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 中学生の学習のしかた by Toppo
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§259 数学の力について<数学の存在>

 数学に関する勉強のしかたや問題点など、これまでHPですでに算数の次元から含めると、いろいろ視点を変えて34回も述べてきました。

 ふつうはいまから先を観る、中1ならこれからの1年間の中1数学を、中2なら中2の1年間の数学を、中3なら中3の数学と入試における数学を、観たりどうしていこうかと考えたり、そしてまたその過程でさまざまな問題や困った現象が出てくるかと推うのですが、今回はまったく反対の、入試数学の立場から観た場合の、数学で知っておきたい実情や課題点などをあらたに少し述べてみたいと思います。

 数学という科目を5教科のなかで特別視したり、過大評価したりする考えは、わたしにはあまりないのですが、高校入試に臨んだ場合のその占める重さと合否への影響力はやはり、かなり大きいといわざるを得ません。

 今年も公立入試が終わったわけですが、わたしが住んでいる大阪府では、数学の点数の良し悪しが合否のひとつのキーポイントなった感が、公立トップ校については特にしております。

 社会と理科は、全生徒を対象とした共通問題だからオーソドックスであり比較的やさしいといいますか、ひねくれた問題はなく常識的な内容レベル。これは公立入試に関する限り、どの都道府県もあまり大差はないようですが。

 しかし、いまの公立中学生の学力評価の曲線は、ふたこぶラクダの形を描いているから、中堅から下位校を受験している生徒ではまったくできない生徒も多く、理科と社会の学力及び能力の低下はひどいものがあるようです。これを逆に言えば、公立の中堅校以下を受験する生徒は、英・数の点数ではあまり開きがつかないこともあるわけで、社会か理科のどちらか一方でかなりいい点数を取れるように勉強しておけば、合格の可能性は高まるともいえるでしょうか。

 さて目を上に転じますと、上位校、とくに公立トップ校を受験している生徒にとっては理科と社会がやさしいならできて当たり前、1、2問ミスぐらいはざらで満点を取る生徒もなかにいるようです。つまり、ここで差はつかない。英語と国語も大きく乱れずそこそこ点数を取るわけで、じわじわっと差はつくだろうが、その微妙な差を埋めるかさらに開けてしまうかは、数学の存在なんだろう。

 その数学が難しかった。ある生徒は内申点92(ここでは便宜的に100点が内申の総合計とする)あるのに、数学は5割強しか取れなかったという。ある生徒は数学が一番得意だったのにいつものように解けず、自分の目標点に至らなかったという。またある者は、トップ高校の受験生なら、学力検査でいくら数学が難しかったとはいえ、多くの生徒が8割以上は取っているのではないか、と勝手な憶測をしている。またある者は、みな高得点で数学くらいでしか差がつかない、そして合格点の基準が読めず内申点できまるのかと不安を抱いている。

 これらやきもきした思いや不安、真に迫った憶測(?)は、合格の結果が出たあとはまるで何もなかったかのようにきれいさっぱり霧散してしまうのが常であるけれど、そしてそれは当然過ぎるほど自然なことだけど、1年後2年後新たに受験を迎える生徒にとっては、数学はやはり、目の前に見える教科書レベルの基本や授業の内容だけではなく、入試レベルを睨んだ(それはふつうにしていれば見えませんが)勉強を相当しっかり準備していったほうがいいかと思います。(ここで宣伝、あいすみません。わたしの通年用問題集はそれを十二分に取り入れ、随所に組み込んで作成してあります。)

 前回のNO.368で、孫子の兵法の言葉を揚げました。
「昔の優秀な戦士たちは、まず負けるはずのない態勢を作り上げてから、敵を倒せる機会を待ちました。負けない態勢を作ることはこちら側の問題です。敵を倒せる機会ができるかどうかは相手側の問題なのです。つまり、いい戦士たちは負けない態勢を作ることはできますが、敵を倒す機会を作ることはできないのです。ですから「敵を倒すやり方を知っている人も、それができるわけではない」、と。

 これはとくに入試数学についてそのまま当て嵌まるかと、わたしは考えています。

 敵とはこの場合、入試数学そのものですが、その敵を倒せる機会ができるかどうかは相手側の問題、つまり年度により問題傾向がやや変わったりその難易度が若干変化することですね、それは自分ではなんともならない。敵を倒すやり方を知っている人も、それができるわけではない。これも置き換えれば、入試数学の対策をして、そこでかなりのノウハウを掴んだとしても、さらに過去問で90点とか、それ以上の高得点を取ってかなりの自信を得たとしても、本番の入試でそれと同等の点数を取ることができるわけではない。ということです。

 同等の点数を取ることができない、と書いているのではありません。同等の点数を取ることができるわけではない、と書いているのです。ここは読み誤らないでください。なんでも例外はありますし、信じられないくらいできる生徒もなかにいますから。それはさておいて、上記の例でもわかるように、内申点がすこぶる高い生徒でも、数学に関し5割強しか取れなかったり、5教科のなかで数学を最も得意としているのに思うように解けなかったりと、これが入試数学の怖さであり、けっこう起こる現象かと思います。

 それだからこそなおさら、「負けない態勢を作ることはこちら側の問題です」の視点と心構えを、もっと掘り下げておいたほうがいいのではないかと思うのです。 入試数学における負けない態勢とはずばり、100点を取ることでも目指すことでもなく、いかに難しかろうと試験が終わってみれば、8割の点数をきちっと稼せいでいた力を身につけることだ、といえるでしょうか。

 その具体的方策や進め方など細かいノウハウや助言は、最初に書きましたようにHP上に数多く載せていますのでよければ参照いただくとして、今回はバーズアイ的な問題提起や実力を判断する場合の読み間違いをしない材料を、箇条書き程度の形で記すことにしてみます。


1.現在の中1の数学の内容は、半年もかければ十二分に習得、吸収できるものである。残りの時間を先の勉強に使うか、わたしが常々指摘しているように図形の勉強に取り組むか、それとも密度の薄いままで過ごすか・・・。

2.入試数学の決め手は図形にある。図形が弱ければ、上記の例のように5割強しか取れない結果になる。

3.2年と3年で習う「証明」は、合同にしろ相似にしろできて当たり前にならなければならない。

4.図形のなかの最大の知識は、相似である。従来は2年の終わりに学習した。ここから本物の数学が始まるといってもおかしくないのだが、そして1年間かけて図形の勉強、特にその応用を学ぶ期間があったのだけど、いまは学校の進度に合わせれば中3の2学期の後半になる。これでは勝負は終わっている。どうするか?!

5.関数を苦手とする生徒は多い。中2で習う1次関数、そして中3で習う2次関数は図形の知識と融合して応用となるけれど、わたしからすれば、手の内に入れる勉強をすれば関数ほどツボにはまって解きやすい単元はない、と考えている。

6.規則性の問題などしっかりした読解力がなければ、それも短時間で急所を掴まねばならない力など、安定した国語力が要るのも入試数学である。

7.1年と2年の学校の実力テスト、そして中3の1学期までの実力テストは、数学の基本の力をみるものである。もちろんそれができることは大事である。しかし、そこで90何点か取れたとしても、その力が入試に繋がる応用力を測れるものではない、ということも承知しておきたい。

8.塾の学力評価テスト、業者の模試も7番よりはまだ正確といえるが、これとて8割ほどの信頼率で、残りの2割は信用は置けない。数学の本物の実力を測りきれないのだ。「数学が一番得意だったのにいつものように解けず、自分の目標点に至らなかった」例を上で書いたが、この残りの2割の力を見誤ったといえるだろうか。

9.粘って考えることも大事。意識的に制限時間以内に解くことも大事。この使い分けを知らないし、できていない。どちらも訓練である。この問題への攻め方がいよいよ真剣味をもって問われるのは入試レベルの応用に入ってからだが、急に身につくものではない。前者は常日頃の学習のなかで、後者は通常のテストや実力テスト対策のなかで鍛えたい。しかし、中1のレベルでこの粘って考える問題があるかといえば、ない。せいぜい文章題くらい。やはりやや高度な図形問題を、学校の内容とは関係なく取り組むべきである。

10.今年の数学は例年よりかなり難しかった、と誰もがいつも言う。これはほんとうだろうか? 例年よりやさしかったという実感はほぼ正しいのだが、例年よりかなり難しかったという実感は、そのままストレートに受け取ることはできない。よしんば平均点が例年より5,6点下がったしても、それにつられて自分も下がるようでは「負けない態勢を作った」とはいえない。いかに難しかろうと試験が終わってみれば、8割の点数をきちっと稼せいでいた力を身につけることとは、もちろん常に8割できればいいということではなく、9割前後はできる力を育てておくことだけど、それとともに試験では、たとえば大問のこの3番は捨てるとかテクニックでカバーすれば被害(?)を最小に食い止めることもできるわけで、そういう状況への対処のしかたを学んでおくことも大事なのである。

11.塾を利用してプラスαの知識を得ている学習姿勢ならともかく、塾に全面的に依拠して数学の力が非常に高い生徒の場合は反面、往々にして高校では伸び悩むことがある。

12.解法の丸暗記もできない者が応用なんてできるはずがない。この表現は誤解を生むが、場面は最高レベルの段階である。普通の生徒は解法の丸暗記も実はできないのあり、そこまで勉強を自分で追及しない。他人からの説明や解答でわかった、理解したと思う段階に止まる。半分は挑発的な意味合いで書いているけれど、解法の丸暗記もときに必要であるということ。そしてやはりそれではいけない、いままでと同様ポイントとその活用のしかたを覚えねば、と考えが進んだとき、その丸暗記は本物になる。

13.普通の進度で勉強すれば、入試数学に費やす時間はまずできない。自校作成問題の数学は、共通問題よりかなりレベルの高い出題となるため、十分な準備と対策が必要である。

 生徒全体を想定した場合の現実はとんでもなく屈折、糸が絡み合って不合理そのものですから、とても順調にはいかない、またこちらの計画や思惑通りには決していかせてくれないものです。それに対し「負けない態勢を作る」ということは、消極的な方法ではなく、実はかなりエネルギーと実行力の要る、そして順調にはいかないところをなんとしても順調にはいかせる「攻めの勉強」
であることを、どうか理解していただければと思う次第です。