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NO.676 質問をすることについて<算数の図形問題で>

 わからないところあれば、先生などに訊いて教えてもらう。これってふつうのことですね。

 わざわざ先生に聞かなくともいまやネット上で、簡単に質問ができて、そして答えてくれる人も大勢います。ずいぶん便利になりました。

 ここでは、小・中段階の学習上の質問に限定して考えてみますが、一部英語関係の質問はあるにしてもやはり圧倒的に多いのは、算数あるいは数学の質問になるでしょうか。それも基礎や基本に関する質問ではなく、いわゆる応用的な問題になることが大半を占めるでしょう。理科や社会、そして国語の質問などあってもいいのですが、あまり見かけませんね。

 さて今回、言及しておきたいのは、質問者が答えの説明を受けて「わかった」「理解した」という内容が、果たして本当か?ということです。どこまでほんとうに、そのあと、「できる力」まで身につけられているのか、どうも疑念を感じることがあるからです。

 その典型例を書いてみることにします。

 とある有名なネットの掲示板。「中学受験の算数 面積の問題」という質問です。

 質問内容
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 わからないので教えてください。よろしくお願いします。
下の図は、半径12cmの円の4ぶんの1の部分を3等分したものである。斜線
部分の面積を求めなさい。ただし円周率は3.14とする。
 (問題の図は手書きで描かれています。)
<筆者注:下記URLをネット検索してもらえば、問題とまた回答者との遣りとりがわかります。> 
  https://okwave.jp/qa/q9383752.html
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 因みに、わたしのHPでも問題と解答を作りましたので載せておきます。
 ページ(問題3)へ
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 解答された方が「3等分っていうのが、どこのことを指しているのかちょっとわかりづらいです。直角マークが付いているところが4cm, 4cm, 4cmということですか?」と、問題条件を確認されていました。わたしもこの問題をみて、ちょっとふん?と感じました。

 図形問題というのは、条件がいのちです。ほんのすこしでも条件が狂えば、まったく違った問題になります。ですから解く側に、正しく条件が読み取れるように、簡潔明快に問題と条件を明記しなければなりません。

 おそらくこの保護者様はその鉄則の意識が薄く、わかってもらえるだろうと自分の言葉で、問題を適当に書いたのだろうと想われます。

 この方がというのではなく、こうした図形問題を小学時に解いた経験のない生徒、たとえ解いたとしても理解が中途半端な生徒が、中学生になって1,2年が過ぎても、その大半が、こうした図形問題の条件を読み取る意識が薄く、あるいは根本的に備わっておらず、つまり、図形問題にどう接して解いていくのか、そのあるべき土台が形成されていないことになりますから、ほんとにここはよく考えておいてもらいたいと思います。

 この図形問題は、完全な定番問題です。応用の基礎です。応用問題をレベル的に3つに別けるとすれば、基礎ランクに当たるものです。もうすこし説明しますと、Aは応用の基礎(いわゆる定番問題)、BはAの知識を使えば解けるやや高めの新しく作られた問題、CはAとBを踏まえた、しかしほんとうに練り込まれた思考力の要る問題です。(よって、中学受験算数の図形問題といっても、私立中堅校以下だと推測されます。)

 ここで脱線。波線部分を飛ばしてもらってもけっこうです。
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 わたし問題集「算数の図形教室<A>or<B>」は、このAとBのランクに当た
る図形問題を習得あるいは攻略する力を身につける問題集です。Cランクの問
題が自力で解ける生徒は1%にも満たない、たとえ公立トップ高に進学する生
徒でもその大半が入試の現場では解けないレベルなので、特段必要ありません。
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 さて、なぜこの問題と保護者の方の例を採り上げたのかですが、はじめにも書いたように、解答の説明を受けておそらく「わかった」「理解した」から、そのあと、ほんとうに自力で「できる力」を獲得するのに、どういう勉強が必要なのか、また足りないで見落としているのか、それも応用の基礎レベルの問題ですからなおさら大事で、勉強のしかたを間違わないようにと、そういう思いからであります。


 問題の図形は、4分の1円(中心角90度のおうぎ形)です。

「半径12cmの円の4ぶんの1の部分を3等分したものである」という質問者の表現。

 円の4ぶんの1の部分の「どこをいったい?」3等分したものであるのか?

 中心角なのか、円周の一部分(弧ですね)なのか、それとも半径の部分なのか。手書きの図ですがけっこう正確に描けていますから、中心角(=円周の一部分(弧ですね))を3等分する条件であることは判断できるのですが、それでも念のため回答者は確認しています。

 一見、へんてこな図の求積ですが、必ず求まる。なぜなら、条件が特殊だからです。

 この問題の場合、4分の1円。しかも3等分です。あと図には垂線が2本下りています。つまり、直角3角形がふたつあります。それも90度、60度、30度の特別な直角3角形です。それがまったく同じ形、よって面積が同じなわけですが、この同じである理由は補助線を引いて正3角形を作れば、すぐわかります(中学数学では、直角3角形の斜辺と1鋭角がそれぞれ等しい、という合同条件で)。

 無数にある図形のなかで、これだけ特殊な図形が揃って構成いるのですから、へんてこな形に見えても求まらないわけがないでしょう。そう考えるというか、意識を持つのが、この種の応用問題を解く際のまず基本です。

 ややこしいなとか、難しいなとか感じるのは、誰でもまず初めにありますが、解くノウハウさえしっかり持ってしまえば、こうした意識や感覚が持ててくるはずです。そのためには、多くの類題にあたって解く必要があります。そしてそこには共通して流れている解法のポイントやテクニックが必ずありますから、それらを見つけ、じゅうぶんに会得することが求められます。

 たった1問や2問、いや5問程度解いたからといって、こうしたことがわかるようになるとは思えません。この種の応用の基礎レベルの問題なら、すくなくとも2,30問解くなかで、身につけることができるものです。

 さて、この問題の解法のポイントは、図形の移動ですね。へんてこな形をした図形の一部である台形は、その向かいにある3角形と面積が同じである。なぜなら、面積が同じであるふたつの直角3角形から共通部分の3角形を引いた残りの図形になるからですね。よって台形部分を向かいにある3角形に移動して考えることができるわけで、つまりへんてこな図形は、中心角30度のおうぎ形の面積を求めればいいことになります。

 へんてこな形をした平面図形の求積問題、そのなかの解法テクニックとして「図形の移動」を使う問題の場合、その半数くらいはおうぎ形になることを、経験して掴んでほしいですね。これこそが図形力の、ある一面の正体でしょう。この一面を15個から20個ほど持つことができれば、Aの応用の基礎(いわゆる定番問題)はほぼ完成します。

 その力があれば、応用の中レベルにあたるBランク(Aの知識を使えば解けるやや高めの新しく作られた問題)の問題にもある程度までは解けるでしょうし、さらに磨いて図形力を伸ばすための修練を積んでいけばいいのです。

 以上です。

 最後に、ちょっと付け加えておきます。

 この問題の条件をすこし変えてみます。
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半径12cm、中心角60度のおうぎ形OABがあります。弧ABの中点をMとします。
 Aから半径OBに垂線を下しその交点をCとし、また中点Mから半径OBに垂線を
 下しその交点をDとします。図形ACDMの面積を求めなさい。
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 こちらのほうは補助線(OM)を一本引いて考えるだけなのですが、できる生徒はなんなくできるとしても、生徒全体を考えれば、すこしだけ難しくなるかもしれません。しかし、まったく同じ問題で、答えも同じです。

 あと、それから、蛇足ながら円に関する数字について。

 中学数学ではπを使えばいいんですが、小学算数では3.14なので計算ミスが出る率は増える。基礎問題でも応用問題でも計算しているとよく出る答えの数値、78.5 37.68 113.04。この3つくらいは暗記しておいたほうがいいと思うんですが、どうでしょうか。