやカナダのタイガ
ではない、なんでばかばか森林があるんだ?・・」
私  :「また、家畜って何? 具体的に何? 生徒B、言ってみなさい」
生徒B:「家畜とは、・・・」
私  :「生徒C」 
生徒C:「牛、豚・・・」
私  :「生徒D」
生徒D:「牛、羊、山羊・・・」
私  :「まあ、そういところかな。ここはアフリカのサヘルだよ。何で豚が
     いるんだよ(いるにはいるだろうが)! 草原と荒地と砂漠。遊牧。
     想像するのは、羊、らくだ、山羊、牛だろう、家畜ってのは!・・」

    「彼らの財産である家畜を増やすということは、また生きていくため、
     家畜を増やすってことは、それだけ草を食うわけだろう? 草を食い
     尽くすと、その土地は痩せて、荒地になり、やがて砂漠化するのでは
     ないか?」

 答え<例>:
 「家畜の数を増やしたため、乏しい草を食べ尽くしたり、燃料として樹木の
  伐採をしすぎたから」 

 これは教育というものではなく、もろに詰め込みであります。1分で通り過
ぎるところを黒板に書いたり、家畜の正体をつかんだり、あまりに唖然として
言葉を失ったりで、ここで20分もかかってしまった。言っておきますが、これ
は中3の授業。中1の地理の復習をやり、中2の歴史を学び直し、中3の公民も学
習し、そして入試勉強もやらねばならない。それも塾なら週1回で。とても悠
長に、生徒の表現力や考えを膨らせ引き出す時間なんてありませんよ。

 そもそも上の問題なんて中1の授業内容で、1年間学校でじっくりゆっくり時
間をかけたなかで、勉強しておくべきものです。知識を蓄える土壌そのものが、
どうも痩せている。これは社会に留まらず、理科にも、また国語にもいえるこ
とです。どうかこのあたりの雑学を、中1、2年の夏休みには盛んに行って、勉
強する土台の基礎知識の充実に努めてもらいたい、と考えてる次第です。