|
§127 英語学習の取り組み方についてVOL.3
<主語の把握が・・・>
現行の中1英語の教科書――どの教科書とはいいませんが、文法が細切れで一貫性に欠けている、と前回VOL.2で書きました。
それは中1に留まらず中2・中3の中でもたとえば、
「何でこんな構成、配列にするんだ、文法のまとまりがこれでは途中で分断され、全体が把握できない! また各文法の関連性が希薄になってしまう。生徒の理解は中途半端になるのは目に見えているし、同時にこちらも系統立ててしっくりとは教えにくい。それでもなくても、一つ一つ教え、わからせ、何だこれだけでのことかということに対し、容易には自分のものにしない生徒に、そ
れらの少ない知識習得の何倍も説明と演習を行わねばならないのが、堪らない実情なんだけどね」
と、憤懣やるかたない気持ちがしばしば湧き上がるのですが、最近ではついに諦め半分、次の如く認識しております。
「これは、作った人(もしくは人々)はかなりのばかだな。それがいい過ぎなら、以前と較べ能力が落ちたよ」と。
教科書というものを人一倍尊重し、学習の中心に据え重視してきたわたしも、学習構成上の隠された意思や視野、そして確たる学力形成への理念を感じることが出来ない内容に、その地位は、本屋に並ぶ参考書、問題集となんら変わらないではないかと見切りをつけるに至った。
新指導要領の教科書改訂の内容云々以前から実は、わたしの記憶では1990年前後から改訂を繰り返すたびにその質と量は低下していたのですが、と同時に学力低下もいまに始まったことではなく、とっくの以前から徐々に進行していたのですが(このことは河合塾の過去20数年分の大学受験生の学力データで客観的にも判ることですが)、このことを識っている人は意外と少ないのが実情でしょうね。
まあそういう視野はともかくとして、中学校での英語授業の指導と定期テストはもちろん教科書に基づいて進行されるわけで、これをまったく避けて通ることは出来ない。できることならそんな教科書を無視して英語を教えたいのが本音で、わたしの作成した文法問題集を中心として演習を行い、そのフォローとして教科書に替わる適当なリーダー本を用意して肉付けをしたいのだが、生徒の成績、立場を考えると現実にはそうも完全にはいきません(でも、8割がたこの形ですが)。
さて、ぼちぼち本論へ。中1へ絞り込んで。
「中学の英語は、一言でいうと、主語だと思うんです。高校の英語は動詞、もしくはそれを含む述語部分の把握です」
そう、わたしの場合、捉えています。これはあくまで表象的にいっているので、ああ、なるほどと腑に落ちる方もおれば、なんのこっちゃと思われる方もいるかと思います。
いまの公立中学生に英語を教えていて問題、障害に陥るケースはうんざりするほどさまざまあるのですが、その最大にして根本的なのものは何だと思われますか?――そうですね、日本語の力です。ものすごく危うい日本語の力です。そしてそれを支えている国語力そのものです。ちなみに注意力というものも、国語力を養う中で育つものだと思いますよ。
「その国語力を養う中で」という言葉の、なんと虚しい響きであることか。小学校で見事に育っていませんから。基礎の基礎の基礎が身についていない生徒の、何と多いことか?! 公立へ進む生徒の中の8割以上の中1生が、満足に漢字が書けないのは情けなくとも当たり前として、主語と述語の見分け、その関係もわかっていません。へたすりゃ、名詞、動詞もわかっていない。形容詞はなんだ?ということになるし、副詞に至っては皆目見当もつかない。<わたしなら、その8割以上の生徒に見合うだけの小学校の先生を即刻馘首しますけどね>
これで、英語をするのでしょう? 英語はね、当たり前のことをいうので恥ずかしいですが、主語と述語がわからねばならない。また、こいつが名詞で、動詞で、あれが形容詞だ。形容詞は名詞を修飾するんだ。副詞ってものは他の形容詞や動詞を修飾するんだ(もちろん中学英語としての話)。冠詞ってものが英語にはあるな。a
とan 、そしてthe 。数えられる名詞の場合、単数ならa(an)+形容詞+名詞の語順。(その、a
とan が抜けるでしょう?! 2学期になれば)
まあしかし、ここまで来るのに、延々と気の遠くなる説明と繰り返し、そして数多くの問題演習、さらに間違い直しをしているわけです。
なぜ、延々と気の遠くなる説明をしなければならないか。それは、英語そのものの文法を教えている以前に、小学校の間にわかっていなければならない国語の最低常識が身についていないから、そこに時間を喰われるわけですね。
なぜ、繰り返しをしなければならないか。一度の言葉の説明で、理解する、受容する国語の力を持ち合わせていないから。そして、それ以上に、自分の頭で考えるという学習上の基本が欠落している生徒が多いから。
なぜ、多くの問題演習をしなければならないか。わかったことと出来ることは違うから。わかったことは実は、10分の3も実際にはできない。それを可能な限り10に近づけるため。そして時間が経つと風化するのを、つまり実力の形成に罅が入るのを少しでも食い止めるため。自分の頭でほんとうに突き詰めて思考できる生徒は、ここまでの演習は要らない。が、その確率は40分の1,2。
なぜ、間違い直しをするのか。これは愚問でしょう。
さて話を戻して、主語と述語。その主語――肝心要のこいつがいまだにわかっていない生徒は、一般にはこの2学期でも半数以上はいるのではないだろうかと予測する。学校で教え込まれていないのだ。いやもっと正確にいえば、教え込まねばならないという認識すら所有していない教師が多いのだ。
さらには、主語が判断できるとしても、その判断が常に身についている、いかなる問題であろうと主語の認識を踏まえて問題を解く生徒の数は、ごくわずか1割前後と推う。つまりそこから派生して、かなりの多種多様な間違いを惹き起しているのがなんと9割以上の生徒の実情である。
ということは、現時点で定期テストで80点以上を取っている、或いは90点以上を取っている生徒もその内実の力は、まだまだ基盤が脆く安心して観ておれるわけではないということを申し上げておきます。
(具体的問題例、テストを出すとさらに明確に認識できるでしょうから、もしよければ下に明記しておりますURLを参考にしてください。)
「中学の英語は、一言でいうと、主語だと思うんです」という意味が、概略ですが少しくお解りいただけたかと思います。
その主語が、教科書では結果的に生徒に措いて、非常に不明瞭な組み立てになっているのです。結果的にと書いたのは、生徒の多くは習った知識の不明瞭な部分の整理整頓を自分でしない、或いは出来ないからです。それこそが学習の基本作業なんですが。
中1英語の大まかな文法内容は以下。
1.Be動詞 2.一般動詞 3.命令文 4.疑問詞のある疑問文
5.助動詞can 6.現在進行形 7.過去形(規則動詞<一部不規則動詞も>)
1〜4番と5番or6番(教科書の配列で違います)までが、この2学期最終までの学習範囲になるかと思います。粗くいいますが、1〜4番までがポイントです。これがきっちり出来れば5番〜7番はさして困難なことはない。3学期もスムーズに学習できるでしょう。そのポイントであるところの英語の基礎の土台にあたる1〜4番、命令文はいいとして、Be動詞、一般動詞、疑問詞のある疑問文の3つの文法を如何に吸収するかが、その後の英語の勉強に大きな影響を与えることはいうまでもありません。
この3つの文法単元を吸収する際に根底となる主語の掴み方とその人称及び単複の区別、一言でいうと、3人称・単数の把握とその実行作業が、いまの教科書内の配列と構成では非常に心許なく、生徒にとっても大いに躓きの、また実力不足の第一原因になっていますので、焦点を合わせた勉強をされることを望みます。
|
|
|