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§231 問題集を選択するその発想 VOL.3
<文章題>
算数の「基本学力」に関し、前回のVOL.2では一番重要な「図形」に焦点をあてて、その学習の中身を深める作業のあり方を細かく述べました。算数ではあと2つ、その基礎をしっかり固めておかねばなりません。それは、よくご存知のように「計算(比などの数量関係を含めて)」と「文章題」です。
先に文章題から。
中学に進んだときの1次方程式や連立方程式でよく出てくる文章題から考えると、小学校で何を基礎として、また大事なパターンとして学んでおかねばならないかが、逆にわかります。
その前に、中学受験の文章題を瞰ておきますと、
「相当算・倍数算・分配算・仕事算・年れい算・過不足算・消去算・平均算・和差算・還元算・差集め算・つるかめ算・仕事算・
旅人算・通過算・流水算・時計算・のべ,帰一算・植木算・方陣算・仮定算・ニュートン算、そして決まりを見つけて解く問題」などなど、20種類以上に亘る問題がありますね。
個人的な事ながらわたしも遥かむかし、小学6年生の秋ぐらいからだっと記憶しておりますが、この文章題専門の問題集を自分で買ってきて、うんうん唸りつつ、ときに泣きたくなるの我慢しつつ、独り家で解いた経験があります。
わたしがやったのは上のように多くはなく、古典的なつるかめ算や仕事算、相当算や旅人算、通過算、流水算や植木算、平均算など15種類ぐらいだったかと想うんですが、まあそれでも解答とにらめっこして、理解したらまた類題を解くと繰り返しながら、もちろんすべてではありませんがその8割ぐらいは自分のものにしたように憶えています。
その体験のお蔭で、中学の文章題のまあ簡単なこと、算数のそれのようにいちいち考えや解法があってそれを頭から適宜引っ張り出すのではなくて、数学の場合は基本的には求めるものをXとして式を作れば解けるというワンパターンに近いものですから、ずいぶんやさしく感じました。
よって今回の趣旨から外れますが、もし基本の文章題や図形が十分にできて、そして図形の応用(中学入試レベル)も勉強してこなせる生徒は、中学受験に関係なく上記の文章題にトライしてもらいたいと思います。
さて話を戻します。
基本で求められる文章題は、上述した中学受験の文章題とは切り口や分類のしかたが異なって、いわゆる「倍・割合に関する文章題、食塩問題(割合の一部ですが)、距離に関する問題」が中心になってくるかと思います。
この基本の文章題が、なんとまあおそろしくわかっていないのですから、そして文章題が苦手というケースの中身がこのレベルで言っているのですから、堪らんなあと思うわけです。その原因のもとは国語力、とくに読解力、いやいやそんなに大袈裟にではなく、短い文章のなかで何が書かれているか単に読み取るだけの力、それが弱いのでしょう。言葉の指す内容をつかみ、言葉にあてはめて式を作ったり考えたり、そして言葉を通してポイントを整理・理解し、覚えてしまう。そこがまず大丈夫か、と問いたい。
この段階の全体の内わけは、習ったそのときにまったく理解できていない生徒、一応は理解でき納得もしてその限られた狭い確認テストではなんとかできている生徒、きっちり理解も吸収もできてその力を揺るがすことなく中学にも持ち込んでこれる生徒、大別するとこの3つになるでしょうか。
生徒同様親にとっても気をつけなければならないのは、そして気をつけていないと思えるのは、3つのなかの真ん中、小学校の授業での理解とそのテストでできている生徒でしょう。しかし分類からもう結果は出しているのですが、おわかりでしょうか? 習ってわかっていた基本を中学に持ち込まないんですよ、つまりどこかで棄ててきているわけです。
たとえば学校では、大丈夫です、よくわかっています、と先生から言われているケースが殆どですから、そしてそのケースのまた殆どでわたしは、ちっともほんとうにはわかっていなかったじゃないかと、実際に公立中学生を長年教えて思い知らされてきましたから、よくもまあ実力をつけない勉強を小学校でしてきたなあと、そしてそれと同等に、基本を満足に身につけさせない、叩き込まない指導をしてよくもそれで教えたと、またわかっているといえるなあと、どちらをみても不思議に思います。勉強ってこの段階、基本に関してはそれほど難しいものではないんですから。
基本の文章題の1例を下に書いてみます。「割合の文章題」で、中2レベルなんですが、今回の初めに書いた「中学に進んだときの1次方程式や連立方程式でよく出てくる文章題から考えると、小学校で何を基礎として、また大事なパターンとして学んでおかねばならないかが、逆にわかります」の一部分が、この問題を通して皆様にみえてくるかと思いますので、すこし説明をしてみます。
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<問題>
A校の生徒数は1008人で、これはB校の生徒数の75%にあたる。また、A校の男
子生徒数とB校の男子生徒数の比は2:3であり、A校の女子生徒数はB校の女子
生徒数の1.2倍である。
(1)B校の生徒数を求めよ。
(2)A校の男子生徒数を方程式を作って求めよ。
<答えは一番下に>
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これは某県の公立入試入試問題です。連立方程式の文章題になるため、中2の2学期以降にならないと生徒は解けないかもしれませんが、いまは解けるか解けないかを問題にしているのではなく、何を基本として小学時に吸収しておかねばならないか、何が解法のポイントになっているのか、その視点でみてもらえばと考えます。というより、頭は痛いでしょうが実際に解いてもらったほうが、よりはっきりとみえてきていいのですが。
さて(1)ですが、これは小5生で解ける問題ですね。それも基本中の基本の、素直な問題。「A校の生徒数は1008人で、これはB校の生徒数の75%にあたる」
問いは、B校の生徒数を求めよ、です。
※「もとになる量×割合=くらべる量」
(もとになる量=基準とする量=全体とする量=1とする量)
「もとになる量」がどれにあたるかをつかむことがポイント(そしてそれは、(2)を解くための伏線とヒントになっていますね)。
1.それが、つまり「もとになる量×割合=くらべる量」と「もとになる量」が どれにあたるかをつかむことがポイントであることが、この問題を読んで解 こうする際、すぐ脳裏に浮かんでいるかどうか?
2.次に、ではA校の生徒数とB校の生徒数のどちらがもとになる量にあたるのか、 判断できるかどうか?
この2点、これを基本といわないでなにを基本というのか、ということですが、小5で学習し、以後小6や中1になろうが、中3であろうが、いつ如何なるときでもわかっていて当たり前、そういう勉強が最初の時点で吸収し完全に身につけておくことが大事でしょう。
そのような力のない生徒は往々にして、中1で方程式の文章題を習い、さらに中2で連立方程式の文章題を習ったとしても、基本のなんたるかを理解もせず、また守らなかったりして(2)ができないことになる。この平凡だけど良質で基本の力をみるに相応しい文章題、その作成者側は、(2)ができることを望んでいるわけだけど、おそらく正答率は30%にも満たないであろう。
折角ですから(2)の解説をしておきますが、この問題の「もとになる量」は男子も女子もB校の生徒数であり、それゆえ基本の立式はB校の男子生徒数をX人,B校の女子生徒数Y人とするのが普通であり、それを求めたあと、問題のA校の男子生徒数を出す手順になります。(逆も可能ですが、すこしややこしくなる)
公立入試ですから出題順序に沿っていけば次の段階へと進めていけるようになっているわけですが、(1)も(2)も「もとになる量」の見究めがひとつの鍵でしょう。
具体例はこれ一つにしておきますが、距離に関する問題も食塩問題もまったくその力の症状、内容は同様です。1あたりの量のつかみ方や式が掛け算なのか割り算なのかの判断も含めて、ほんとにこの基本レベルで力が不安定、十分にわかっていないまま公立中学へ進んでいる生徒の割合が、半分どころか8割以上は占めていますので、よくよく子供の算数の力の正体を、今回は文章題に関してみましたが、前回の図形も含め注視してもらいたいと思います。
最後に、文章題の勉強方法についてすこし。
ひと言でいえば、「量より質」をもっと大事にすべきかと考えます。これは図形でも実は、同じ趣旨のことを書いているのです。いまやっている勉強をていねいにすること、掘り下げることです。自分の頭で底にたしかに突き当たるまで考える習慣をつけることです。
これを小学校で自得していない生徒は、中学になっても勉強のしかたがわからないとかいいますし、「効率的な勉強はどうしたらよいか・・・」と愚かな問いを発しますし、塾に通っても効果が薄い、またなんら成績も上がらない結果を招きがちです。
また問題集を次から次へとやっても、それは表には形として出るのでよくやっているようには映りますが、量は十分でもよく視ると(これが一般には難しいのでしょうが)、質が伴っていないことが多々あるんですね。それは上に書いている数値のなかに完全に含まれていますよ。
量を追求するのは質を固めてから、また固める力をもってから行うべきでしょう。質を高めるとは、自分の外にあるなにかではなく自分のなかにあるなにかなのですから、そのなにかはノート学習を通して自分でひとつひとつ見つけ、蓄えるものだと思います。
長くなりました。「計算(比などの数量関係を含めて)」については、次回VOL.4で書いていきます。
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<解答>
(1)B校の生徒数を求めよ。 A.1344人
(2)A校の男子生徒数を方程式を作って求めよ。
A.756人
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