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 中学生の学習のしかた by Toppo
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§202 問題集を作る裏側の話 VOL.3<小麦のグラフは3つを> 

 地理の学習は、たんに学校で学んだことだけで、それで学力がつくものではありません。またVOL.1でも最後に触れましたが、普段の学習を等閑にしたテスト前1,2週間の集中した勉強だけで、つまり狭い範囲の、その場限りの要領のいい対策だけでたとえいい点数が取れていても、それは本物の学力から程遠いところにあるのが常です。わたしは職業柄この実例を、うんざりするほど観てきました。

 それは、表面的で底の浅い知識の所有と暗記しか身につけていないことに、一番多く起因するでしょう。覚えた内容が漫然とした状態で、またいろいろと問題集には取り組んでみても、その実、自分ではなんら深く覚えるべきポイントの把握と再整理が徹底していないこともまた要因です。

 当たり前でしょう、底の浅い知識は時間とともにすぐに消滅することなんて、また覚えた内容が漫然としたままではこれまたすぐに混乱をきたすのは。

 市販の問題集にしろ熟専用の問題集にしろ、その内容は結構詳しいんですね。問題演習量も十分過ぎるほどあるものもあります。しかし、かなり有名な問題集にしても、そのテストに出る重要ポイントやまとめなる部分で、これは生徒やご父母の方ではわかりづらいところがあるのですが、専門家(と、恐縮ですが言わせていただきますが)のわたしの目から視れば、なんでこんなものが重要なのか?!と首をひねる事項やくだらぬ内容、入試になんら結びつかない知識(もちろん入試に関連するのが無条件に大切というわけではありません)などが平気で載せられていたりします。

 逆に、おいおいこれだけかよ、こんな曖昧な表現で済ますのかよ、この先の具体的事項がポイントだろう!と呼びたくなる記載も結構目にするんですね。それに続く基本や標準の問題演習編にしても画一化されていて平面的といいまか、重要分野での突っ込んだ問題が足りませんし、それ以上に、入試問題に繋がる知識の整理や学習上のヒントなども、殆ど見かけません。

 また熟専用のワーク形式問題集でも、やたらと問題が多いといいますか、無理に問題にした問題(?)やどうでもいい知識なども混在して、ああ、こんなんで勉強すれば生徒は、無駄なことを覚えて肝心の大切なことを覚えない可能性があるね、またポイントも深く考えないだろうし、暗記もしないね、といった弊害もあるわけで、なにも演習量が多ければいいというものでもありません。

 こういった生徒側、問題集側の諸問題を十分知り尽くした上で、この新しい問題集を創りあげました。無駄な知識や余計な問題は省き、あくまでスリムにどうしても必要な知識やポイントを、その代わり入試に必要なところはとことん膨らませ、かつ深く掘り下げて、独自な選択と構成で纏め上げました。

(まあこれは作者の一時的な戯言とお見逃し願いますが、その長年の経験と持てる知識――基本から入試までの情報をフル動員して、またノウハウのすべて注ぎ込んで、1枚1枚考えに考え創りあげた、どこにも類例を見ない、貴重で画期的な問題集。になっておればいいのですが・・・。)

 確実に理解と揺るぎのない暗記をしておかねばならない内容の選択と追求、まさに地理に関する知識の核となるものを、この問題集で吸収してみてください。通常の定期テストにも十分対応するよう縦割りの構成にしてありますが、それよりも実力テスト、そして入試社会の如何なる地理問題にも対処・攻略できる力の獲得と養成に主眼を置いています。つまり生徒の学力の中で、最も難しい課題に挑戦した問題集である、と捉えていただければさいわいです。

 その核を創りあげることが、生徒にとって実際どれほど難しく困難なことであるか(おかしなことなのですが)、また予想以上にできないことであるかも、残念ながら識っております。それだけに、まさにこの点を、問題を通して教える問題集といえるでしょうか。

 以下一例を書いてみます。工業出荷額の例はホームページ上でも載せましたから、「小麦」で説明してみます。うーん、ご父母の方にはちょっとおもしろくない、また頭の痛い内容になるでしょうが、ほんとうに役立つ実践的な知識とはそういうものですから、すこしご辛抱を。

 小麦をネットで調べてみますと、「小麦粉は、用途にあわせて、強力粉(パン、ギョウザ、中華めん、ピザなど)、中力粉(うどん、料理など)、薄力粉(ケーキ、菓子、天ぷら、料理など)などに使われる」と書いてあります。

 この小麦の自給率は10%以下(ちなみにその少ない国内生産の約半分は北海道。十勝平野ですね)、90%以上を外国からの輸入に頼っている。ここでちょっと入試問題にしてみます。

1. 中国・インド・インドネシア・バングラデシュ・ベトナム
2. 中国・インド・アメリカ合衆国・フランス・ロシア
3. インド・中国・スリランカ・ケニア・トルコ
4. アメリカ合衆国・フランス・オーストラリア・カナダ・アルゼンチン
5. アメリカ合衆国・フランス・アルゼンチン・中国・ハンガリー

 1から5はすべて農産物です。1〜3は世界における「生産量」上位5カ国を、4と5はある農産物の「輸出額」の上位5カ国を表しています。さて、それぞれ何の農産物でしょうか?

 これが「1番目の問い」とします。農産物とあるだけで他ヒントはありません。しかし、この設問だけで答える能力が、実力の正体でしょう。そしてこれを磨けよ、そして分析して暗記せよ、と言いたい。

 実際は円グラフや帯グラフになっており、割合のパーセンテージも明記されています。統計年度によって若干の順位の変化もあります。また公立入試となると通常、もう1点か2点、甘いことにヒントが確実にあり、易しく作られているのが普通です。それでもできない者はできない。いや、できない生徒が非常に多い。

 さて、答えに至る解説をしてみます。
 まず1〜3の、世界における「生産量」上位5カ国の農産物ですが、問題以前の常識として知っておかねばならないのは、日本であるまいし、ほうれんそうやトマトなどが問題になるはずはない、ということ。頭に浮かべるべきものは、米や小麦、とうもろこしや大豆、茶、などです。この基本の感覚が大丈夫か?

 1〜3でまず簡単(?)なのは、3番です。スリランカが載っています。スリランカが載っているグラフは文句なく、迷うことなく、「茶」ですね。インドのアッサム茶(アッサム地方)は有名。昔から何十年も順位が変わることないこのグラフは、ほんとに不思議なくらいです。まさに古典的な問題といえるでしょうし、最近では傾向が変わりほんのたまにしか出題はされませんが、でも覚えておくべき基本です。

 次に1と2。どちらも中国が1位で、2位がインド。人口の多い順である。これだけではわかりませんが、3位から5位をみればわかる。1の問題のほうは、インドネシア・バングラデシュ・ベトナムですものね。つまり、すべてアジアの国々が占めている。インドネシアの人口も2億人を超えていて、非常に人口が多い国です。しかもあまり馴染みがないでしょうが、バングラデシュも1億5000万近くの人口を持つ国です。アジアで人口が多い国で食べられている農産物、「米」ということがわかります。

 残るは3番。中国が1位で、2位がインド、3位からアメリカ合衆国・フランス・ロシアとなり、欧米の諸国が来る農産物。フランスはヨーロッパ1の農業国で、小麦の輸出国でもある。アメリカの春小麦・冬小麦地帯、ロシアの黒土地帯なども小麦の代表的な産地です。これらの個々の知識と関連づけておくことももちろんですが、実は中国・インドも小麦の生産は人口からいってもとても多いのだ、という知識の確認と整理をしておきたい。答えは「小麦」。

 4と5は農産物の「輸出額」の上位5カ国を示している。離れましたので再度下に書きますね。

4. アメリカ合衆国・フランス・オーストラリア・カナダ・アルゼンチン
5. アメリカ合衆国・フランス・ア  ルゼンチン・中国・ハンガリー

 うーん、農産物の輸出額。1〜3より難しいかな? 
 4番ですが、2位から5位までフランス・オーストラリア・カナダ・アルゼンチン、個々の単元知識で言えば、2位のフランスで上にも書きましたが小麦の輸出が浮かばねばならない。さらに3位のオーストラリアと4位のカナダは日本へも小麦を輸出している。5位のアルゼンチンも、ヨーロッパへの小麦ととうもろこしの輸出は押さえておくべき知識です。つまり、4番も「小麦」になります。

 最後の5番の問題。これが一番難しい。いえ、正確にいうと、1〜4番は基本なんです。生徒にとっては基本どころか、ヒントなしでは相当難しいのですが、本当に難しいのは、この5番だけ。そういうレベルの勉強を、この問題集で是非習得して欲しいと思います。5位に旧東欧のハンガリーが入っていますが、これは統計年度によって変わるから、あまり記憶しても当てにはできない。

 大豆の場合、「ブラジル」が入る。詳しく書けば、アメリカ、ブラジル、中国、アルゼンチンが主なる産地です。日本への農産物輸入品目で、アメリカに次いでブラジルがあれば、それは間違いなく「大豆」です。さて戻って、5番。これは他のヒントがなければとてもわからない問題だと言っておきます。実力的(?)な正解の出し方は、上でも書いたようにアルゼンチンは、小麦と「とうもろこし」の輸出国、そしてここにブラジルが載っていないのだから、答えは「とうもろこし」となるのですが、さてご理解いただけるでしょうか?・・・。

 あとですね、小麦に関してのグラフで覚えておかねばならないのは、小麦の日本の輸入相手国です。アメリカ・カナダ・オーストラリアの順で、この3カ国でほぼすべてを占めます。上の5つの問題と、小麦に関しては特に、輸入相手国と世界の生産国と世界の輸出国の3つのタイプを整理整頓して、判別できるよう記憶しておくことが必要です。

 掘り下げておくとは、こういうことです。よくですね、社会は暗記科目だ、3年生の後半から追い込んでも間に合う科目だと言われていますが、それはある面では正しく、またある面では大きく違いますね。単発の知識とそれへの問題には対応できても、暗記した諸知識を運用する問題には非常に弱いということ、また上記のような知識の習得は、日々のなかで時間をかけ、また考え、コツコツ積み重ねてこそできるものであって、小手先の表面的な暗記ではとても吸収しえるものではありません。

 その大事な勉強を、実力をつける核となる勉強を、この問題集を通して学んでほしいと願っております。

 最後に、わたしの敬愛するアランは、つぎのように述べています。
「私は、記憶力は勉強の条件ではなくて、むしろまさにその成果だと信じている」