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§31 数学を得意科目にするには・・・new
<微妙に違う問題レベル>
数学を得意科目にするには、どうすればいいんだろうか?・・・。
設問自体がすでに矛盾を孕んでいるので、今回は書きにくいことこの上ない
のが正直な想いですが、それでも無理を承知で書き進めていくことにします。
そんなに高度なことを書く気はないのだけど(いや、書く識見も持ち合わせて
いませんが)、多少理屈っぽく屈折したことを書くことになりかねないところ
はどうかご容赦ください。
なぜ矛盾しているかというと、数学という科目は、教科書のレベルから出題
される定期テストの問題と入試数学の問題が、明らかに乖離していることに拠
ります。(根本的には繋がっているはずなのですが、生徒の目にはまあそうは
映らない。)
「数学が得意」ということは通常、定期テストなどで90点以上を常にとってい
れば、本人はもちろん他の方もそう思いますよね。「あいつは数学が得意だよ
なあ、いいなあ」と。私もそう思います。しかし、その得意なはずの数学の力
が、入試数学のなかでも繋がって生きているかというと、そう簡単に言い切れ
ませんね。
何故か? それは問題の質、レベルが、微妙にあるいは大いに違うからです
ね。では、どう違うのか具体的に出してみたい。本当は図形問題か関数問題が
ベスト(これが入試数学最大のポイントですから)なのですが、このメルマガ
はテキスト形式なので、それができません。そこですこしはわかってもらえる
かということで、中2の「文章題」に例をとることにします。教科書レベル(A)
と入試レベル(B)を比較対照してみてください。
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(A)
「りんご12個とみかん15個が入った果物かごの代金は3000円、りんご
16個とみかん10個が入った果物かごの代金は3250円であった。どちら
の代金にもかご代150円が含まれている。りんご1個、みかん1個の値段は
それぞれいくらか、求めよ」
(B)
「ある町の子供会で、何人かの大人と子供が博覧会に出かけた。また、参加し
た子供の人数は大人の人数よりも6人多かった。入場券については、大人1人
1000円、子供1人700円の入場券をそれぞれ購入する予定であったが、
会場に着いてみると、大人1人と子供1人のペアで利用できる1500円のペ
ア入場券があった。そこで、利用できる限りこのペア入場券を利用したので、
予定よりも、合計で3000円安く全員が入場できた。このとき、大人の人数
と子供の人数を、それぞれ求めよ」<公立過去問(佐賀県)より>
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学校では(A)のような問題を基本に、割合、距離、食塩、整数、生徒数
(割合に入りますが)、平均、などの連立方程式の代表的な文章題を演習しま
す。そして計算を含め定期テストが構成されています。生徒にとって実際、こ
の基本の計算から文章題まで理解しこなすまで時間も頭も結構使うのですが、
まあ、すべてのパターンがわかったとして(しかし、割合的には10%から20%
の生徒にすぎませんが)、これで文章題に対する力が備わったかというと、そ
うとはいえないんですね。
テストで頑張って93点とれたとしても、それは(A)のような文章題に対
してです。ところが、89点や92点や94点とる生徒が、公立入試過去問(B)の
問題をすると、急に考え込んでしまう。もちろん考えるのはいいのですが、2
分、3分経っても鉛筆が遅々と進まない。
その理由を考えてみます。
まず直ぐに気づくのは、文章の長さですね。(B)の文章は入試問題として
はごく普通、この2倍以上の長さがあるのもたまに見かけます。ですから決し
て長くはないんですが、平均的な力の生徒は何が書いてあるのか、さっぱり読
みとれません(国語力がまずい)。
次に、読みとれた生徒のなかでこの問題の壁は、習った基礎パターンにない
ということです。解法がどうも頭に浮かばない。教えられた解法は身につけら
れても、その解法の奥にある、要するに何だ、これとこれを覚えておけばいい
のか、こういうときにはこう対処すればよいのか、というところまで、自分の
頭でふだん本当に考えて、落とし込んで記憶できていないんです。
三つ目に、これは入試文章題の特徴ですが、当然教科書のなまな問題は出さ
ず(計算レベルと同様な視点で、基礎力をみるということで出題する県もなか
にはありますが)、日常の身の周りから題材を創作される場合が多いんですね。
その狙いは対応力なわけで、往往にして一捻りが加わる。二捻りすると悪問に
なるのでそんな出題はまずありませんが、この一捻りに生徒は極めて弱い。
すこし解説しますと、上の問題で生徒が考え込んでしまう一捻りは、問題文
をじっくり読んだ方はおわかりでしょうが、「利用できる限りこのペア入場券
を利用したので」という箇所ですね。
<ここで、さらに余計な問題解説>
「大人X人、子供Y人とすると、子供の人数は大人の人数よりも6人多かったわ
けですから、Y=X+6の式が直ぐわかり、できる限りこのペア入場券を利用し
たということは、ペア入場券の数はX組でしょう。例えば大人4人、子供10
人と具体的に(!)考えると、ペア入場券は4組ですものね。それで、予定の
人数の金額の式と実際の入場した金額の式をイコールで繋げば、立式は完成。
後は計算して解くだけ」
これはほんの一例です。特に難度の高い問題レベルではありませんが、問題
の質、レベルが微妙に違うことがおわかりいただけたかと思います。
このように特に数学については、ふだんの学力が即、入試の学力にはならな
い。この文章題をはじめ厄介な問題は、なんといっても「図形」と「関数」問
題にあるのですからなおさらです。入試の学力に措いて、ふだんの学力は必要
条件だけれども、十分条件ではまったくないということです。というわけで、
「数学を得意科目にするにはどうすればいいんだろうか?」という、はじめの
問いの矛盾が、答え(まだ書いていませんが)の矛盾を惹き起こしかねないこ
とになってしまうのです。
よって、この命題の欺瞞の呪縛から逃れるため、得意という言葉をここで外
したい。むしろここまで書いてきた内容で、今の自分の数学に対する心構えに
なにか目を啓かれるものがあればさいわいです。
生徒を長年教えてきて、数学という科目は、他の科目と違い、応用問題にな
るとどうにも乗り越えられない壁というものが、生徒にあることにイヤという
ほど気づかされます。
それを打ち破る術、テクニック、急所を、いくら繰り返し声を大にし教えて
も、それを吸収し自分の養分にして、他に活用、転用できる生徒が、残念なが
ら極めて少ないのも現実です。数学の能力、といってしまえば話になりません
が。
やはりここでは、「努力」という言葉を使いたい。今回は下から見た標準的
な勉強方法を述べてるのではなく、上から(入試から)見た数学の対応力を述
べてるので、内容的には厳しいものになってますが、現状のレベルに止まって
到達レベルを見失ってはいけないということです。問題(A)から問題(B)が
できる努力を、ふだんの勉強のなかでつねに意識し実践してほしいものです。
実際、問題(B)を超えた更に高いレベルの問題が、高校入試(特に私立ハ
イレベル校)には数多くあるわけで、それは努力だけではどうにも補えない数
学的に切れる能力というものが必要ですが、そうした応用の応用ではなく、単
なる応用レベルぐらいの問題(公立高入試)は、大いに自らの頭で考え、研究
し、深く身につく勉強を心がけてもらいたいと思うのです。
中1では計算中心に基本をしっかりマスターし、中2からこの種の問題、思考
力があるかどうか問われる、習ったことを本当に理解し応用へと使いこなす力
が要求される単元が出て来るわけでず。そこを認識せずに過ごすと、数学の力
は井の中の蛙になりかねないのです。むやみにたくさん解けばいいというもの
でもなく、質を大切にして良問をじっくり解くこと、そして直ぐ諦めずに粘り
強く、時間をかけ考える習慣を自分でつけていくことが必要です。
数学も他の科目同様、基本が大切です。まずはその基本を徹底して習得する
ことに努めること。それができていない生徒に、上記の応用問題はできません。
こうした力が身につけば、応用への橋渡しである道(解法)をさらに見つける
よう、日頃の勉強のなかでつねに注意を払うこと。一段上の数学力は、そこら
へんにつねにあるのですから。
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※図形力を鍛え・アップするトッポ先生オリジナル問題集
・「算数の図形教室<B>」〜中1・中2生用
・「入試図形問題の攻略Ver.5」〜中3生用
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